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既視感あるくない?  作者: むぅむぅ星人


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第85話「海を支配する大蛇と悪魔」

ーーケアン基地・キースの自室。


まもなく日の出が訪れる頃。

キースの部屋に、人の影が忍び寄る。

「!!誰だ!?」

キースは思わず飛び起き身構える。ーーが、相手を見てすぐに構えを解いた。


レイだ。

目をギンギンにさせたレイは、ひどく疲れた顔をしていた。

「悪いなキース。」

キースは手で目をこすりながら、眠そうに言う。

「なんだよ、レイ。起床時間まで全然早いじゃないか。」

レイは申し訳なさげに言う。

「相談事があってな。」


レイの疲弊しながらも真剣な表情を見て、キースもすっかり目を覚ました。

「こんな時間に……お前、寝てないのか?」

レイはコクリと頷く。

「昨日の夜、悩み事が二つ出来てな。結局寝られなかったんだ。」

キースはその言葉を聞き、表情を引き締める。

「お前が寝られないほどの悩みか……どうした?」


レイは少し息を吐き、話し始めた。

「先ずな、ゾーイの事なんだが…」

ゾーイの不審な通信。

それをキースに打ち明けた。

「……ゾーイか。

あの性格に裏の顔があるって事か?」

キースは少し考え込む。

レイも俯きながら言う。

「正直、そうは思いたくない。

 でもな、聞いちまったしな。それに大佐がな…」

レイは言葉を続ける。

「お前はもう、大佐はクリリアのスパイじゃないって言いきってるよな。」

キースは真顔で頷く。

「あぁ。それについては俺は確信してる。

 だから俺は、ゾーイも信じる。」

レイは力を抜いて、少し後ろへ体を倒す。

「だなー。まぁ俺は、少し斜めに構えて見ておくわ。」

キースはゆっくり頷く。

「あぁ。レイは少し距離を置いて見ててくれ。

 毎度面倒な役やらして、ごめんな。」

キースが少し申し訳ない顔をするので、レイが笑って返す。

「いいって、いいって。」


そしてレイは、もう一つの悩みを切り出す。

「でな。ゾーイの事より悩んでる事があるんだよ。」

あまりにも深刻な顔になったので、キースも思わず前のめりになる。

「……詳しく話してくれ。」

だがレイは、少し気まずそうに口を開く。

「…いや、まぁ……ミリィの事でな…」

キースはすぐ納得した。

「あぁ。昨日の件な。確かにいつものミリィと違ったな。

 どうしたんだろうな…」

考え込むキースに、レイは首を振る。

「いや、その件は大丈夫なんだ。」

「え? なら、何の悩みだよ?」


レイは話題を変えるように言った。

「ところでお前は、ヘレンと将来の事とか考えた事あるのか?」

唐突な質問に、キースは戸惑う。

「なっ……そりゃ、まぁ……考えなくもないが……

 でも今は戦場にいるんだ。」

「だからだよ!」

レイが急に顔を強張らせた。

キースは驚く。

「どうしたんだよ。お前からそう言う話が出るなんて。」

レイは視線を逸らす。

「…つまりだ………俺もミリィとだな…」

そこでようやく、鈍感なキースも察した。

「え?……あぁ!そうなのか!」

そして、身を乗り出す。

「お前らいつからなんだ?

 いやー、相変らず俺は鈍感だから気付かなかったわー。」

ノリノリになるキースに、レイは慌てて手を振る。

「いや、まだ…告っちゃいない……」

「え?なんで?」

キースはまた不思議そうにする。


レイは静かに言った。

「……真剣なんだよ。」

レイの言葉には重みがあった。

キースは柔らかく言う。

「お前……相変わらず、そういうトコ真面目だな。」


キースは改めて二人の仲を思い出して言う。

「でもさ。

 お前たちって、もう分かってるんだろ?」

レイは頷く。

「……ただ、女ってのは言葉にして欲しいってトコもあるんだよ。」

「なら、素直に言えばいいじゃないか。」

「だから、それが難しいって言ってんだよ。」

鈍感なキースに繊細なレイ。

二人の恋愛観はどうにも噛み合わない。


レイが思わずぼやく。

「お前は良いよなー。ヘレンと自然体でくっつけたんだから。」

キースは少し照れながら言う。

「まぁ、俺らは……な。

 でも、お前はお前の歩幅で進めばいいんじゃないか。」

少し間を置き、続ける。

「ミリィの事、いつもお前が見守ってるだろ。

 ミリィだって、お前の事そう思ってるはずだ。」

レイは少し笑った。

「……まぁ、な。」

そして立ち上がる。

「ありがとな。

 お前の言う通り俺らは俺らの歩幅で行くことにするわ。」


レイは軽く手を上げ、部屋を出ていく。

キースも同じように手を上げた。


部屋に一人残されたキースは、ふと思う。

(そういや……俺も言葉にした事なかったな。

 戻って来たら言うか。

 ………いや、無理だなー。)

キースはベッドの上で一人悶絶するのだった。



――しかし。

キース達が穏やかな悩みで困っているその頃、戦況は急変していた。



ーーピースブリタニカ島・北海。


マルセル・ルニエ中将率いるエウロパ軍・第八艦隊のヨルムンガンドが歩を進め…

ーーついにコロンゴ軍・第七艦隊の前に姿を現した。


「前方に艦影。

 これは……ミドガルズオルム級です!」

第七艦隊旗艦・サーエヴァンスの観測士は、驚嘆の声で叫ぶ。

「ミドガルズオルム級!?……二番艦を建造していたのか…」

ジャスティン・ネルソン中将もまた、驚きを隠せなかった。


陽電子砲は確かに有効な兵器であるが、短期間で二番艦を目の当たりにするとは…

予想していなかった訳ではなかった。

だが、未だ対策が出来ていないコロンゴにとって、その存在を想定していない方が楽だったのだ。


しかし、現実は二匹目の大蛇が陽電子砲と言う名の毒牙をチラつかせて迫っている。

ネルソンは即座に予定行動に移る。

「全艦散開!

 現れたからには対処するしかない!」

無いなりの対策は考えられていた。

艦隊はサーエヴァンスを中心に横に広く散る。

最北端のカニンガムは、島からもう四十キロメートルの距離まで離れている。


展開する第七艦隊見て、ルニエは片足を大きく叩く。

「これでは一隻しか沈められんではないか!!」

ファビアン・レド大佐は少し呆れた声で言う。

「ですから、言ったではありませんか。

 陽電子砲は一撃必殺の兵器ーー最大船速で奇襲をかけるべき、と。」

ルニエはレドの言い分を通さない。

「うるさい!

 強者は堂々とするものだ。奇襲など弱者のする事だ。」

レドも諭すのは諦め、指示を伺う。

「提督如何いたします?

 この状況では第二射の機会は無いかと。」


その間にも第七艦隊の艦隊運動は続いている。

やがてサーエヴァンスを中央に、ヨルムンガンドを包む緩い円弧を描くような陣形になった。


「艦隊運動に乱れが無い。…ヨルムンガンドを想定していたか。

 提督、これではサーエヴァンスは無理です…」

レドが敵艦隊の動きに驚き、ルニエに進言する。

ルニエは一考の後、標的を定める。

「ならば、ハニンガムだ!

 アレのおかげでワシはカルドーネに大恥をかいた。

 沈めなければワシの気が静まらん。」


ヨルムンガンドは大きく取舵をきり、ハニンガムへ主砲を向ける。


ネルソンはそれを見逃さない。

「敵の目標はハニンガムだ!

 ハニンガムは全速で後退。

 潜水艦は魚雷で水柱を射線上に形成。

 他全艦はミドガルズオルム級へ包囲を仕掛けるぞ。」

第七艦隊はシミュレーション通りの動きをスムーズにこなす。


ハニンガムとヨルムンガンドの間に大きな水柱が多数出現する。


レドは慎重になる。

「撃線上の水柱…それで陽電子砲を減衰させる算段か…

 提督、これでは無駄撃ちの可能性もあります。

 一度退いて立て直すべきかと。」

しかし、ルニエは聞く気が無い。

「ここまで来て、撃たずに退けるか。

 主砲、目標敵巡洋艦ハニンガム!

 ってぇーーーーー!」


ルニエに号令でヨルムンガンドから陽電子砲が放たれるーー


光線は水柱を通過する事で、水蒸気爆発の中減衰した。

しかし、それでも完全に無力化するには至らない。

威力を落としながらも、ハニンガムを捉えた。


ガンマ線の束がハニンガムを覆う。

そしてハニンガムは炎の渦を巻き上げながら、ゆっくりと沈みだした。

ーー艦内では僅かに残った者たちの悲鳴で混沌を極めていた。


ネルソンは歯を食いしばって叫ぶ。

「ハニンガム近隣艦艇は救助に回れ!

 …ここからだ……ここからだぞ!

 何としても、沈めるぞ!

 潜水艦〈コーディ〉〈エイムズ〉〈ヴェイル〉は既に動いているな?」

参謀が回答する。

「はい。各艦トライデント中隊を射出済み。

 敵艦コンタクトまであと五百です。」

ネルソンは参謀を見て頷く。

「前回のミサイル作戦はもう通じん。

 だが、今回は我々も海中戦力を持っている。

 二十七本の鉾が大蛇を刺し殺す!」

三個中隊、合計二十七機のトライデントが、ヨルムンガンド目掛けて最大速で迫る。


トライデントの機影は当然ヨルムンガンドにも察知されている。

「敵水中型ACE、その数二十七。本艦へ接近中。」

レドは指示する。

「百八十度回頭。最大船速でこの場を離れーー」

「待て!」

ルニエが遮る。

「勝手に指示するな。

 何のためにアレがいるんだ。 

 ヨルムンガンドは現状維持。

 敵ACEの迎撃はアレに任せろ。」

ルニエは余裕の表情で指示を変更した。


十八機のトライデント大隊は、いよいよヨルムンガンドを射程に捉える。

…しかし、彼らの前に巨大な機影が現れた。

「……なんだこれは?!」

「ミドガルズオルム級艦底に大型機が張り付いてた!」

「これは……ACEなのか?」


驚くトライデントパイロット達を見ながら、その巨体は十本の触手を展開する。

その姿はイカの怪物ーー海の悪魔<クラーケン>だ。

「迎撃開始。テンタクルズはツ―マンセルで各個撃破せよ。」

巨大水中型ACE<クラーケン>は本体から牽制魚雷を発射しながら、十本の触手を巧みに操作しトライデントを確実に葬っていく。

「なんだこの触手!?」

「動きが単体だけでも正確すぎる!」

「完全に二対一にされちまってーーーうわぁぁぁぁぁ!!」


「現在トライデントの残機数、十七!」

通信士の報告に、ネルソンは青ざめる。

「ば、馬鹿な!

 交戦後僅か三分で十機のトライデントが…」


海上では、既に第八艦隊はヨルムンガンドを囲う様に展開している。


ネルソンは苦渋の決断をする。

「トライデント全機撤退。

 回収後、艦隊は陽電子砲射程外へ後退する。

そして、絞り出すように言った。

「……島から撤退だ……」


後退する第七艦隊を眺め、ルニエは勝ち誇って高笑いする。

「はっはっはっ!どうだ!コロンゴの間抜けども!

 ヨルムンガンドとクラーケンさえあれば第八艦隊は無敵だ!」


海に君臨するは大蛇と悪魔。


二つの脅威の前に、コロンゴは北海をエウロパに明け渡すしかなかった。

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