表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
既視感あるくない?  作者: むぅむぅ星人


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

81/84

第80話「限界突破のヘレン」

ーーヴァレン峠エウロパ側。


キースはようやく峠頂上に差し掛かろうとしていた。

だが、搭乗するナイトメアは連戦で激しく消耗している。

「あと少し……頼む、持ってくれよ……」

自機に言い聞かせる。


追手が減ったのを確認し、わずかに息を吐いた。

「……しっかし、このナイトメア。大したもんだな。

 プロトタイプと戦ったのが、ミハエル・ファフナーとの初戦だったか……」

あの操縦技量、初戦での完敗を思い出す。

「……初めからタダ者じゃなかったな。」

更にミハエルの一言を思い返す。

『…残念だ。

 出会った場所が戦場でなければ……

 君とは良き友人になれたろう。』

「あんな事言って……

 それにアイツは俺を撃たなかった。

 ……ってか、撃てなかったみたいに見えた。」

考えを巡らすほど、ミハエルの人物像が見える様で見えない。

「アイツもこの戦争を望んでない…んだろうな。

 アイツとはまともに戦いたくない……」

考えがまとまらない中ーー状況を思い出し、気持ちを切り替える。

「今は、あれこれ考えてる場合じゃないな。

 信号は見えたんだ。もうひと踏ん張りだ。」

疲労限界の身体と機体を、意思だけで動かす。


ーーそこへ、風を切る音。


二機のヒポグリフが上空から接近した。


ミハエルは機体を視認した瞬間、拡大映像を展開した。

「待て……この損傷痕。」

装甲表面の裂傷、関節部の焼け跡、そして機銃口の摩耗。

「これは追撃戦の痕じゃない。近接制圧の傷だ。」


ミハエルは、断言する。

「間違いない。あれは鹵獲機だ。」

レティシアが目を細める。

「それじゃあ…?」

「中にいるのは、キース・ウォレンだ!」

その確信は、重かった。


「で、どうするの?撃墜するの?」

レティシアの問いこそ、ミハエルの葛藤そのものだった。

(二機なら撃墜は容易。

 だが彼を失うのは、将来の対クリリア戦において大きな損失。

 しかし、今はシュヴァイツァーの監視下……欺くのは難しい。)


短い熟考の末、ミハエルは決断する。

「鹵獲する。

 ホワイトファング隊長を捉えれば、成果は絶大だ。」

レティシアは、ミハエルの重たい声に感付く。

「了解。……でも限界もあるよ?」

ミハエルも頷く。

「ああ。阻止限界を設定する。

 やむを得ない場合は――撃墜だ。」


二機は散開し、包囲態勢を取る。


キースは息を呑んだ。

「ヒポグリフ!!

 空戦機相手かよ…」


キースは試しに友軍ジェスチャーを送る。


ミハエルはそれを見て、わずかに笑った。

「ほぅ。逃走中に識別信号まで取得したか。

 大したものだ。……だが!」


ミハエルは発砲を始める。


「やっぱダメか!」

キースは弾幕を回避しながら叫ぶ。

「なら、なんとか国境まで逃げるしかないな!」

意を決し、国境に向かって走り出す。


「させないよ!」

今度はレティシアが行く手を阻む。


前方から低空突撃をかける。

それをスレスレで回避するキース。

「なっ!?」

驚くレティシアに、ミハエルは警告する。

「手負いとは言え、相手はキース・ウォレンだ。

 不用意な突撃は控えるんだ。」

レティシアも頷く。

「そうだね。相手が相手だ。本気出さないと。」


「あっぶねー……。

 でもなんで突っ込んできた?

 落とす気ならあんな無茶しないはず……」

違和感を抱えたまま、キースは走る。



ーー一方、ヴァレン峠コロンゴ側。


レイたちも中腹へ到達していた。


「急げ、急げよ…」

「信号は途絶えてない。大丈夫。」

レイとミリィは、無事を確認しながら急ぐ。


しかし、ヘレンの顔がみるみる青ざめる。

「あぁ…この軌道って…」

展開ドローンの映像が警告色で明滅した。


ヘレンの様子にレイが問いかける。

「どうした、ヘレン?」

ヘレンが叫ぶように答える。

「空戦機よ!キースの周りに二機纏わりついてる!」

レイが振り向く。

「識別まで出来るのか!?」


「違う…見えるの。」

ヘレンは捜索ドローンからNuGearを介してキースの様子を視覚化していた。

「ダメ!キース!後ろ!」

見えるキースの危機にヘレンが叫ぶ。


ーー


『ダメ!キース!後ろ!』

「え?ヘレン?!」

と同時に、キースは後方からのミハエルの銃撃を見ずに回避した。

「馬鹿な!

 今のは直撃コースだぞ!」

ミハエルが目を見開く。


「ヘレンの声が……聞こえる!」

キースは動揺しながらも、確かにヘレンの声を確信する。


「なめんなー!」

続け様にレティシアが横合いを攻める。

『伏せて!』

キースはヘレンの声の通りに伏せる。

「嘘でしょ!!」

レティシアもまた、キースの超人的な動きに凍りつく。


「近くに来てるんだな、ヘレン!」


ーー


「うん、もうすぐ届くから!」

ヘレンはキースとNuGearを通して会話している。

ミリィが息を呑む。

「レイ……ヘレン、キースと話してる……」

レイも不思議な現象に戸惑うが、信じるしかなかった。

「これがNuGearの力なのかよ…」


ミリィはヘレンを気に掛ける。

「ヘレン、大丈夫?」

ヘレンはミリィに目を向け、いつも通りの優しい声で答える。

「うん、大丈夫。

 …もうすぐ行くからね、キース。」

キースと会話しながら、自分にも受け答えするヘレンに、ミリィも理解が追い付かない。

が、キースと話せた事で、ヘレンがいつものヘレンに戻った事に安堵する。



ーーヴァレン峠国境線。


キースはヘレンの助けで、ミハエルとレティシアの猛追を抜ける。


レティシアが慌てて叫ぶ。

「ミハエル!もう限界だよ!!」

ミハエルは重く口を開く。

「やむを得んーー撃墜する!」

二機のヒポグリフが、殺気を持ってキースに迫る。


「くそ!ここまで来て!!」

キースが覚悟を決める。


『ダメェェェェ――――――――!!!』


次の瞬間ーー。


ドローンが二機のヒポグリフに急速に接近する。

そして、歌声が二機を包んだ。

「何だ?歌が聞こえる?」

「これ…あの時の…」

二人が不思議な空間に包まれると同時に、二機のヒポグリフは力無く墜ちた。

幸い、低空戦闘中だった為、損傷は軽微は避けられた。


そこへレイたちが駆けつける。

「キース!」

「やった!無事だ!」

レイとミリィはキースのナイトメアを確認して安堵する。


「キース…やっと会えた。」

ヘレンはキースを見てそう言うと、すぅっと気を失った。

「ヘレン!」

キースは崩れるヘレンのアスカロンの元へ駆けつける。


一方、ミハエルは混乱していた。

「くっ!再起動不能…レティシア、そちらはどうか?」

レティシアも必死に操作するが、反応は無かった。

「ダメ、こっちも…」

ミハエルはレイたちの姿を見て覚悟する。

「狩る側のはずが……狩られる側になるとはな。

 君を付き合わせる事になってしまった……すまない、レティシア。」

レティシアは首を振る。

「最期がアンタとなら…悔いは無いかな…」


ーーその時。


エウロパ後続から一個中隊のナイトメアが駆けつけた。

「ファフナー中佐、レティシア、無事ですか?」

ファーレンハイトの部隊だった。


「助かった……機体はダメだが、我々は無事だ!」

ミハエルとレティシアは、ファーレンハイトの部隊に回収され撤退する。


レイとミリィは撤退する敵部隊に安堵する。

「…ふぅ。タイミングばっちりだな。あの部隊。」

「このままやり合ってたら危なかったかも…」

そして、レイはヘレン機に目をやる。

「でー、どうだ?迷子の隊長。

 ヘレンは大丈夫か?」


ヘレンのアスカロンはキースが操縦している。

膝にはヘレンが安らかな寝息を立てていた。

「あぁ、すっかり安心しきった顔で眠ってる…

 ごめんな、心配かけて……」


ミリィは二人の様子に軽く涙を拭う。

「ほんっとに……

 ヘレン、凄い心配してたんだから……」

レイはいつもの調子を戻しておどける。

「あのヘレンが、魂抜けたみたいになって…

 お前の信号見たら、すんげー前のめりなったり…

 大変だったんだぜ。」


「そっか。そんなに心配させちゃったんだな。」

そう言ってキースはヘレンを抱き寄せる。

眠る顔が少し笑った。


ホワイトファングのアルファが帰ってきた。


ヘレンの限界を突破した力によって。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ