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灰と灯火のグリモワール  作者: みむらす
1章 雪の降る日 前編【導入】
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1話 子どものゆめ

 "オータスの英雄譚"

 昔々、女神の光がまだ地に届いていた時代のこと。

 貧しき村に、一人の少年が生まれました。

 その者の名は――オータス。


 オータスは、生まれた時から魔力を持ち、

 胸の奥で“自律の術式”を燃やし続けていました。


 人はそれを「祝福」と呼びました。


 村人たちはその力を讃え、時に畏れました。

 けれど、少年の胸に宿ったのは、誇りではなく孤独でした。


「世界は広い。お前を恐れず、まっすぐ見てくれる誰かがきっといる」

 祖父の言葉だけが、彼の支えでした。


 そして、16歳になった春。

 オータスは魔法と剣を携え、旅に出ます。

 旅の道中、彼は三人の仲間と出会いました。


 魔獣を制する者。

 他者の心を癒す者。

 死者の声を聴く者。


 彼らもまた、“祝福された者たち”。

 巡り合ったその日から、四人は勇者として運命を共にしました。


 それは大陸中を駆け巡る大冒険。

 氷の大地、雪の雪原、炎の海、巨大な怪物――。


 数多の苦難を乗り越え、そして辿り着いたのです。

 大いなる魔獣が棲む森――。

 自律術式を“女神の気まぐれ”と罵る、恐るべき存在。


 四人はその魔獣に挑み、敗れました。

 力を失い、倒れ伏し、術式が沈黙したとき、天より声が響きます。


「哀れなる子らよ。汝らの魂は、決して消えぬ。

 永久に我と共に在り、永遠に生きよ」


 女神は彼らに新たな命を与えました。


 祝福は姿を変え、今もなお、四人の勇者は空の上から世界を見つめているといいます。

 これは、女神と約束を交わした、後に英雄と呼ばれる者たちの、はじまりの物語――。


 ………………


 ――蝋燭の灯りが照らす薄暗い部屋、6歳になったばかりの少年"カイン"はその話に目を輝かせていた。

 彼の母親と思しき女性は静かに本を閉じ、少年の頭を撫でながら優しく目を細める。

 

 いつもなら物語の途中で寝息を立ててくれるのだが……。

「僕もオータスみたいな英雄になる!」

 よほど今の話が気に入ったのか、興奮した様子でそんなことを言い出した。


 彼女はそんな少年に優しく微笑む。

「あら本当?それなら、いつか女神様と一緒に世界を救う勇者になるのかしら」


 少年は母親が認めてくれたと思ったのか、

「なるよ!そしてみんなを悪いやつから守るんだ!」


 母は笑って「それは良いねぇ」と言いつつも「私はカインには危ないことはしないで、長生きして欲しいけどね」と続けた。


 ――けれど、その言葉は少年の耳には届いていない。

 少年の輝く瞳に迷いはなかった。

 蝋燭の明かりに照らされた表情の裏で、炎のような意志が、小さな胸の奥で灯っていた。


 それから5年の月日が流れる。

 カインは暖炉の中で炎を上げて燃える薪を見つめていた。

 北の地で、胸の奥をかすかにざわつかせながら――。

短期集中連載:2026年1月3日〜1月18日は毎日20時更新。

以降は、毎週水曜・日曜の20時に更新していきます。

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