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既視感あるくない?  作者: むぅむぅ星人


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第77話「ブリタニカの末裔」

ーーPLFアジト。


地下の一室でキースとPLFの男が対面している。

キースは彼の目を見て、彼の言葉を待つ。


男は静かに口を開いた。

「君は戦争をどう考える?」

男の唐突かつ深い質問に、キースが戸惑う。

「いきなり難しい事を言うな。」

男は少し前のめりになる。

「君はこれまで多くの戦場を経験してきた。

 戦争へ至る経緯、戦場の混沌、戦闘後の光景…」

キースは今までの島での事を思い出す。

「たった大統領行方不明から始まって…

 島では多くの人が死に、今も残っている人は苦しんでる…」

男は頷く。

「そう、”たった”の些細なきっかけで多くの人が死に苦しんでいる。

 島だけではない。

 本国でも僅かではあるが、戦争に投じる資本によって、経済は混乱している。

 さらに言えば、島での戦闘は一年を超えている。このまま激化すればやがて…」

キースは思わず立ち上がる。

「本国も戦場になるって言うのか!?」

男は静かに頷く。

「始めるのは容易く、終えるが難しい……それが戦争だ。

 指導者の行動一つで、民の苦しみは左右される。」

キースは再び座り、リュウの一言を思い出す。

「戦争の本質か……」


キースから重いテーマが出たところで、男は席を立つ。

しばらくして、キースを横目に問う。

「何故戦争が始まると思う?」

キースは熟考するが考えがまとまらない。

「攻める者がいるから、守るために戦う?」

男は頷く。

「そうだな。結果としてはそう。

 しかし、その攻める者は何故相手を攻める?」

キースは少しうんざりしだす。

「さっきからアンタ何が言いたいんだよ?」

しかし、男は険しい表情でキースに迫る。

「戦争の本質…君が言った事だ。

 その答えを君自身で導き出して欲しいんだ。」

キースは考え込む。

「そんな難しい事、急に言われても…」


キースの様子を見て、男は話題を変える。

「ヒント…と言えるか分からないが、我々の活動の事を話そう。」

男は再び椅子に座る。

「知っての通り、我々は君たちコロンゴ、エウロパ問わず中級将校を狙って拉致する。

 ターゲットは自発的では無く、軍務として参戦している者だ。」

男は拉致から解放までのプロセスを説明する。

「拉致後、ここへ連れて我々の”想い”を語る。

 彼らにその”想い”を押し付けはしない。

 ただ、ひたすら彼ら自身でその”想い”について考え、自分で答えを出してもらう。」

思わずキースは遮る。

「さっきから”想い””想い”って…何だよ。」

男はキースの目を見て語る。

「ブリタニカの矜持ーー”他者を侵さず、互いを理解する”。」

キースは息を飲む。

「アンタらブリタニカの末裔か…」

男は頷き、続ける。

「ブリタニカは王政をとっていたが、歴代の王が率先してその矜持を貫いてきた。

 国は宗教、思想、学派、政治結社…それこそ他者を侵さない活動は何でも許された。」

キースは不思議に思う。

「よくそれで国が混乱しないもんだな。」

ここにきて、男は笑顔になる。

「それが出来ていたんだ。

 誰もが己の思想を持ち、それを誰も踏みにじらない。

 共有する想いは国を愛する事、助け合う事。」


男は腕を広げ、天を仰ぐ。

「世界は多様性に富んでいる。

 人種、言語、信仰、信念…」

ふいに、男は怒りの表情に変わる。

「何故それらが自由でないのか…!他者が干渉するのか…!」

キースは次第に男の言葉に吸い込まれていく……

「人は”個”だ。

 しかし、共同体…国を形成する以上、孤立していてはならない。

 ゆえに、法などを以って”統率”する事で国は”個の集団”を”群”として統一する。」

ここで男は拳を握り口調を変える。

「しかしだ!行き過ぎた”統率”は他者への干渉・浸食を生み出す。

 ”群”の中にあって”個”はアイデンティティーを守る為、他者と”比較”をするのだ。

 自分は奴より上だ。奴が妬ましい、陥れて勝ち上がりたい……

 ”個”の尊厳は法によって完全に守られると思うか?キース君。」

キースは返答に詰まる。

「それは……確かに限界があるだろう…」

男はゆっくり頷くき、そまま項垂れる。

「そう。”個”の尊厳は、国家という”群”では守れない。

 ”個”は”個”同士が守り合わなければならない。」

キースはハッとする。

「それが、”他者を侵さず、他者を理解する”か!」


男は目を瞑り頷く。

「ここまで”個”の尊厳について話した。

 が、大局を見ればこれは”群”…つまり国にも言える事なのだ。」

キースは続ける。

「つまり、国が相手国を認めないから争い…戦争が起こる…のか。」

男も続ける。

「話して分かれり合えば、戦争など起きない。

 分かり合えないから、戦争になる。」

「それが…戦争の本質……」

キースは思わず呟く。


男は一息つく。

「その答えは片鱗だ。

 このテーマは先ほど言った思想、理念…または欲望など複雑な要因が入り交ざっている。」

キースは頭を抱える。

「難しいな、ホントに。」


男は一旦結論が出た所で、活動の話題に戻す。

「話を我々の活動に戻そう。

 我々の活動目的は一つに、身代金による軍事費へ攻撃。

 そして二つ目が、将校を戦場から下がらせ、戦争を膠着させる。」

キースは引っかかる。

「もう一つあるんじゃないか?

 彼らにブリタニカの矜持を説いて回って貰い、反戦を促す。」

男は首を振る。

「それが先ほどの”戦争の本質”の異なる答えだ。」

キースは首を傾げる。

男は続ける。

「我々は、この戦争…コロンゴ、エウロパ内だけの問題ではないと考えている。

 この戦争を動かす”影”が居るだろう、と。」

キースは合点が付く。

「そうか!戻った将校がこぞって反戦を掲げれば、彼らが”影”の標的になる。」

男は頷く。

「奴らの最終目的は分からん。

 が、この一年を見る限り、目的の一つに両国の国力損耗があると思う。

 その点では、我々の活動は彼らにとって利がある。

 故に今も我々は奴らに狙われず、活動を続けられる。」


キースは俯く。

(彼らにクリリアの影の話をすべきか?

 でも、話たら彼らも奴らの標的に…リュウのようになってしまうかも…)


キースは内心を押し殺して、彼らに感心を示した。

「アンタらがそんな組織だったなんてな。」

男は笑顔で頷く。

「表で我々が罵られる事も、良い隠れ蓑になる。

 僅かな反抗ではあるが、着実に効果は出ている。」

キースも笑顔で頷く。


そして、男は切り出す。

「問題は、君の処遇だ。

 いつもであれば、身代金を要求し、解放。後に戦場から離れてもらう。

 だが、君に戦場を離れて欲しくはない。」


男は真っ直ぐにキースを見て言う。

「君には”力”がある。

 これまでも君を先頭に、ホワイトファングは奇跡的な勝利を続けてきた。

 今や君はコロンゴの希望とも言える存在だ。」


男の言う事に、キースは言葉を失うーー


確かに、厳しい戦況を覆してきた。

先のカリビア山脈越境作戦では、要として頼りにされていた。

そして、自分たちの敗北がきっかけで作戦失敗となった。

ーー思い返し、キースは男の言葉を自覚する。

「確かに俺たちが戦況を覆した事は何度もあった。」


男は言う。

「それは、我々にとっても希望なのだ。

 この戦争を終わらせれるのは、君たちのような存在だと思う。

 故に、通常ルートで解放は出来ない。」


男は一考して、話す。

「かなり危険ではあるが、

 ヴァレン峠から脱出を図って欲しい。」

キースの顔は険しくなる。

「今ここはエウロパ領なんだよな?」

男は頷く。

「ヴァレン峠は現在大きな要衝ではないが、当然警戒されている。

 我々が責任を持ってコロンゴ送り届けるべきなのだが……

 我々の立場を理解してくれ…」


男は深々と頭を下げる。


キースは男の方に手をかける。

「今回の事、全部分かった。

 島にも必死にブリタニカの矜持を守ろうとする人たちが、いたことを知れて良かった。

 それに、俺は何度も苦境を覆してきたんだろ?

 越境くらいやってやるさ!」


男は固くキースの手を両手で握る。

「こんな形で君に接触した事…許してくれ。

 だが、君には我々の存在意義をどうしても伝えたかった…」


キースは男の手を取り、握手に変える。

「あぁ。アンタらの意思は理解した。

 俺たちも戦争の早期終結に向けて戦う。

 アンタらも…死なないでくれ。」


男はゆっくりと頷き、キースに紙きれを渡す。

「これで我々と連絡が取れる。

 もし、我々の力が必要になったら協力は惜しまない。」

キースは最後に問う。

「アンタは何て呼べばいいんだ?」

男は一考して答える。

「そうだな……コンコルディアとでも呼んでくれ。」

キースは苦笑いする。

「コンコルディア(Concordia)…調和とか和解だっけか。

 アンタらしいな。」


ピースブリタニカ解放戦線ーーブリタニカの末裔。


彼らもまた――ブリタニカの矜持を守るため戦っていた。

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