表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

短編

降りしきる雪の中

作者: 月蜜慈雨
掲載日:2026/02/13





 今日は今朝から、すこぶる寒い。出来れば、布団から出たくなかった。家の床がひんやりと足先を冷やす。

 気象予報では、近年稀に見る寒波らしい。

 この寒空でも働かなければいけないとは、社会人は本当に辛い。

 玄関のドアを開けると、強い寒風が襲った。

 疲れた目でどんより曇る空を見上げた。この調子では、雪も降るかもしれない。



 案の定、昼には雪が降った。会社の社員食堂の窓の外には、降りしきる雪、足早で歩く人々の姿が、ぼんやり見えていた。



「えぐいですねぇ」



 隣に座ってきた後輩がそうぼやく。



「まぁ、おでんが美味しい日だと思えば」


「そういうこっちゃないんですよ。これからの外回りがキツイって話です」



 私は今日は内勤なので、失念していた。



「そうか、すまん。頑張れ」


「覇気のない応援、ありあーす」



 人早くご飯を食べた後輩は、さっさと食堂を出た。私は雪に目を背け、昼休憩はあと何分か思案しながら、食事を口に運んだ。



 夕方、退勤時間に雪は止んだが、それでもなお凍てつくような寒さが身に沁みた。

 駅のホームで電車が来るのを待つ。マスクをしていたが、途中で脱いだ。余りに湿気っていたからだ。雪のせいかもしれない。

 丁度退勤ラッシュだからか、列はどこも長い。

 諦めて大人しく最後尾に着く。



 電車が雪を乗せてやってきた。ぎゅうぎゅうに押し流されながら乗り込む。疲れた身体がさらに疲れて、疲弊した精神がさらに薄くなっていくようだ。



 ようやく、最寄りの駅に着く。結局、一度も座れなかった。通勤時の電車なんてそんなものだが、出来れば座りたいと、毎回思う。



 駅から家までは、歩いて十分くらいだ。繁華街を通り過ぎ、住宅街を歩く。

 家々に生えている木々の枝に、雪が降り積もっている。

 子供の頃、雪化粧という言葉を知った時、近所の梅の枝に降り積もった雪を思い出した。細い枝に雪が重々しくて、なんとも可哀想だったのを、今でも時折思い返す。

 特に、こんな日には。



 訥々とそんなことを考えていると、また雪が降ってきた。鞄から折り畳み傘を出す。

 冬の風は未だ寒く、まだまだ止むには時間がかかりそうだ。

 きっと明日も、この降りしきる雪の中を、歩いてゆく。

 もしかしたら、新雪を踏むかも知れない。

 そのときは、軋む雪の音にまた、耳を澄ませよう。









評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ