みんなのねがい
森の仲間が住む山にとても大きな木がありました。
その木にどんなねがいも叶えてくれる不思議な実がなりました。
今日は、森の仲間みんなでねがいを叶えに行きます。
トラのポルルはうれしそうにいいました。
「みんなはどんなねがいを叶えてもらう?」
「ぼくは空を飛びたいな」
青い空をながめながら、たぬきのチッチはいいました。
「わたしはきれいな服をたくさん着たい」
うさぎのミミは跳びはねながらいいました。
「おいらはホットケーキを腹いっぱい食べるぞ」
食いしんぼうのきつねのヤンは、しっぽをふりながらこたえます。
願いごとをいいあいながら歩いていくと、すぐに目的の木にたどり着くこができました。
木は立派な幹に支えられ、枝はどこまでも、どこまでも、広がっています。
木を見上げると、一番てっぺんの枝に一つだけ金色の実がなっているのが見えました。
どうやらあれがねがいを叶えてくれる実のようです。
早速、くまのトニーが大きな木をゆすってみました。
しかし、実は落ちてきません。
今度は森の仲間みんなで木をゆすってみます。
土の奥深くまでしっかりと根をはやした木はびくともしません。
すると突然きつねのヤンがその木に登りはじめました。
ヤンはあっという間に金色の実にたどり着くと右手に実を持ちながらいいました。
「実を一番にとったから、ねがいごとはおいら一人のものだよ」
勝ち誇ったヤンの言葉に森の仲間たちはびっくりしました。
「ずるいぞヤン、降りてこい」
「ねがいごとはみんなで決めようよ」
仲間の声など聞こえないかのようにヤンは笑っています。
その時です、木の上でバランスを崩したヤンが逆さまに転げ落ちました。
ものすごい勢いで転げ落ちたヤンは、全身いたるところ傷だらけです。
仲間が心配でかけよる前に、ヤンはあまりの痛さに気を失ってしまいました。
お月様がぽっかり空に浮かぶころヤンは目が覚めました。
ベッドのまわりには森の仲間たちが心配そうにヤンを見つめています。
「大丈夫かいヤン」
トニーの声にヤンは静かにいいました。
「うん、あんなに痛かったはずなのに今はどこも痛くない」
驚いているヤンにポルルうれしそうにいいました。
「みんなで実におねがいしたんだよ、ヤンの傷が治りますように」
ヤンが体を見ると、本当に傷は消えていてどこにもありません。
「みんなのねがいが叶ってよかったわ」
ミミはそう言いながらヤンの目の前にホットケーキをそっと置きました。
びっくりしてヤンはミミを見ました。
「みんなねがいが叶ったのに、ヤンだけ叶わないのは不公平でしょ?」
ミミの言葉に、みんなのねがいに、ヤンは胸がいっぱいなりました。




