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8/15

ホワイトガソリンの聖餐

「……ッ、はぁ、はぁ……! 見てよ、この最高に**『神聖ホーリー』**な輝きを! ボロアパートの湿った空気の中で、精製途中の溶剤の匂いと、彼女の吐息が、今! 虚空から現れた亡霊の微笑みと革命的邂逅マリアージュを遂げたんだぁぁぁぁっ!!」


僕は叫んだ。最高純度の「ビンカ」を炙るアルミホイルの上で、青白い炎が踊っている。その煙を肺いっぱいに吸い込み、彼女の胎内に僕のテポドン・マグナムを沈み込ませた瞬間、世界の解像度がバキバキと音を立てて崩壊した。


壁の染みが動き出す。

剥がれた壁紙の裏から、何千、何万という星条旗のハゲワシが這い出してくる。

そして、その狂乱の羽ばたきの中心に、彼女が立っていた。


「……母さん?」


そこにいたのは、一年前に野垂れ死んだはずの、僕の母さんだった。

全身をエイズの斑点という名の宝石で着飾り、口からはホワイトガソリンの虹色の煙を吐き出しながら、彼女は僕たちの結合まぐわいを慈しむように見下ろしていた。


「あはっ……あはははは! お帰り、母さん! 見てよ、僕も彼女も、母さんと同じ『地獄のドレス』を着てるんだよぉぉぉ!! メシウマ(地獄味)すぎて、眼球が裏返りそうだぜぇぇぇ!!」


僕は笑った。絶頂の最中、母さんの冷たい指が僕の頬をなでる。

その瞬間、僕の脳内に「真実」という名の劇薬が直接注入された。


母さんが父さんに壊された、あの夜の光景。

父さんが「検事」という聖職の裏で、ラングレー(CIA本部)のハンドラーから手渡された一瓶のウイルス。

『これを彼女に。そして、お前の息子にもだ。平壌を、内側から腐らせるための種火にしろ』

父さんは、一切の躊躇なく、愛する妻を、そして僕を、**「アメリカ製(メイドインUSA)の壊死」**へと捧げたのだ。


「……あの子も、同じよ」


母さんの亡霊が、僕の腕の中で喘ぐ彼女の腹を指差した。

「……お父さんが、私にさせたこと。お父さんが、あなたにさせていること。……全部、ワシントンのあの方たちが、笑って見てるわ」


その言葉とともに、僕の視界は平壌を飛び越え、太平洋を渡った。

そこには、巨大なモニターに映し出された僕たちのキメセクを、コーヒー片手に分析するCIAのエージェントたちの姿があった。

僕の質量も、彼女の絶望も、胎児の鼓動も。

すべては「国家解体シミュレーション」の、たった1ビットのデータに過ぎない!


「あはっ……あはははは! 凄いよ、母さん! 僕たちのこの快楽は、ホワイトハウスのサーバーを動かす電気信号だったんだねぇ!! これぞまさに、究極の**『グローバル・スタンダード』**だぁぁぁ!!」


僕は、母さんの亡霊を抱きしめるように、彼女の奥深くへと自分を叩きつけた。

ホワイトガソリンの匂いが鼻腔を焼き、母の死と、彼女の受難と、僕の狂気が、一つの「聖餐ディナー」として完成する。


「父さんは言ったよね、『正義』を守るためだって。……あはは! 父さんの守りたかった『正義』って、ただの**『合衆国の利権』**のことだったんだぁぁぁ!!」


僕は、彼女の首筋に歯を立て、母さんの血と同じ味のする絶望を飲み込んだ。

幻覚の中、母さんは優しく僕の耳元で囁いた。

『……全部、壊していいのよ。彼らが作った、この綺麗な地獄を』


脳内で星条旗がフルスロットルで燃え上がり、

僕は、母さんの遺品であるガソリンの炎の中で、さらなる「毒」の精製を誓った。


第8話・完。

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