表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
灰と灯火のグリモワール  作者: みむらす
1章 雪の降る日 前編【転換】
24/27

16話 一本と決意

 父から"欠落者"について聞いた次の日。

 決意を新たに、僕は早朝の道場へと向かった。

 その道中、いつもすれ違う人たちと、いつも通りの挨拶を交わす。

 だが、"この村の魔術が使えない人に対する扱い"を知ってしまった僕には、それが作られた偽善に見えて気持ちが悪いと感じてしまう。


 道場に着くなり日課の素振りをこなしていると、元気のない様子のローゼンがやってきた。

「よう――」

 僕は多少の気まずさはあったが、それ以上に彼と対等の関係で在りたいという想いの方が強かった。


 だから――。

 今日は僕の方から木剣を構えてローゼンを見据える。


 ローゼンは口元に笑みを浮かべながら、木剣を構えた。

「やっぱり、お前は違うな――」

 

 カン!カン!

 と、木剣同士がぶつかり合う甲高い音が道場の敷地内に響き渡る。

 いつにも増して激しい攻防。それを通じて自分自身の感覚が研ぎ澄まされていくのを感じる。きっとローゼンも同じだ。


 次第にぶつぶつと呟き始めるローゼン。

 少しずつ攻撃の速度が増し始める。

 これじゃいつもと同じだ……。


 だから今日は――。


 僕は距離をとった。スピードで敵わないなら合わせる必要はない。

 いつもと違うペースを作ろうと考えた結果、無意識に距離を取る選択をしていた。

 だが、ローゼンは迷いが無いかのように、間髪入れずにその間合いを詰めてくる。


 その瞬間――。

 僕の目には、彼の姿がゆっくり動いているように見えた。

 ローゼンの姿だけではない。視界に映る全ての動きが緩やかに見え、自分の体もふわりと軽くなったような感覚。


 あ。これならできる――。


 僕は前に見たゼロスの剣技を再現する。

 身を屈め、全身をバネのように体を跳ねさせ、敵を裂くイメージ――。

 その一撃はローゼンの動きよりはるかに早かった。

 一瞬で懐に入り込むと、彼の体に木剣を当てる。


「あ……」

 なんか、今までで一番すごいのが出たぞ!

 僕は、ローゼンから初めて一本を取ったことよりも、"いい技が出た"ことに感動していた。


 一方で、ローゼンは「はっはっは!」と腹を抱えて笑い転げている。

 あれ?僕が勝ったんだよね?

 何がそんなにおかしいのだろう?


 ひとしきり笑った後、目元の涙を拭いながらローゼンが呟く。

「カイン、ありがとう――」


 負けて悔しがるのではなくお礼を言っている。

 不思議なやつだ。


 だが、きっと彼もまた僕とは違う人生を背負っている。

 いったいどんな人生を送ってきたのだろうか――。

短期集中連載:2026年1月3日〜1月18日は毎日20時更新。

以降は、毎週水曜・日曜の20時に更新していきます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ