26話 力の格差
「……作戦、あるのか?」
「もっとよく師範の動きを見るんだ」
「は?」
うん。説明が必要だよね。
「僕たちは二刀流との戦いに慣れていない。だから、ずっと2本目の剣に翻弄されていると思うんだ。
重心や足の動きから2本目の狙いを読み取れば――」
「なるほどな。次の手のその先まで見るってことか」
ローゼンは少し考えると、
「……難しいこと言うじゃねえの」
「できないの?」
「はっ!ヨユーだよ」
「作戦会議は終わったか?」
言うと同時、師範は地面を蹴り懐に斬り込んでくる。
2本目の動きを考えろ!
師範は右足に重心を乗せ、振り上げた剣の裏から突きを放とうとしていた。
その動きを察知して僕は距離を取る。
突きを放った直後の一瞬の硬直を狙い、ローゼンが斬撃を繰り出す。
入るか――!?
体重は右足、両腕は完全に開いた状態。
大きな隙――のはずだった。
師範は両足のつま先を軸に体を回転させる。
そして、振り上げた剣で背中越しにローゼンの剣を受け止めた。
それだけじゃない。
背中越しに攻撃を受け止められたローゼンの虚をついて、自分の体で隠した左手からの突きが放たれる。
ローゼンはギリギリのところでそれを避けると、師範から距離をとった。
動きは読める。
だが、1対1だとどうしても後手に回ってしまう。
「ローゼン!同時に攻めよう!」
「リョーカイ!」
2人で挟み込む形で連撃を浴びせる。
しかし、師範は後ろにも目がついているのだろうか、僕たちの攻撃を軽くいなしていく。
ローゼンがぶつぶつ言い始めるのがわかった。
ここからローゼンの剣速が上がっていくはずだ。
だったら――。
僕は振り上げた剣を一瞬止めた。
「!!!」
師範の眉間にさらに深いシワが刻まれる。
僕は追い打ちをかけるように、次の攻撃の溜めを少し長めに取ったりと、自身の技のタイミングを意図的にずらした。
師範はそのわずかなズレにタイミングを合わせようとするが、そうするとローゼンへの対処に遅れが見え始める。
ローゼンは僕の意図を察したのだろう、繰り出す技の直前に間を入れ僕と役割を交代する。
ただでさえ2体1で人数的には不利な状況だ。
そこに片方がフェイントを入れ、それが入れ替わりながら攻め立てられれば情報量が増える。
案の定、師範はたまらず僕たちから距離を取った。
「いけそうだね」
「あぁ。思ったより効いてるな」
――そして師範は呼吸を整えると先ほどまでの険しい表情に戻る。
僕たちは再び同じ作戦で師範に挑んだ。
だが、その作戦はもう知っているとばかりに師範は適応してくる。
フェイントをかける方には体重を乗せた斬撃を、攻める方には受け止める程度の軽い斬撃を巧みに使い分ける。
体重を乗せた斬撃は全身に衝撃が来るようで、受け止めるだけで精一杯だ。
僕は師範の動きに合わせようとするが――。
「よく見ているな。だが、そんな剣の振り方では俺に及ばんぞ!」
優位に立っていた師範は、何を考えたのか僕たちから距離を取る。
「ローゼン気をつけろ。何かする気だ」
「ははっ……。まだ奥の手があるってのかよ」
師範の周りだけ空気が加速していく感覚――。
「視よ、断ち切るために――」
師範が魔術構文の詠唱に入る。
何の魔術か知らないが、対処法がない僕たちにはどんな魔術であれ厄介だ。
発動を阻止するべく僕たちは反射的に駆け出す。
「――力よ、余を超えろ
《ヴィゴル・アイズ・ヴァント》」
魔術を発動すると同時、師範の瞳孔がわずかに光を帯び、四肢に圧のような風が走る。
魔術の発動を阻止できなかった。
そう認識する間もなく、一瞬のうちに背後に回り込む師範。
速すぎる――!
視界から消えたと思ったら一瞬のうちに背後を取られていた。
振り向くよりも早く、師範の脚が僕の横腹に入る。
ミシミシと嫌な音がして蹴り飛ばされた。
僕は硬い地面に何度もぶつかりながら転がった。
同時、ローゼンの攻撃が師範を襲う。
だが、まるでスローモーションで見ているかのように軽く受け止められ、もう片方から繰り出される剣圧でローゼンも吹き飛ばされる。
「くそっ!魔術なんてズルだろ……!」
「戦場では卑怯な手など無い。覚えておきなさい、生き残った方が強いのだ」
新たな作戦も次の瞬間には破られる経験値の差。
こちらの体力も徐々に削られていき、限界が見え始めている状況。
その上師範は肉体強化の魔術でより強力になった。
もう、打つ手がない。
いったいどうすれば――!
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