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彼女の最期、胎児の沈黙

「……ッ、はぁ、はぁ……! 見てよ、この最高に**『完成コンプリート』**な輝きを! 結晶の粉末が雪のように降り積もる理科室で、僕の『巨大な質量』を受け入れ続けた彼女の命が、今! 永遠の多幸感とともに革命的昇天マリアージュを遂げたんだぁぁぁぁっ!!」


僕は叫んだ。第3部完結。狂乱の理科室の中央、実験机の上に横たわる彼女。その姿は、もはや人間というより、ラングレー(CIA本部)が設計した「絶望」を精製するための、最も美しい、そして最も壊れやすいフラスコのようだった。


彼女の腹は、今や破裂寸前の風船のようにパンパンに膨らみ、皮膚の下では「胎児」が、かつてないほどの激しさでドクン、ドクンと暴れていた。だが、その鼓動は生きようとする意志ではない。全身の細胞がメタンフェタミンとエイズ・ウイルスによって書き換えられ、死という名の「最終進化」を遂げようとする、末期の痙攣ダンスだった。


「あはっ……あはははは! 凄いよ、彼女! 君の瞳の中に、自由の女神の燃える松明が見えるよ! メシウマ(地獄味)すぎて、脳みそが沸騰して耳からポップコーンが飛び出しそうだぜぇぇぇ!!」


僕は笑った。彼女の冷え切った唇に、最高純度の「ビンカ」を最後の一欠片、含ませた。

その瞬間。

彼女の全身に浮かんだエイズの斑点が、まるでクリスマスのイルミネーションのように、一斉に、激しく、不気味に発光した。


「……あ、あは……。見えるわ、検事の息子さん……。ワシントンの空に、私たちの『星』が……。お父さんが言ってた『自由』って……こんなに、静かなのね……」


彼女が、最後の一息で微笑んだ。

そして、その瞳から光が消え、はち切れんばかりだった腹部が、嘘のように動きを止めた。

胎児の沈黙。

僕と彼女、そして父さん(CIA)の悪意を凝縮して産まれようとしていた「怪物」は、産声さえ上げることなく、母体の死とともに「完成した結晶」として、その内部で永遠に凍りついたのだ。


「あはっ……あはははは! おめでとう、彼女! 君はこの世界で唯一、父さんの『法律』からも、CIAの『実験』からも、完全に逃げ出すことに成功したんだぁぁぁ!! 究極の**『脱北エスケープ』**、完遂だねぇ!!」


僕は、彼女の亡骸を抱きしめた。

彼女の死体からは、甘ったるい薬品の匂いと、ホワイトガソリンの芳香が漂っている。

理科室にいた他の生徒たちは、薬物のオーバードーズで床に転がり、彼女の死を祝うかのように痙攣しながら笑い続けていた。


「見てよ、父さん! あなたが作った『ジャンキーの被害者』は、今やあなたの理解を越えた**『死の芸術マスターピース』になったよ! 胎児もろとも、最高純度の毒として結晶化したんだ!! これぞ合衆国も平伏す、究極の『無駄死に(ビューティフル・デス)』**だぁぁぁ!!」


僕は、自らのテポドン・マグナムを、もはや物言わぬ肉塊となった彼女へと最後の一回、叩きつけた。

結合。

生命の灯が消えた肉体と、狂い切った僕の質量。

その絶望的なコントラストの果てに、僕の脳内では星条旗がバラバラに引き裂かれ、血の雨がワシントンD.C.に降り注ぐ幻覚が見えた。


「あはっ……あはははは! 脳内でハゲワシが、合衆国の死神たちが、彼女の魂をデザートにして晩餐会を始めてるぅぅぅぅ!!」


窓の外では、夜明けの光が平壌の街並みを照らし始めていた。

だが、この理科室に残されたのは、一人の少女の死体と、結晶化した胎児、そして……

これから世界を焼き尽くす「本物の地獄」の種火だけだった。


第15話・完。

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