ローション代わりの絶望
「……ッ、はぁ、はぁ……! 見てよ、この最高に**『粘膜汚染』**な輝きを! 配給の途絶えた暗黒のアパートで、互いの傷口から溢れ出す絶望の分泌液が、今! 結晶の粉末と革命的混合を遂げたんだぁぁぁぁっ!!」
僕は叫んだ。四畳半の畳の上で、父さんが「正義」と呼び、ラングレー(CIA本部)が「戦略」と称した、ウイルスと化学物質による**『肉体の解体』**の最終段階へ移行しようとした――その刹那。
「……ッ、あ、……しまっ、た……!」
彼女の、エイズの斑点に彩られた「絶望の肌」が、僕の「悪意の杭」の先端をかすめた。ただそれだけの、微細な信号。
だが、ラングレーが設計した「氷」によって極限まで増幅された僕の神経系は、そのわずかな摩擦を、ホワイトハウス全土を焼き尽くすほどの熱量として誤認した。
「あ、あぁぁぁぁぁっ!! 出っ、出るぅぅぅ! 僕の『国家予算』が、法廷に立つ前に全額放出リークされちゃうぅぅぅ!!」
挿入という「最終異議申し立て」を果たすコンマ数秒前。
僕のテポドン・マグナムは、あろうことか発射台の上で自爆を遂げた。
ドクドクと、制御を失った「白濁した機密情報」が、彼女の秘部の入り口に無様にぶちまけられる。
「……あはっ。……ねぇ、検事の息子さん。まだ、一歩も入ってないよ? あなたの正義、ずいぶん気が早いんだね……」
彼女が、白目を剥きながらも、僕の失態を憐れむように笑った。
僕のプライドは死に、脳内ではCIAのハンドラーたちが一斉にヘッドセットを投げ捨てる幻覚が見えた。……だが、地獄の最適化はここからだ。
「……あはははは! 凄いよ、彼女! 失敗した僕の精液が、見てよ、この結晶の粉末と混ざり合って、最高にヌルヌルとした**『戦略的潤滑剤』**に変貌を遂げたんだぁぁぁ!!」
本来なら「敗北の証」であるはずの液体が、彼女の乾いた絶望を濡らし、僕の虚無を滑らかに包み込む。
ローションなんていらない。
僕の早まった「リーク」こそが、摩擦係数をゼロにし、僕を君の奥深くまで最短距離で導くための**「究極のオメガバージョン」**だったんだ!
「……ッ、あはは! 見てよ、このヌルつき! 僕の失敗が、お父さんの遺伝子が、一番滑らかに僕を君の地獄へと招待してくれるんだぁぁぁ!! メシウマ(地獄味)すぎて、毛細血管が全部ストローになりそうだぜぇぇぇ!!」
僕は、自らが撒き散らした「汚辱」を潤滑剤にして、彼女の絶望を貫く。
挿入の儀式をスキップしてしまった情けなさが、逆に、物理法則を超えた「滑走」をもたらした。
「あはっ……あはははは! 脳内で自由の女神が、僕の無様な自爆を指差して大笑いしてるぅぅぅぅ!!」
彼女が、白目を剥きながら悶絶する。
その喉元を走る血管が、メタンフェタミンの拍動に合わせてドクドクと隆起している。
僕の質量が彼女を突き上げるたびに、彼女の腹の中の「怪物(胎児)」が、死の羊水を掻き回して歓喜の声を上げているのが分かった。
「そうだよ、彼女! 自由ってのはね、自分を自分で壊せる権利のことなんだよぉぉぉ!! 父さんが僕を壊し、僕が君を壊し、二人でこの国を壊す! これぞ合衆国も羨む究極の**『自己決定権』**だぁぁぁ!!」
僕は、彼女の耳元で狂ったように囁き続けた。
視界はすでに、平壌の汚い天井を映してはいない。
そこには、僕たちの交わりをサーモグラフィで監視し、体温の上昇をグラフ化して「実験成功」と頷く、冷徹なCIAのハンドラーたちの顔が浮かんでいた。
「あはっ……あはははは! 脳内で自由の女神が、自由の女神が僕のマグナムを握ってダンスしてるぅぅぅぅ!!」
快楽が「生」の領域を完全に侵食し、僕たちは「死」に向かって全力疾走している。
ローション代わりに使われる血と、膿と、結晶。
そのグロテスクな潤滑剤が、僕たちを「一つの巨大な、死にゆく細胞」へと変えていく。
「父さんは言ったよね、『法は社会を守るための壁だ』って。……あはは! その壁を、僕たちの体液でドロドロに溶かしてあげようぜ!!」
僕は、彼女の絶望を飲み干すように、最後の「質量」を叩きつけた。
平壌の夜は冷たく静まり返っているが、
この部屋の中だけは、ラングレーが仕掛けた「熱い地獄」が、完成の瞬間を待ちわびていた。
第9話・完。




