14話 父と母
母は息子がグレたと思ったのだろう。
出会い頭に思いっきり頬を叩かれた。
これにはローゼンもびっくりして手を放し、支えを失った僕はバランスを崩して倒れる。
「ねぇ、カイン!どうしてこんなことをしたの!?」
何も言えないでいる僕をローゼンがフォローしてくれる。
「あの……、カインのお母さん……?これはその……」
「あなたは黙ってなさい!」
涙を流す母の剣幕に押されたローゼンは何も言えなくなった。
そして砂まみれになった魚を拾って「この魚もどうしたの!?」と訊いてくる。
「ほら、すぐに返しにいくよ!」
と、すごい剣幕で腕を引っ張られた。
……僕、盗ってないよ。少し泣きそうだ。
そして、涙を流して魚屋さんの店主に謝罪する母――。
それに連れられて、今にも泣きそうな表情の息子と、先ほどあげたと思われる砂まみれになった3匹の魚。
確かに"今度はお母さんを連れておいで"と言いはしたが……、状況が飲み込めない店主は仕方なくローゼンに顛末を聞いた。
店主とローゼンのおかげで、僕の窃盗疑惑は無事に晴れたのだが……。
暴力事件については、要領よくは説明ができなかった。なんとなく、ローゼンがいる場で話さない方がいいと思ったのだ。
その日の夜、父、母、僕の3人で家族会議が開かれた。
もちろん議題は"僕の暴力行為"について。
父は、「男の子なんだしそれくらいは――」と言いながらも事情を聞こうとしてくれる。
その優しさにまた涙が出そうになった。
ローゼンの何が悪いのか分からなかった僕は、淡々と今日の出来事を話した。
2人はそれをただ聞いている。
次第に母は涙を流しながら「ごめんなさい……」と泣き始めた。
それは何に対しての"ごめんなさい"だろう。
あの状況だけ見たら、僕が一方的に暴力を振るったと思われても仕方ないと思うんだ。
僕はそんな母の姿に心を痛めながらも父に訊いた。
「ねぇ、"欠落者"って何?"加護が無い"って何?」
そう発言すると、母はわあわあと声をあげて泣き出し、ここから一番遠い父の書斎に逃げ込みバタンと扉を閉めた。
いつもなら絶対に母を追うだろう父は、天井を見ながら目を閉じて深く深呼吸をする。
そして「そろそろ、知っても良い頃か――」と、真剣な表情で語り始めた。
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