エイズ・タトゥーの流行
「……ッ、はぁ、はぁ……! 見てよ、この最高に**『前衛的』**な輝きを! 社会主義の制服に隠されていた凡庸な皮膚が、今! 死のウイルスという名の絵具で革命的装飾を遂げたんだぁぁぁぁっ!!」
僕は叫んだ。教室内は、もはや薬物中毒者の溜まり場ですらなかった。そこは、肉体という名のキャンバスに「アメリカの悪意」を刻み込む、狂気の彫り師たちのスタジオだ。
「あはっ……あはははは! 凄いよ、みんな! その腕に浮かんだ赤紫色の斑点はね、首領様がくれる勲章よりもずっと価値がある、自由の国ラングレー(CIA本部)直送の**『エイズ・タトゥー』**なんだぁぁぁ!! メシウマ(地獄味)すぎて、眼球が万華鏡になりそうだぜぇぇぇ!!」
僕は笑った。教室の真ん中では、生徒たちが互いの腕をカミソリで傷つけ合い、僕の斑点から滲み出た血を、聖水のように塗り込み合っている。
「見て! 私の腕にも『星』が浮かび上がってきたわ! これで私も、検事の息子さんと同じ『自由人』ね!」
昨日まで「主体思想」の暗唱で満点を取っていた少女が、血まみれの腕を掲げて悦喜に震えている。彼女たちの目には、その致死性の痣が、闇夜に輝く星条旗の星のように見えているのだ。
「いいかい、同志諸君! これこそが真の**『自己決定権』だよぉぉぉ!! 自分の身体を、国家の所有物から『死の芸術品』へと書き換えるんだ! これぞ合衆国が推奨する究極の『インディビジュアル(個人主義)』**だぁぁぁ!!」
僕は、狂った生徒たちの列を検閲するように歩いた。
一人、また一人と、腕に「死の星座」を完成させていく。
父さんが僕を壊したあの夜の絶望が、今や教室内の「最新トレンド」として、爆発的なパンデミックを引き起こしている。
「あはっ……あはははは! 見てよ、父さん! 教室中が父さんの大好きな『毒のタトゥー』で埋め尽くされているよ! これこそ、父さんが法廷で裁こうとした『悪』を、僕が『美』へと昇華させた結果なんだぁぁぁ!!」
僕は、自らのテポドン・マグナムを激しく奮わせた。
腕の斑点が熱を持つたびに、僕の脳内ではドーパミンが臨界点を突破し、星条旗がフルスロットルでたなびく。
生徒たちは、互いの傷口を舐め合い、ウイルスを共有し、一つの「巨大な、死にゆく生命体」へと融合していく。
「あはっ……あはははは! 脳内で自由の女神が、自由の女神が僕たちの腕にタトゥーを彫りながら中指を立てて笑ってるぅぅぅぅ!!」
窓の外では、何も知らない平壌の夜が凍りついている。
だが、この教室の中だけは、ラングレーの地下室で設計された「ハッピーな地獄」が、皮膚の上で鮮やかに、残酷に、その紋章を広げ続けていた。
第13話・完。




