15話 欠落者
「カインは魔術がどうやって発動されているかを知っているか?」
父は唐突に質問をしてきた。
それは"欠落者"や"加護無し"とどう関係があるのだろうか。
「うん……。魔術構文を詠唱して、体内の魔力を"言葉として発せられた術式"に流し込むんでしょ?」
ゼロスも言っていたし、何かの本でもそう書いてあるのを読んだことがある。
僕自身、まだ魔力の流し方がわからないでいるが……。
父は頷くと、
「そうだ。でもそれは行為の話だ。その裏には"女神様の力が働いている"と言われている」
「"女神様の力"……?」
「例えば魔術構文の詠唱は、女神様への"祈りとお願い"だと言われている。それが承認されることで魔術が発現し、承認されなければ魔術が発現しないという考え方だ。そのことを"女神様の加護"だと考えている人たちがいる。だから体質的に魔術が使えないと確定した人間を"欠落者"や"加護無し"と呼ぶことがあるんだ……」
なるほど。女神様から認められていないから"加護が無い"ということか。
そして、父は少し躊躇いながらも続ける。
「母さんもそうだ」
「え……?」
今まで気が付かなかったが、言われてみれば母さんが魔術を使う姿を見たことがない。
だから村人たちから少し距離を置いていたのか……。自分が"欠落者"だとバレないように――。
僕は母のいる前で嫌なことを訊いてしまったのかもしれないと思った。
「あ――、ということはローゼンも……」
父は無言で頷く。
「この辺りの地域は女神様に対する信仰心が特に強い。可哀想だが、そういう差別につながることが多いんだ」
なるほどと合点がいった。
母が村人達から少し距離を置いていた理由。
ローゼンが皆から離れた場所で練習をしていたり、他の門弟や村人達から嫌な扱いを受けていた理由。
全てはこの土地に根付いた思想によるものだったのだ。
だからと言って――。
「ローゼンや母さんは悪くない……。そんなことが理由で誰かが嫌な思いをするのは間違っていると思う」
僕は正直な気持ちを打ち明ける。
「そうだ。カインが正しいと、父さんも思うよ」
父は優しそうに笑いながら僕の頭を撫でた。
それから父さんは「母さんのところに行ってくる」と立ち上がり、書斎へと向かっていく。
いつも気ままに生きているように見えていた父。
その裏でどれだけ母さんのことを護っていたのだろう。
その背中に人としての強さを感じたような気がした。
父から"欠落者"について聞いた次の日――。
僕は新たな決意を胸に、早朝の道場へと向かった。
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