降りしきる雪の中
今日は今朝から、すこぶる寒い。出来れば、布団から出たくなかった。家の床がひんやりと足先を冷やす。
気象予報では、近年稀に見る寒波らしい。
この寒空でも働かなければいけないとは、社会人は本当に辛い。
玄関のドアを開けると、強い寒風が襲った。
疲れた目でどんより曇る空を見上げた。この調子では、雪も降るかもしれない。
案の定、昼には雪が降った。会社の社員食堂の窓の外には、降りしきる雪、足早で歩く人々の姿が、ぼんやり見えていた。
「えぐいですねぇ」
隣に座ってきた後輩がそうぼやく。
「まぁ、おでんが美味しい日だと思えば」
「そういうこっちゃないんですよ。これからの外回りがキツイって話です」
私は今日は内勤なので、失念していた。
「そうか、すまん。頑張れ」
「覇気のない応援、ありあーす」
人早くご飯を食べた後輩は、さっさと食堂を出た。私は雪に目を背け、昼休憩はあと何分か思案しながら、食事を口に運んだ。
夕方、退勤時間に雪は止んだが、それでもなお凍てつくような寒さが身に沁みた。
駅のホームで電車が来るのを待つ。マスクをしていたが、途中で脱いだ。余りに湿気っていたからだ。雪のせいかもしれない。
丁度退勤ラッシュだからか、列はどこも長い。
諦めて大人しく最後尾に着く。
電車が雪を乗せてやってきた。ぎゅうぎゅうに押し流されながら乗り込む。疲れた身体がさらに疲れて、疲弊した精神がさらに薄くなっていくようだ。
ようやく、最寄りの駅に着く。結局、一度も座れなかった。通勤時の電車なんてそんなものだが、出来れば座りたいと、毎回思う。
駅から家までは、歩いて十分くらいだ。繁華街を通り過ぎ、住宅街を歩く。
家々に生えている木々の枝に、雪が降り積もっている。
子供の頃、雪化粧という言葉を知った時、近所の梅の枝に降り積もった雪を思い出した。細い枝に雪が重々しくて、なんとも可哀想だったのを、今でも時折思い返す。
特に、こんな日には。
訥々とそんなことを考えていると、また雪が降ってきた。鞄から折り畳み傘を出す。
冬の風は未だ寒く、まだまだ止むには時間がかかりそうだ。
きっと明日も、この降りしきる雪の中を、歩いてゆく。
もしかしたら、新雪を踏むかも知れない。
そのときは、軋む雪の音にまた、耳を澄ませよう。




