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既視感あるくない?  作者: むぅむぅ星人


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第86話「キースの作戦」

ーーケアン基地・ブリーフィングルーム。


ーーピースブリタニカ島・北海制海権をエウロパに奪われた。ーー

ジャスティン・ネルソン中将の緊急入電で、基地内は騒然とする。


ネルソンが詳細を説明する。

「ミサイル巡洋艦〈ハニンガム〉は敵ミドガルズオルム級の陽電子砲により轟沈。

 艦長スコット・ミラー以下百九十七名が現在MIA(戦時行方不明)となっている。」

基地内、艦隊内の全員が敬礼し、黙とうが捧げられる。

「ミラー艦長……」

ホワイトファングのメンバーをはじめ、皆が彼を惜しんで口にする。

先の作戦において、ホワイトファングは彼の機転のおかげで救われている。

誠実さと優しさを持ちながら、勇気ある決断が出来る艦長ーー

その喪失は、コロンゴにとってあまりにも大きかった。


黙とうの後、ネルソンが続ける。

「ミドガルズオルム級二番艦による、陽電子砲の脅威は未だ健在である。

 しかし、射程外から我々が見張っている限り抑止力となる。

 かつての様に、そう安々とケアン基地が狙われる事はないだろう。」

ジェイソン・モリス少将も頷くが、やはり顔は優れない。

「しかし、制海権を奪われている限り、敵の艦砲射撃及び揚陸に備える必要はある。

 砲兵を海岸線に配置し、敵艦隊の砲撃に牽制をかけよう。」

基地司令のアメリア・ブラウン大佐はモリスの指示に即応している。

「はい。現在最大射程二千の長距離キャノンを搭載したアスカロン・ロングガンナーを調整中です。」


モリスはブラウンの対応の早さに満足し、話を続ける。

「これで北の脅威は敵部隊の揚陸だ。

 つまり、敵は地上、海上からの二方面侵攻が可能になった。

 この現状ではアドバンテージは敵軍にある。

 恐らく近く反撃侵攻が行われるだろう。

 諸君、今は耐える時だ。」

全員が敬礼し、ブリーフィングは終了した。



ーールーティア基地・通信室。


ダミアーノ・カルドーネ少将がマルセル・ルニエ中将と通信している。


カルドーネはルニエにへつらう。

「ハニンガム撃沈お見事でした、提督。」

ルニエは不機嫌に言う。

「ハニンガム”しか”沈められんかった。嫌味か?」

カルドーネは気まずそうに話題を変える。

「…しかし、何故ケアン基地を陽電子砲で撃たないので?

 これはデュラン提督にも成しえなかった功績ですよ。」

ルニエはシッシッと手を払う。

「それについては、レド…お前から説明してやれ。」


ファビアン・レド大佐がモニターに向けて説明する。

「現在、我が艦隊は”かろうじて”制海権を掌握している状況です。

 陽電子砲射程外では敵第七艦隊が待ち構えている状態。

 安易に陽電子砲を撃てば、第二射までに敵艦隊が突撃してくる可能性があります。」

カルドーネは食い下がる。

「陽電子砲のチャージサイクルを、敵はまだ把握していないのでは?」

レドは首を振る。

「肉を切らせて骨を断つ。ネルソンはそうやってミドガルズオルムを沈めました。

 一度陽電子砲を撃てば、必ず二射目までに何かしら仕掛けてくるのは明白です。

 それに、我が艦隊は既にハニンガムを沈めています。

 彼らの報復は必至でしょう。」


カルドーネは少し前のめりになる。

「しかし、クラーケンがあるではないか。」

レドは即答する。

「アレはヨルムンガンド防衛用です。

 閣下は第八艦隊をヨルムンガンド一隻の艦隊にしたいので?」

ついにカルドーネは言葉に詰まる。

(…ファビアン・レド。この男でルニエは持っている訳か。)


カルドーネ頭をかき揚げ、話題を変える。

「では、例の揚陸作戦に関しては、ご協力いただけるのだな?」

レドは静かに頷く。

「それに関しては確約しましょう。閣下のご期待に沿うよう手配しています。」

カルドーネは納得して頷く。

「よろしい。では、大佐。宜しく頼みますよ。」

通信を切る時、ルニエの小馬鹿にした目を見て、カルドーネは頭をかき乱す。

「あのバカにコケにされるとは!」



ーー一方。第八艦隊新旗艦ヨルムンガンド・艦橋。


ルニエがニタニタしている。

「くっくっく…カルドーネめ。ざまぁないな。」

レドも頷く。

「奴め…提督を煽てて陽電子砲を撃たせる気でしたよ。」

ルニエは椅子に深くもたれかける。

「だから言っただろう。

 奴は狡猾な卑劣漢だ。

 我が艦隊の損耗などお構いなしで、自分の手柄しか考えておらん。」

レドを見て続ける。

「レド。今度の作戦は全権お前に委任する。

 ワシは海上戦でなければやる気にならん。

 ましてや、カルドーネの指図でなど…」

レドは少しため息気味に返答する。

「かしこまりました。」

(…やれやれ。相変わらず我欲が強い。

 まぁ余計な口出しも無くなれば、マトモに作戦を進めらるか…)


エウロパ軍では、未だ海軍、陸軍との確執があるが、作戦においては私情は取り除かれそうである。



ーーケアン基地・ブリーフィングルーム。


スクリーンにはカリビア山脈を中心とした地図が表示されている。


モリスは重い口調で始める。

「敵の侵攻作戦についてだ。」

場は静まる。

モリスは口調を変えず続ける。

「敵は海・陸の二方面から侵攻してくるだろう。

 もしくは陸ではヴァレン峠、カリビア山脈の二ルートまで考えられる。」

スクリーンにエウロパ軍の推定進攻ルートが映し出される。


「それでは三方面侵攻と…」

一人の士官が呟いて、室内は騒然となる。


モリスは机を叩き場を鎮める。

「あくまで最悪の想定だ。

 しかし、敵も先の作戦で我々程ではないにせよ損害はある。

 それだけ広範囲に展開して作戦は難しいだろう。」

モリスはモニターに手をやる。

「問題はそれではない。」

次に映し出されるのは、シュヴァルツアドラーとホワイトファングの戦闘場面だった。

「シュヴァルツアドラーなる中隊だ。」

加えて、ガルムの推定スペックが映され、アスカロンを凌駕している点が強調される。

「アスカロンを超える機体か!」

「それじゃあホワイトファングでも叶わない訳だ…」

ガルムの性能に場は沈む。


モリスはホワイトファングを見て続ける。

「もちろん、彼らの相手はホワイトファングに対応してもらう訳だが…

 結果、消耗戦となるだろう。」


重たい空気が場を覆う。


そこへ、キースが手を上げる。

「将軍、自分に提案があります。」

モリスはキースの目を見て言う。

「大尉、聞こう。」


キースは立ち上がり、スクリーンにある戦闘記録を映す。

それはーーかつてバーミッカム防衛戦でオセリスが使った”赤サイの群れ”であった。

キースは少し照れながら話し出す。

「オセリス大佐…じゃない准将の受け売りなんですが…

 シュヴァルツアドラーの標的は俺たちホワイトファングです。」

そしてスクリーンの赤サイ一色の部隊を指しながら言う。

「全機をホワイトファングカラーにしましょう。」


「おぉ!」

「俺たちもホワイトファングになれるってか!」

「何かそれだけで勇気が湧くな!」

重苦しい室内が一気に晴れやかになる。


キースはそれを見て照れながら頷き、続ける。

「…と言う士気上昇効果もあります。

 が、最大の効果は”敵に本物のホワイトファングが分からない”と言う点です。」


モリスが勘付き加わる。

「なるほど。

 強敵シュヴァルツアドラーの狙いはホワイトファング。

 しかし、そのホワイトファングがどこなのか分からなければ…

 シュヴァルツアドラーは混乱し、思う様に戦えない。

 結果、シュヴァルツアドラーの脅威が削がれる、と。」


キースも頷き付け加える。

「はい。

 加えて、俺たちがシュヴァルツアドラーに対応してまとまる必要も無くなります。」

モリスもうんうんと何度も頷く。

「確かに君たち戦力は集中するより、各所に分散したい。

 これは良い作戦じゃないか!

 采配はそうだな…」


考えだすモリスに、キースは添える。

「北部を第二小隊、南部に第一、第三小隊を置くことを提案します。

 第二小隊は現在アスカロン・ストライダーのベネット中尉がいます。

 彼女は単機でも十分な戦力。

 不測の事態での対応も容易だと思います。」

そう言って、ゾーイの顔を伺う。

ゾーイも「任せて!」とウインクとサムズアップで返す。


モリスはやや心配気味に言う。

「しかし、彼女が外れれば第二小隊はヒューマン中尉とカーティス中尉二名になるが…」

「大丈夫です。」

キースは即答しながらレイとミリィを見る。

二人も顔を合わせて笑顔でOKサインを返す。

「二人の実力は将軍もご存じでしょう。

 特に二人の連携度は開戦からずっと鍛えられており、隊でもトップクラスです。

 自分は彼らを信じます。」

キースの自信に満ち溢れる姿を見て、士官の一人が言う。

「それに俺たちもホワイトファングですよね。

 ばっちりサポートしますよ!」

この一言でまた皆が沸く。


モリスも場の空気を吸い込み、自信を持つ。

「よし!

 今回の迎撃作戦、”白オオカミの群れ”作戦で行くぞ!」

「「「おぉーーー!」」」

皆が大きく吠えた。


北海の制海権を失いコロンゴ軍は危機状況である。


しかし、狼の群れは脅威に恐れず勇気を持って立ち向かう。

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