銀のうろこ
きつねのヤンには、お父さんがいません。
たぬきのチッチ、トラのポルル、森の仲間みんなにお父さんがいます。
「おかあさん、どうしてぼくにはおとうさんいないの?」
ヤンがいくらたずねても、母親は悲しい顔をするばかりです。
そのうちヤンは、聞いてはいけないことだと思うようになりました。
森の奥深くに滝があり、そこに竜のヌシがすんでいました。
ヌシは、森のことならどんなことでも知っていました。
きつねのヤンは、ヌシにお父さんのことを聞いてみようと思いました。
ヤンは、滝までの遠い道のりをひとりであるいていきました。
ヤンがやっとたどりついた頃には、お日様は西にかたむきかけていました。
「ヌシさん、どうかおとうさんのことを教えてください」
ヤンが叫ぶと、滝の中からとても大きな銀色の竜が現れました。
「おまえはきつねのヤンだね」
ヤンは自分の名前を知っているヌシにおどろきました。
「遠くからきたお前に教えてあげよう。父親は、火事で子供を助けようとして亡くなった」
ヌシはとても悲しい目をしていいました。
「とても勇気のある男だった……」
父親に会えると思っていたヤンの目から、一粒なみだがこぼれました。
「泣くことはない、いいものをあげよう」
ヌシは、そう言うと体から銀のうろこをとり、小さく砕いたかけらをヤンに渡しました。
「おとうさんのこと教えてくれてありがとう」
ヤンは、ヌシにお礼をいってポケットに銀のうろこをしまいました。
ヤンは急いでお家に帰ろうとしましたが、夜になり、森の道は真っ暗でなにも見えません。
月も星も見えない森の中で、心細くなったヤンは、その場に座りこんでしまいました。
一日中歩き、とても疲れていたヤンは、そのまま眠ってしまいました。
眠ったヤンは夢を見ました。
夢の中でヤンは、大きな背中におんぶされ、空を飛んでいました。
ポケットの中の銀のうろこが、青白く光りあたりを照らしてくれます。
お家のベッドまであっという間にヤンを運んでくれました。
朝、目覚めたヤンは、銀のうろこをさがしました。
しかし、ポケットにも、どこにも、銀のうろこはありません。
「やっぱり夢だったのかな?」
ヤンが、がっかりして下をむくと、首にかかった銀のロケットペンダントが見えました。
不思議に思ってロケットを開いてみると、中に写真が入っていました。
写真には、赤ん坊のヤンを大切に抱いている、父親きつねの姿が写っていました。
初めて父親の姿を見た、ヤンはいいました。
「おとうさん、さみしくなんかないよ。これからは、いつも一緒だから……」
銀のロケットを静かに閉じると、ヤンは元気に母親の所にかけだしました。




