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既視感あるくない?  作者: むぅむぅ星人


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第79話「越境のキース」

ーーヴァレン峠登り口。


岩肌を縫う山道の先――鉄柵に覆われた検問所が見えた。

警備兵二名、機関銃座一、ゴブリン二機。


そこへ、エウロパ軍から鹵獲したワゴンに乗ったPLFが入る。


ゴブリンの警戒ランプが赤く点滅する。

警備兵が銃口を向ける。

「止まれ。」

慌てた演技で、エウロパ式防護服姿で艤装したPLFの一人が降りる。

「急いでるんだ!」

警備兵は態度の悪いPLFに対して、怪訝に言う。

「通行証は?」

PLFの男は偽造した通行書をサッと見せる。

警備兵がもう一人来て、問い詰める。

「おい!しっかり見せろ!」

PLF兵が、わざとらしく苛立つ。

「あのな、こっちは疫病捕虜を抱えてるんだ!

 この姿見たら分かるだろ!

 お前たち、感染したいのか?!」

”疫病”の言葉に二人の警備兵は少し距離を取る。

「ま、待ってくれ。」

「こっちもそんな報告は聞いてないんだ。」

PLFの男は捲し立てる。

「感染速度が異常なんだ!

 こいつはきっと人型生物兵器だぞ!」

いよいよ二人の警備兵は慌てて反射的に大きく後退した。

が、代わりにゴブリンが迫る。

「なら、ACEだったら問題無いだろ?」

(…くそ!ここまでか…!!)


PLFの男が諦めかけたその時ーー


(今しかない――!)

キースは飛び出し、ゴブリンに向かって疾走する。

ワイヤーショットでゴブリンに取りつき、緊急脱出ボタンを押す。

コックピットが強制的に開かれ、ゴブリンのパイロットは驚く。

その隙をついてキースはパイロットを投げ飛ばす。

もう一機が状況を理解出来ない隙を突き、コックピットが開いたままマシンガンを撃つ。

振り向き様に、機銃を沈黙させる。

遠心力に体を振り回されながらも、照準だけは狂わせない。


――すべて、数秒だった。


だが、生身の警備兵を撃つ事が出来なかった。

ゴブリンに関しても、パイロットは無事だった。


キースはPLFに叫ぶ。

「早く逃げるんだ!」

PLFは即座にトラックをバック反転させ、アクセル全開で逃走した…


警備兵が応援を要請する。

「至急、至急!こちらヴァレン峠登り口。

 何者かがゴブリンを一機奪って越境を試みている!

 応援を要請する!」


キースは呟く。

「やれやれ。まっ俺らしいっちゃ、らしいか。

 さて、周波数は…これで届いてくれよ、ケアン基地!」


――キースは敵地を駆け抜ける。



ーーガンドラ基地・通信室。


「繰り返す。

 至急、ヴァレン峠に応援を要請する!」

通信士が訝しげに副司令のハインツ・ファーレンハイト中佐に話す。

「以上なんですが……ヴァレン峠って。

 どうします?」

ファーレンハイトは少し沈黙して返す。

「彼の慌て様、何かあるな。

 再度彼に詳しく状況を確認させろ。

 通信ログ貰ってくぞ。」


そう言ってファーレンハイトは上司マティアス・ヴァルター少将の元へ向かった。



ーー司令室。


室内には、ヴァルターの他に、ミハエルとレティシアがいた。


ファーレンハイトはヴァルターに通信ログを提出する。

「ただの一脱走兵の逃走にしちゃ、慌てすぎじゃないですか?」

ファーレンハイトの問いかけヴァルターも頷く。


そこへ、通信士が駆け込んでくる。

「警備兵の追加報告です!

 その何者かですが、ゴブリンを数秒の内に奪取。

 更に即座に一機を無力化してます。」

ファーレンハイトは呟く。

「やはり……かなりの手練れだな。」

通信士は続けるが、その表情が訝しい。

「おかしいのが…死傷者がゼロなんです。

 おかげで通報が早かった訳ですが…」


ミハエルは気づく。

「キース・ウォレンだ。」

レティシアが反応する。

「ホワイトファング隊長の?」

ミハエルは頷く。

「鮮やかなACE捌き…

 不殺の信念…

 間違いない。彼だ。」

ファーレンハイトは感心する。

「さすが特務少佐は、ホワイトファングの事に詳しいな。」

ミハエルは苦笑する。

「特務の任は解かれました。

 今は国防司令部直属の中佐です。どうにも振り回されるようで。」

そう言って、通信士に話かける。

「国防司令部のシュヴァイツァー大将に、緊急伝をお願いしたい。」


モニターにアレクサンドル・シュヴァイツァー大将が映る。

その表情は険しい。

「中佐、どうした。ワシは忙しい。」

ミハエルは一礼し、上申する。

「現在ヴァレン峠をホワイトファング隊長のキース・ウォレンが、逃走している模様です。

 これの追撃許可を。」

シュヴァイツァーは問いただす。

「模様?確定情報ではないのか?」

ミハエルは即答する。

「彼の行動状況からの推察です。

 私は幾度も彼と交戦し、彼の性格も理解しています。

 証拠はありません。ーーですが、確信はあります。」

シュヴァイツァーは笑う。

「確信で動くか。

 まぁいい。許可しよう。」

「は!ありがとうございます。」

ミハエルは敬礼しながら通信を切る。


続けて、ミハエルはヴァルターに願い出る。

「私とレティシアにヒポグリフをお貸しいただけないでしょうか。」

ヴァルターは快諾する。

「承知した。直ぐに手配しよう。」

ミハエルはレティシアに振り向く。

「キース・ウォレンが合流したら、ホワイトファングは完全復活する。

 何としても阻止するぞ。」

レティシアは黙って頷く。


格納庫へ駆けて行く二人を見ながら、ファーレンハイトが言う。

「何か嫌な予感がするな…

 俺の部隊を後続させます。」

ヴァルターも少し不安な表情で頷く。

「お前がそう思うなら、可能性もあるか…」

 


ーーヴァレン峠エウロパ側。


キースの逃走劇は続く。


救援信号は傍受されている為、ヴァレン峠の全敵がキースの行く手を阻む。

しかし、キースはゴブリンをナイトメアに乗り換え、追撃部隊を圧倒する。

「何て奴だ!」

「動く前にやられてる…」

「同じ機体のはずなのに!」

「おーい、そっちも無事かぁ?!

 …命拾いした。……ってか、殺意が無かったな……」


キースは呟く。

「あんま来ないでくれよ…

 討たないで倒すってのは結構大変なんだ。」



ーー一方、ヴァレン峠コロンゴ側。


レイたちが峠に辿り着く。


レイが確認する。

「今のキースの位置は?」

ヘレンは即答する。

「エウロパ領の中腹くらい。」

「まだ先ね…」

ミリィも焦りの声で呟く。


レイは指示する。

「取り合えず信号弾だ。

 あいつに俺らの到着を知らせてやろう。」

ヘレンは頷き、信号弾を発射する。

(来たよ、キース。すぐ行くから、待ってて…)


キースの逃走劇は続く。


――しかし、追撃者は空から迫る。

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