31話 越冬祭と暖かな食事
ナイフ投げの説明が終わった。
要約すると、4本のナイフを的に投げ、中央の小さな丸が100点で、外に行くにつれ点数が下がる。ナイフが刺さらなければ0点らしい。
その合計点数を競う競技ということだ。
そして、俺は剥き身のナイフを4本渡された。
「……本物のナイフじゃん。
この店って子供も参加するんですよね?」
「今まで怪我人が1人も出ていないのがうちの自慢だよ」
と、胸を張るカインの父。
いや、そうじゃなくね?
他の店では怪我人が多いのだろうか……?
気を取り直して、俺はナイフ投げに挑戦する。
最初は的を外したが、数投目できれいに刺さった。
「3投目で的に刺すなんてセンスあるねぇ。カインより上手いんじゃないか?」
大袈裟に驚くカインの父。
それに対して当のカインは、
「は?僕だってアレくらいできるし!」
俺が持っていた4本目のナイフはカインに奪われた。
そしてそのナイフは、的から少し外れて板に刺さる。
――1点。
「お!カインもやるなぁ。みんながそんな調子だったら、お父さんの商売あがったりだよ」
「ぐぬぬ……!ローゼンより外側……!」
「どうせ俺のはビギナーズラックだよカイン君。気にしないでくれたまえ」
「はぁ!?父さんナイフ4本ずつ!総合得点なら負けない!」
盛り上がりながら、俺たちは店の記録を更新した。
「まさか2人して記録を更新されるとは……。なかなかやるねぇ。
そんな2人に特別賞だ!」
なんだろうと思っていると、焼きそばやたこ焼きなど、幼い頃に食べた祭りらしい食べ物が出てきた。
「さぁ、今日は祭りだ、パーティーだ!」
カインの父は嬉しそうにそれらを俺たちに配る。
この人といると祭りに対する鬱々とした気持ちが晴れていくようだ。
食べ物が乗った葉っぱで作られたトレイを受け取る。
「あれ……、温かい?」
冷めているかと思ったそれらがちゃんと温かいことに驚く。
「ふっふっふ。驚いたかい?父さん自慢の保温魔術だよ。その気になれば冬に作った氷を夏に使うことだってできるのさ」
「氷を?それはすごいですね!」
「半日おきに魔術をかけ直してたけどね。たぶん氷結系の魔術で水を凍らせた方が早いよ」
あぁ……、そうなんだ。
暖かい食べ物たちは、記憶の中のものとはまた違う美味しさがあった。
それは、こいつらと一緒に食べているからかもしれない。
誰かと過ごす祭りは楽しいのだと、俺は初めて体感した。
食べながら談笑をしている間に、カインの父は木の板に何かを書き込んでいた。
そして屋台の壁にかけられた名札たちをいじると、満足そうに戻ってくる。
その名札の右端には、俺たち2人の名前が並んでいた。
380点 ローゼン
340点 カイン
「ローゼン君も道場を卒業したんだよね?これからどうするか決めているのかい?」
「はい。カインと一緒に村を出る予定です」
カインの肩がピクリと揺れる。
「ほう……。村を、出る……?」
カインの父は前のめりになって聞いてきた。
「ちなみにそれはいつだい?」
カインの肩が先ほどより大きく揺れる。
こいつ……まさか……?
「明日……、だよな?」
何も発言をしないカインの体がどんどん小さくなっていく。それが全てを物語っていた。
「「カイン……」」
こいつ、村を出ることをまだ言ってなかったのか……。
ため息を吐くように、俺とカインの父は同時に頭を抱えた。
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