彼女(ターゲット)との邂逅
「……ッ、はぁ、はぁ……! 見てよ、この最高に**『共鳴』**な輝きを! 泥水を啜り、父さんの判決に踏みにじられた少女の瞳が、今! 僕の狂気と革命的衝突を遂げたんだぁぁぁぁっ!!」
僕は叫んだ。校舎の裏、石炭小屋の湿った影。
そこに座り込んでいたのは、父さんが法廷で「快楽のために身を持ち崩した、社会主義の敵たるジャンキー」と断じ、その未来を法理学的なブルドーザーで更地にした少女――彼女だった。
かつては平壌でも指折りの英才教育を受けていたはずの彼女の肌は、今や配給の止まったトウモロコシの皮のようにカサつき、その腕には僕と同じ、呪わしいエイズの斑点が「死の宝石」のように散らばっている。
「……何の用? 検事の息子さんが、こんな汚い場所に」
彼女の声は、氷点下の北風よりも冷たく、僕の鼓膜を切り裂いた。
その瞳。
そこには、僕を息子としてではなく、**「父という怪物のスペア」**として蔑む、純度の高い憎悪が煮え立っていた。
「あはっ……あはははは! 酷いなぁ。僕たちは同じ『被害者』じゃないか! 父さんが君を『ジャンキー』と呼び、僕を『正常な息子』と呼ぶ。その嘘の境界線を、今ここで消しに来たんだよぉぉぉ!!」
僕は笑った。笑いながら、ポケットから昨日精製した「氷」の小瓶を取り出した。
透明な結晶が、夕闇の中で不吉な七色の光を放つ。
これこそが、父さんが守り抜いた「正義」という名の、ラングレー(CIA本部)直送の猛毒だ。
「……それを、私に打てって言うの? お父さんみたいに」
彼女の言葉に、僕の脳内でドーパミンが臨界点を突破した。
そうか、彼女も知っているんだ。
僕の父さんが、法服を脱いだ後で、いかにして「自由の国のエージェント」として、この国の少女たちの肉体を、尊厳を、そして未来を、化学的に蹂躙してきたかを。
「違うよ、彼女。……これは、父さんへの『復讐』のためのガソリンだ」
僕は一歩、彼女に歩み寄った。
僕の股間のテポドン・マグナムが、彼女の放つ絶望のフェロモンに反応し、規格外の質量をもってズボンの布地を悲鳴とともに押し上げている。
僕たちは、父さんという一人の男に、物理的にも、ウイルス的にも、そして法学的にも「繋がれて」しまった共犯者なのだ。
「あはっ……あはははは! 見てよ、僕の腕の斑点を! 君の斑点と、同じ形、同じ色だろ!? これこそが、父さんが僕たちに授けた**『地獄の勲章』**なんだぁぁぁ!! メシウマ(地獄味)すぎて、全身の毛穴から血が吹き出しそうだぜぇぇぇ!!」
僕は、彼女の冷え切った手を強引に掴んだ。
彼女は拒絶しなかった。
ただ、吸い込まれるような虚無の瞳で、僕の「巨大な質量」と、手に握られた「毒」を見つめていた。
「……いいわよ。どうせ、もう死んでるのと同じだし。……ねぇ、検事の息子さん。その薬で、私の脳みそをワシントンまで飛ばしてくれる?」
彼女が、自嘲気味に微笑んだ。
その瞬間、僕の「巨大な虚無」が、彼女の「巨大な絶望」と完璧に噛み合った。
僕のマグナムが、そして彼女の受難が、一つの「核反応」を開始する。
「ああ、約束するよ。……父さんが作ったこの地獄を、二人で最高にハッピーなパラダイスに書き換えてあげよう。……最高純度の、キメセクの光の中でさ!」
僕は、彼女を石炭の山へと押し倒した。
平壌の空には、偽りの一番星が輝き、
僕たちの腕の斑点は、CIAが仕掛けた「破滅のカウントダウン」を、静かに、けれど確実に刻み始めた。
第5話・完。




