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第十話 『終戦八百年』



 「ルイス、ルイス! 起きてルイス!!

   領主様のお城に行くわよ!!」

 「ん、んん? 」

 

 何だ、 エル・・・シャ?

 どうして俺の部屋に。

 魔導学院に居るんじゃ・・・・


 「いつの間に帰ったんだ? 」

 「何を寝ぼけているの!! 早く準備しなさい! 」


 その日の朝は、エルシャの様にはしゃいぐメリアに起こされて目を覚ました。


 「母さん? 何ですかこんな朝から」

 「領主様から招待状が届いたのよ!」

  

 初めは何を言っているのか全く分からなかった。

 だが、遅れてやって来たダリルの説明により経緯を把握する。


 ダリルの話しによれば、今年は丁度、魔神大戦から八百年。

 終戦記念の年と言うものらしい。

 

 それれに伴い、ここリットベル領の領主レイド・スカジ・スリフィノールが式典を開催する。

 レイドとは、確か何年か前にうちに来た男だ。

 ダリルと仲良さげにしていた、したたかそうな男だったか。


 その式典に親友であるダリルとその家族の俺達に招待状が届いた。それを知ったメリアは大はしゃぎして俺を起こしに部屋まで来たと言う訳だ。

 新しい遊びを思いついた時のエルシャとやる事が同じ。

 流石親子。

 

 式典は五日後、領主の住むスローン城で開催される。

 今日中に出発するとの事だったので軽く朝食を取り、旅支度を始めた。


 もう少し早めから教えといて欲しいものだが予定なども無いしまぁ構わんか。


 俺は、ダリルから渡された背負い袋に数日分の着替え、それと念の為例の手記も忍ばせておく。

 この手記や金庫に着いては、ダリル達には話していない。

 万が一、禁忌の呪いの道具とかなら厄介だ。


 そして旅に必要な他の資材や食料は、街まで買い出しに行く。

 街までは三人徒歩で向かい、必要な物を買い揃えた。


 馬車は、たまたま出会したカイルに事情を話すと快く手配してくれた。


 また帰って礼を返さねば。

 カイルもここ最近はだいぶ剣の腕を上げた。

 秘剣を教えてやる日も近いかも知れんな。


 こうして、家族三人で領主の城へ向かった。


----


 街から出発して目的地へ向かう。


 初めて見る自然や川の風景は、新鮮で美しい物だった。

 見た事のない生き物や植物を眺めながら何処か懐かしさを感じさせる畦道を進んで行く。 


 「なんだかワクワクするわね! 」

 「そうですね。初めて見る物が多くて興味深いです」


 同感だ。

 思えばこの世界来て街より先に出かけるのは、今回が初めてだ。

 少し胸が高鳴る。


 「だが気を抜くなよ? この辺は最近、盗賊や人攫いが頻繁に侵出するらしいからな」 


 「その時は俺に任せて下さい!」


 最近は、だいぶ体が思い通りに動く。

 前世よりまだ体が出来上がって無い分劣るが、それでもそこらの悪党に遅れをとる事は無い。


 未発達の細い二の腕に力瘤を作って見ているとメリアが声を上げる。


 「私も戦うわ! 」


 メリアは、少年と同じく力瘤を作る仕草をし、か細い腕を2人に見せつけた。


 「母さんは何処かに隠れていて下さい」

 「そんな細い腕では虫も倒せんぞ」

 「まぁ!! 心外だわ。2人共私をみくびり過ぎよ! こう見えて私結構強いのんだから! 」


 そう言い両手を腰に当て胸を張り、フンッと鼻息を吐た。

 その様子を見たダリルは、呆れた顔で溜息を漏らし言葉を返す。


 「ああ、分かった、分かったよ」

 「もうっ本当よ?」


 そんな愉快な会話を弾ませながら馬車を走らせて行く。


 しばらくすると辺りは薄暗くなり、日は沈みかけていた。


 「今日はこの辺で野宿しよう」


 ダリルのその一言で森近くの川辺で馬車を停め野宿する事になった。

 馬二頭の手綱を木に結び、水と干し草をやる。

 それから森に行き薪になりそうな枯れ枝を拾い、魔術で火を起こす。

 そして、メリアが持って来た鍋で干し肉と野草のスープを作ってくれた。


 これが今晩の夕食だ。


 それを三人、焚き火を囲み食べ進めて行く。

 日は完全に落ち、空には二つの月が上がっていた。

 パチパチと燃える焚き火と様々な虫の鳴き声だけが静かに響く。


 「エルシャも、連れて来たかったわね・・・・」


 そんな中、ポツリと呟いたのはメリアだった。 


 「そうだな。きっと大はしゃぎした事だろう」

 「そうね・・・・」


 思えば、エルシャが家を出て、はや三年。

 もう13歳になっている頃か。

 あのエルシャが13歳・・・・どんな子に育っているのだろうか。

 きっと今でもお転婆なのは変わり無いのだろうな。


 魔導学院とやらでシャルルとは会ったのだろうか。

 会って、仲良くなっていればいいな。


 焚き火の眺めながらそんな事を考えていると突然睡魔に襲われあくびが漏れた。


 「フ、フアァ」

 「そろそろ寝ましょうか」

 「俺は少し見回りをして来る。お前達は先にて寝てくれ」

 「分かった。気を付けてね貴方」

 「ああ」


 こうして即席の寝床を作り、その晩は眠りについた。



----



 旅2日目。

 俺達は、夜明けと共に起床し、馬車に乗り込んだ。

 

 しばらく馬車を走らせていると先に小さな村が見えて来た。

 その村に休憩がてら立ち寄ってみる事にし、馬車を走らせた。

 村の側の広い湖に馬車を止め、村へ歩く。


 村の入り口に行くと1人の間の抜けた顔の男が話しかけて来た。

 

 「あんたら旅人かい? 」

 「ああ、そんなものだ」

 「そうかい・・・名前は?」


 男は、椅子に腰掛けたまま紙とペンを手に持ち気怠げに名を尋ねて来た。


 「ダリルだ。ダリル・ロックフロー」

 「ダリル、っと。ん、どうぞ」


 そう言って適当に名前を記すと男は、村に通してくれた。


 何だあの態度は。

 あんな者が村の入り口の管理して居ていいのか。

 もし俺達が悪人なら一瞬でこの村は終わりだな。


 そんな事を思いながら入り口を抜けると村の内部が見えてきた。


 村は小さなながらも活気に満ちている。

 建物は10軒程しか無く、村と言うより集落に近い感じだろう。

 その周りを木を組んで作った柵で囲っている。


 そんな中で村人達は、勇ましく生活をしていた。

 狩りで獲った獲物を捌く狩人、元気良く走り回る子供達。

それと家事に勤しむ女達。

 村人の様子を眺めながら村の中枢に向かうと腰の曲がった老人に話しかけられた。

 

 「旅のお方ようこそルマル村へ。わたくし村長のラーボと申します」


 老人は、杖をつきながら首だけを下げ挨拶する。


 「ダリル・ロックフローだ。出迎え感謝する。領主の元へ向かう途中に通りがかったので寄らせて貰った。少し昼休憩をしても構わないだろうか?」


 「勿論構いません。何も無い所ですがどうぞ御寛ぎ下さい」

 「感謝する」

 「感謝致します。村長さん」


 そこでメリアもすかさず貴族式の挨拶で返す。


 「領主様の元へ向かわれると言う事は、何か重要な言伝か何かですかな?」

 「いや、終戦記念の式典に出向いている途中だ」

 「ほう、そうでしたか。確かに今年は終戦記念の年でしたな」

 「ああ。それでこうして家族を連れて向かっていると言う訳だ」

 

 ダリルは、妻と息子をチラリと見てそう話す。


 「それでは慣れない旅でお疲れでしょう。 もしよろしければ私の家で昼食などいかがですか?」

 「いえ、そこまでは・・・」

 「丁度先程、この村の狩人が猪を獲って来た所です」


 「だが、」

 「いいじゃない貴方!! せっかくだしご馳走になりましょうよ」


 「・・・」

 「無理にとはいいませんが、この時期の猪は脂が乗っていていい味だと思いますよ」


 「分かった。なら、ご馳走になるとしよう」

 「ええ、是非」


 そんな様子で話はとんとん拍子で進み村の村長ラーボの家で昼食をご馳走になる事になった。

 俺達は少し村の案内受けてから村長の家へと向かった。


 村長の家に着くと三部屋ある内の一つ。

 客間の様な場所に通された。

 

 俺達三人は、その部屋の床に弾かれた熊の様な生き物の毛皮の上に腰を下ろした。

 その毛皮の手触りに堪能していると湯呑みを持った少女が現れた。


 少女は、湯呑みを3人の前に出すとこちらが感謝を伝える前にそそくさと戻って行った。


 「村長さんのお孫さんかしら、恥ずかしがり屋なのね」

 「ルイスと同じぐらいだな」

 「そうね。お友達になれるかも!」


 そんな会話をしているうちに村長と猪料理を持った数人の村人がやって来た。


 そして、俺達三人は、村長と会話を交わしながら昼食を始めた。



----



 「フゥ、美味かった」

 「美味しかったわね!」

 「村長、こんなご馳走を感謝する!」


 猪は、山修行の時よく捕まえて食べたが、こんなに美味いのは初めてだ。

 きっと串焼きにしてあのタレを付けて食べても美味いだろうな。


 ゴンタ辺りが大興奮するに違い無い。


 「口にあった様なら何よりです」

 「ここまでして貰って礼も無しではロックフロー家の名が廃る。せめてもの礼だ受け取ってくれ」


 そう言ってダリルは、懐から金貨を1枚取り出し村長に差し出す。


 「いえ、そんな、流石にこれは頂けません」

 「だが、これ以外に渡せる物を持ち合わせていないのだが。何か村で必要な物などがあれば後日手配しよう」

 「必要な物・・・・などは有りませんが。確か領主様の元へ行くとおっしゃっていましたね」

 「ああ、そうだが?」

 「でれしたら一つだけ頼みが有ります」


 村長は、そう言うと改まり言葉を続けた。


 「領主様にここ最近出没する人攫いの事を一言口添え願いたい」

 「人攫い?」


 村長曰く、最近この村の周りで人が突然消える事件が立て続けに起こっていたらしい。

 そして、一月程前この近くの村でも若い娘が消えた。

 人攫いだと結論付けた村長は、近くの街に赴きギルドに対応を求めたのだがギルドからは男1人が派遣されただけだった。


 「優秀な武人と言う話しだったのですが一日中あの様子で・・・・」


 村長は、そう言うと村の入り口の方向を向いてため息を吐く。


 なる程な。

 それで来たのがあの男では不満に思うのも無理ないだろう。


 その後ダリルは、村長の頼みを承諾し、領主への口添えを約束した。


 それから少し世間話を交わし、俺達三人は、出発する事となった。


 「それじゃあ村長、世話になったな」

 「いえ、また近くに来る事が有ればたお立ち寄り下さい」

 「ああ、そうさせて貰おう」


 村長は、村の狩人が狩って来た猪や鹿の肉を乾燥させた物を持たせてくれた。

 それを背負い袋に詰め込み村長の家を出る。


 そして、俺達は村長や村人に別れを告げて村を後にした。

 村を出る際村の門を守るはずの男が気持ち良さそうに居眠りをしていたので小石を投げてやった。


 だが石は、男にぶつからずあさっての方向に飛んで行ったのだが・・・・。

 村長には、世話になったし、ここはいい村だ。

 真面目に村の守護を行って欲しいものだ。


 それから馬車を停めてある湖へ行き、再度領主の元へと向かった。



----



 ここトレスニア王国は、レヴァロス大陸1の国力と国土を有している。

 その広大さ故全ての領土にまで王の手は、行き届かなかった。


 その事を危惧した200年前の国王は、国の分裂や他国の侵攻を防ぐ為に王都から離れた領土の三つに領主を立てた。


 セルムハット領のエルムフォード家。

 サンドトル領のリッドバルト家。


 そして、ここリットベル領のスリフィノール家。

 王は、その3人の領主に国王と並ぶ権限を与え、各領土の守護を命じた。



 村を出て2日後、俺達は、休息を取りながら馬車を走らせて目的地である領主の城スローン城へと到着した。


 その城は、今まで見た人工物の中で最も巨大な建造物であった。


 以前見た事のある城や邸とは、桁が違う。

 その巨大な城は、幾つもの建物のが並び連なり、一つの城として機能していた。

 見る人によれば小さめの街と誤解されてもおかしく無い程の広大な土地と高い建物の数々を有している。


 その様子に俺とメリアは、呆気に取られていた。


 「な、何だこれは」

 「これが領主様のお城なのね・・・凄いわ、圧巻ね」

 「初めて見た者は皆そう思う。さぁ行こう領主様にご挨拶だ」


 ダリルに付き従い俺達は、城門に向かう。

 城門には、屈強な兵士達が門番をしていた。


 兵士達に招待状を見せると笛の音とと共に門が開き、中に通される。

 城門を潜ると2人の使用人らしき娘に出迎えられた。


 「ダリル・ロックフロー様、それとそのご家族の方ですね。園路はるばるようこそお越し下さいました。城主は玉座にてお待ちです」


 「出迎え感謝する。ではすぐに向かうとしよう」

 「案内致します。どうぞこちらへ」


 使用人の娘、この世界で言うメイドの案内で領主様の元へと向かう。


 メイドの後を追って歩く。

 綺麗に舗装された石道と幾つもの建物を経由してやっと城内に入る。


 城内の廊下には、高価そうな壺や絵画といった芸術品や年季の入った剣や鎧が飾られていた。

 それをメリアときょろきょろと見渡しながら先へ進む。


 そして、しばらく歩くと兵士が立つ赤い扉の前で二人のメイドは、立ち止まった。


 どうやら領主の元に到着したようだ。

 それにしても随分と歩かされたな。

 まぁ、珍しい絵や壺が見れて退屈は、しなかったからいいが。


 そんな事を思っているとメイドの一人が、扉をコンコンと叩き声を上げた。


 「ダリル・ロックフロー様とそのご家族が参られました」


 その言葉に返す様に扉の向こう側から男が返事を返した。


 「入室を許可する、入れ」


 その言葉で兵士は、赤い扉を開く。


 扉を開き、まず見えたは真っ赤な絨毯。

 絨毯の端には金の線が入っており城主の座る玉座の前まで続いていた。


 玉座まで続く絨毯の上を歩いて進む。

 その広い部屋には、先程廊下で見た物より数段高価そうな絵画や壺が数点飾られている。


 天井には、煌びやかな硝子で拵え光を灯した装飾がぶら下がっていた。


 何だあれは。

 宝石の様に輝いているが、光を発している様にも見える。

 魔道具の一種か何かだろうか。


 そんな事を考えながら歩く内に玉座の前にやって来ていた。

 玉座には、男が偉そうに座って居た。


 ダリルとメリアは、男の前に行くとサッと片膝をつき頭を下げた。

 その様子を見て少年も同じ様膝をつく。

 そして、先に口を開いたのはダリル。


 「領主様、この度は終戦記念の式典に招待頂きありがとうございます」

 「予定より1日程早い到着だな。そんなに俺に会いたかったのか? ダリル・ロックフロー」

 

 悪戯をする様に笑う男にダリルもまたニヤリと笑い、顔を上げる。


 「冗談を吐かせ。顔すら見たくなかったぞ」


 ダリルのその言葉にメイドや兵士達は、一瞬顔を歪める。

 だが男は、お構い無しと言った感じで笑い声を上げた。


 「ハハッ、相変わらず切れ味のある言葉を吐くな。遠路遥々良く来てくれたダリル」

 「こちらこそ、家族まで招待して貰って感謝する」

 「当然の事だお前の家族は俺の家族同然」

 「感謝致しますわ。領主様」


 メリアは、改めて深々と頭を下げた。


 「楽にしてくれ、堅苦しいのは嫌いだからな。

メリア慣れない旅で疲れただろう。部屋を用意させてある。今日はそこで休んでくれ」

 「ご配慮痛み入ります」


 その言葉で俺達三人は、立ち上がり領主と向かい合う。


 「それに君はルイス君、だったね? 大きくなったね前に会ったのを覚えているかい? 」

 「はい、殿・・・じゃ無くて領主様」

 「うむ。しっかりしているな」

 「光栄なお言葉感謝します」

 「君の噂は聞き及んでいるよ。雷児の集いのルイス。齢7歳にしてオーガの変異種を討伐した街の英雄」

 

 男の視線は、足の先から頭の先をじっくりと舐める様に見つめる少し不快な物だった。


 前と同じだ。

 人を値踏みするかの様なあのやらしい視線。

 どうにも変な気分だ。


 「いえ、あの時はたまたま運が味方してくれていただけです。それに俺一人じゃ無く仲間のお陰で勝てたと思っています」

 「謙虚だね。ダリルの子にして置くのは惜しい。家の子にならないかい? そうだリシアを呼んでくれ」


 その言葉にメイドは、素早く退室し何処かへと向かって行った。


 領主レイドとダリルが、思い出話に花を咲かせているとしばらくして扉を叩く音が聞こえて来た。


 「お嬢様を連れて参りました」

 「入りなさい」


 扉が開かれると二本の剣を携えた女と共に少女が現れた。


 透き通る様に白い肌と天色の髪。

 何処か遠くを見つめる気の抜けた瞳。

 少女は、白いドレスを身に纏い無表情のままスタスタと俺達の脇を通り過ぎ、領主の側に立った。


 「リシア挨拶しなさい」

 「・・・こんにちは」


 少女は、無表情のまま一言だけを発した。

 その様子にレイドは、苦笑いをして言葉を続ける。


 「娘のリシアだ。歳はルイス君と同い年の8歳。無口な子で少し無礼を働くかも知れながい仲良くしてやってくれ」

 「ルイス・ロックフローです。お嬢様お見知り置きを」

 「・・・うん」


 少女は、コクリと頷くとこちらをじっと見つめていた。


 何だろうか。

 何か無礼でも働いたか?


 「随分といい護衛をお連れですね。父親の溺愛ぶりが伺える」


 そう言うダリルの視線は、少女の後ろに控える様に立つ小柄な若い女に向けられていた。


 女は、この世界では珍しく濁りの無い黒髪をしている。

 何処か懐かしさを覚えるその顔立ちの女は、

ダリルの言葉に少し口角を上げて、口元に人差し指を立てた。


 この女、何処かで会ったか?

 何やら親近感が湧く。久々に見る黒髪のせいだろうか。


 「貴方は英雄なの?」


 そう声をかけて来たのは先程からこちらに視線を向けて来ていた少女だった。


 英雄か?

この質問に対して何と答えるのが正解なのだろう。

 そう呼ばれる事もあるが、逸話や英雄譚に出て来るような大それた者でも無い。


 「街の一部の者達はそう呼びます」


 「強いの? 」


 「それなりには?」

 

 「おや? リシアはルイス君に興味があるみたいだね」


 何やら興味を持たれたらしい。

 対して面白い事は、無いのだがな。


 「そう」

 「はい・・・・」


 何やら、やりずらい子娘だな。

 まぁいい、この城には数日滞在する予定だ。

 その間に仲良くなれればそれでいいか。


 こうして、領主とその娘のリシアと挨拶を交わし、俺達は、用意された客間へと移動した。



----



 その日の夜、領主レイドは俺達を歓迎してささやかな宴を模様してくれた。

 夕食時テーブルには、明日の式典用に国中から取り寄せた豪華な食材が並べられていた。


 その夕食を食べた後、俺達は、各自自由な時間を過ごす事にした。


 メリアは、夕食の料理の味付けが気になるとかで城の料理人の元へ向かい。

 ダリルは、レイドとの久々の再会で募る話でもあるのか二人きりで酒を酌み交わしている。


 そして、たいしてする事も無い俺は今、城内を当ても無く徘徊していた。


 だが、この広い城内を見て回るのは、案外楽しい。

 芸術品の飾られた長い廊下。

 街の図書館の倍以上の書物が保管されてある書庫。

 城の上部へと繋がる螺旋状の階段。

 それを上がった先にある窓から見渡せる月明かりに照らされた庭園の景色。


 そのどれもが初めて見る新鮮で珍しいものばかりだ。


 ダリルには、凄い知り合いが居るんだな。

 なんて事を考えながら夜空を眺めていると突然声をかけられた。


 「あれ君、迷子?」


 話しかけて来たのは、領主の娘といた小柄な黒髪の女だった。


 「いや、少し城内を見て回っていた所です。もしかして立ち入り禁止の場所でしたか?」

 「ああ、そう言う事か! 部屋の前で気配がしたから出て来ただけ。ここからの景色めっちゃいいよね。スマホが有ればなー」

 「す、まほ? 酢の魔術?」

 「何でもなーい。あって言うかもうお風呂は入った?」

 「風呂ですか? まだ入ってません」

 「入った方がいいよ。この城浴室には湯船があるから。この時間ならもう誰も使って無いし入って来たらいいよ」

 

 風呂か。

 確かに旅の間かいた汗や汚れを流したいと思っていた所だ。

 ちょうどいい。そう言うなら使わせて貰おう。


 こうして、黒髪の女の案内で浴室に行き風呂に入る事にした。

 

 この何もかもが巨大な城だ。

 勿論、同然の様に脱衣所ですら普通の部屋5個分の広さは、ある。

 

 その場で服を脱ぎ、浴室の扉を開ける。

 扉を開けると一面加工された大理石の床と広い湯船から立ち込める湯気が視界に映った。


 「おお!! あれだけ勧める訳だ! これは凄い」


 初めて見る大きさの湯船に興奮し、ペタペタと湯気を切り湯船に向かう。


 そして、勢いよく湯船に飛び込んだ。

 水飛沫を上げて飛び込むとちょうどいい湯加減であった。


 「ふぇ」


 極楽、極楽。


 肩までお湯に浸かり、疲れを癒そうとしていると俺の後方、湯船の奥からパシャリと水をかく音が聞こえた。


 その音に即座に振り向き立ち上がと濃い湯気の中に人影が見える。

 

 誰だ? ダリル? 領主様?


 その湯気が少し腫れて姿を現したのは、天色の髪の少女だった。


 それは、この城の姫リシアだった。


 「うおっ!! お、お嬢様!? 違う覗きに来た訳じゃ無くてその___ 」


 素っ裸の少女を見て素っ裸で取り乱す少年に少女は、無表情のまま平然と言う。


 「一緒に入りたいの?」


 「いや、そうじゃ無くて。これはその、そう! 仕組まれたんだ。君の護衛の女に!!」


 裸のまま少女と向かい合い必死に事情を説明する。


 「モンカ」

 「えっ?」

 「私の護衛の名はモンカよ」

 「は、はぁ」


 以前、無反応な少女。

 それに呆気に取られる少年を少女は、また無表情で見つめていた。


 やはりやりづらい。

 掴みどころが無いと言うか。

 

 「お父様のものとは全然違う」

 「へ? 何が?」


 お父様のもの?

 何を言っている。


 そんな事を言う少女の視線は、こちらの下半身の辺りに向けられていた。


 「小さい」

 「キャっ!」


 少女の視線の先が自分の下半身だと気付い男は、乙女の様な声を上げてお湯に素早く潜った。


 ナニがか・・・・。

 この小娘め、これは、まだ成長途中だ。

 後五年もすれば、お前の父親が泣いて謝る程のものに成長している。

 はずだ・・・・。


 クソ、失礼な小娘だ。

 これ以上、俺のものにケチを付ければ首を跳ねてやる!

 いや、待てこの状況で首を跳ねられるのは、俺の方か・・・・。


 そんなおかしな状況で俺は、彼女と出会った。

 美しく冷淡な少女リシア・スカジ・スリフィノールに。

 

 


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