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既視感あるくない?  作者: むぅむぅ星人


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第75 話「アルファ失えども」

ーーピースブリタニカ島・北海沿岸。


《隊長機を撃破。

 君たちの隊長はPLFに捉えられた。》

ミハエルの声が、戦場全域に冷酷に響き渡った。


「……うそ……」

ミリィが絶句して、その場で立ち尽くす。

「くそおぉ!」

ビルが拳を叩きつける。

「何かの冗談…ですよね?」

サイラスは現実を拒むように呟く。

「間に合わなかったか……」

ユアンは唇を噛み、血の味を飲み込んだ。

「やっぱり俺たちが行かなかったら…」

俯くケビンの声は震えている。

「でも、隊長が行けって言ったんだから……仕方ないじゃない!」

珍しくマリアがケビンを慰めた。


その横で――

ヘレンは、動かなかった。

最愛の人の機体が撃破された。

それを理解した瞬間、彼女の時間は止まっていた。

やがて、ゆっくりと呼吸が戻る。

「……あ……あぁ……」

震え始める指先。


次の瞬間――


「あぁぁぁああああ!!

 キースゥゥゥーーーー!!!!!」

柔和で静かな彼女の面影は消え、そこにいたのは慟哭そのものだった。


「ヘレン!!」

暴れるヘレンをミリィが必死に押さえ込む。


ーーホワイトファングの皆がキース機撃破に取り乱す。

しかし、一人だけ冷静な者がいた。ーーキースの親友レイだ。


レイは、副隊長として任を全うする。

「こちら、ホワイトファング副隊長レイノルド・ヒューマン中尉。

 ホワイトファング隊は隊長機を撃破されました。

 …作戦中止を進言します。」


ジェイソン・モリス少将は膝を落とす。

『隊長機が撃破…?ウォレン大尉が…?』

力無く呟くモリスに、レイが声を張り上げる。

「しっかりして下さい、将軍!

 ホワイトファング奇襲は失敗です。

 速やかに全軍撤退し、被害を最小限に抑えて下さい!」

レイの言葉に、モリスも正気を取り戻す。

『そうだな。

 全軍、作戦中止!!

 越境部隊は順次撤退。

 砲兵部隊並びに空挺部隊は撤退を援護!』


一通り指示の後、モリスはレイに伺う。

『しかし、君たちはどうする?』

レイは冷静に答える。

「状況は完全に孤立しています。

 カリビア山脈を迂回してヴァレン峠のルートから脱出をーー」

『その必要は無い!!』

通信に割って入る声。--ハニンガム艦長のスコット・ミラー大佐だった。

彼はキース機撃破の報を聞くや否や、艦を島へ戻していたのだ。

『今、全速で回収に向かっている。

 君たちを見捨てはしない!』

ミラーはジャスティン・ネルソン中将に対して敬礼し通信する。

『提督、独断専行お許しください。

 しかし!彼らはコロンゴの希望なのです!』

ミラーの熱意に胸打たれた、ネルソンは即答した。

『第七艦隊は残存するホワイトファングを救出する!

 トライデント全機発進。

 艦隊はサーエヴァンスに続け!旗艦を盾にしても彼らを助けるぞ!』


第七艦隊の心意気に、レイの目に光が戻る。

「っしゃ!希望が見え始めたぞみんな!」

しかしホワイトファングは依然意気消沈している。

見かねたレイが一喝する。

「お前ら、しっかりしろ!

 キースは死んだわけじゃない!

 今俺たちに出来る事はーー”生きてキースを待つ”事だろ!!」

レイの言葉に一同がハッと覚醒する。


暴れていたヘレンは気を失っていた。

「レイ、ヘレンは俺たちに任せてくれ。」

「ええ。」

ビルとサイラスがヘレンを抱える。

「サンキューな。やっぱ前の第二小隊は頼もしいわ。」

レイは二人に向かってサムズアップして礼を言う。


「レイ…大丈夫?」

ミリィは、レイが必死に冷静を装っているのを察して気遣う。

「へへ…さすがにミリィにはバレバレか。

 でもな、ここは俺が踏ん張らないとな!」

両手で自分の頬を叩き、レイが号令をかける。

「みんな!俺が殿を務める!

 全速力で逃げ切るぞ!」

最大限の威勢を張るレイの機体に、ミリィが手をかける。

「私も残る。後ろは見てくれるんでしょ。」

機体越しでもミリィの優しい笑顔が伝わってくる。

「よし!久々に二人でやるか!」

「ええ!」



ーー一方シュヴァルツアドラー隊。


ミハエルの帰投命令にワーグナーツインズは納得しない。

「何故ですのミハエル様!」

「今こそホワイトファング倒すチャンスですのに!」

ロメロが制す。

「誇り高きシュヴァルツアドラーが、手負いの相手をいたぶる事はないんだよ。」

マルティンは冗談交じりに言う。

「しかし、これじゃ閣下に怒られますかね?」

ミハエルは笑って首を振る。

「いや、閣下なら私の想いを汲んでくれるさ。」


そこへダミアーノ・カルドーネ少将の叫び声がする。

『シュヴァルツアドラー隊!

 ホワイトファングを掃討せよ!』

ギデオンが疲れた声で言う。

「やれやれ、別の閣下は怒り心頭ですね。」

ミハエルはカルドーネにやや挑戦的に言う。

「ホワイトファングとて、指揮官を失えば烏合の衆。

 敵の作戦は失敗です。これで彼らに意味は無くなりました。

 カルドーネ閣下は、残敵に集中されるのが宜しいでしょう。」


ミハエルはホワイトファングに構うなと言うが、逆にカルドーネの野心に火をつける。

『ふん!、ならこちらでやらせてもらう!

 全軍、越境部隊は放っておけ!全戦力でホワイトファングを掃討するのだ!

 砲兵は敵の行く手を阻め!炎の海に落とし込んでやれ!

 ヒポグリフ隊は空から狙い撃て!

 高機動型ナイトメアから順次、地上戦へ参戦せよ!

 ホワイトファング……討ち取った暁には二階級特進も夢ではないぞ!』


ミハエルは額に手をやる。

「愚かな。警告だと理解出来なかったのか…」

「少佐と少将とは分かりえる未来が見えないっスねー。」

ベルントの一言で一同が笑った。

撤退するミハエルは祈る。

(ホワイトファング…厳しい撤退戦となろう。

 だが、君たちがこの程度で倒れる事は無いはずだ…)



ーーホワイトファングの撤退戦。


それは壮絶な地獄の脱出戦だった。


オーガからナパーム弾が放たれ、たちまち火の海が現れる。

「どららららあぁぁぁ!」

ビルのマシンガンパンチの風圧で、火の海に一筋の道を作る。

執拗なオーガはミサイルで追撃。

「オートロックなら!」

サイラスのジャミングで、ミサイルは軌道を失う。


空からはヒポグリフが高速で迫ってくる。

「生きてキースを待つんだ!負けない!!」

ヘレンのドローンが、ヒポグリフの急降下に合わせてNジャマーで捉える。

「ヘレン先輩!」

止めきれないヒポグリフは、マリアの地対地ロケット弾で牽制する。


高機動ナイトメアが近づく。

しかし、レイの狙撃の前には、高い軌道性も虚しく次々撃ち抜かれる。

「すまん!抜かれた!」

レイが言葉を発するより先、突破したナイトメアはミリィに切られていた。

「大丈夫!二人ならやれる!」

ミリィの一言にレイが少し照れる。

「”二人なら”か…嬉しい事いってくれるねぇ。」


「お二人だけじゃないです!」

レイとミリィの少し後方には左右にユアン、ケビンがついた。

「絶対にみんなで逃げ切りましょう!」

ユアンが後続のインプをジャンプ&ショットで的確に落とす。

横合いを狙うナイトメアは、ケビンの槍が逃さない。

「諦めない!隊長に教えて貰った事を出し切る!」



ーールーティア基地・司令部。


予想していたとは言え、一向に戦果が上げられない状況にカルドーネが焦る。

「ホワイトファングめ、これだけの戦力を投入して一機も落とせんとは…

 ルニエ提督へ繋げ。」


モニターには動揺するマルセル・ルニエ中将が映る。

「提督、ホワイトファング残存部隊は北へ向かっています。

 再度第七艦隊への合流を図っているのでしょう。

 遺憾ながら、地上戦力で敵を掃討する事が叶いません。

 第七艦隊の島への再接近を、何としても阻止してください。」

カルドーネの懇願に対して、ルニエ中将の返答は芳しくなかった。

「その第七艦隊が、旗艦を先頭にして突っ込んで来てるんだ。

 奴ら狂ってるのか?!

 こんな状況で艦隊を危機に晒す事は出来ん!」

確かに、一度退いた艦隊がまた戻ってくるなど前代未聞であり、ルニエの混乱も尤もだった。


通信を切り、カルドーネは頭を掻きむしる。

「ルニエめ!怖気づきおって!」



ーー第七艦隊。


先陣を切る旗艦サーエヴァンスは、的になりながらも第八艦隊を牽制する。

「左舷副砲沈黙!」

「機関部被弾!」

「艦出力低下七十パーセント!」


サーエヴァンスを初め第七艦隊が苦しみながら島へ再接近する。


ネルソンが叫ぶ。

「ハニンガム!強硬接舷だ!」

「了解!!艦を海岸へぶつけろ!」

ネルソンもミラーも、揚陸艇などと悠長な状態では無いと理解していた。

ハニンガムは海岸へ乗り上げる。


「来た!ハニンガムです!」

サイラスが叫ぶ。

「よし!全機ハニンガムへ飛び乗れ!

 全速力で逃げるぞーーーー!」


ホワイトファングは一斉にハニンガムに飛び乗る。

「ホワイトファング隊全機収容!」

ミラーが叫ぶ。

「急速離岸!」

ネルソンも呼応する。

「ハニンガム援護に全力を注げ!

 ハニンガム離岸後、急速反転!全艦撤退!

 トライデントは近くの潜水艦へ収容してもらえ!」


激闘の末、エウロパ軍地上部隊も相当数ホワイトファングに被害を被った。

にも拘らず一機も落とせなかった事に、カルドーネは感情を爆発させる。

「おのぉぉれ、ホイワトファングぅぅぅ!!!!」


コロンゴ軍地上部隊も、撤退を完了していた。

結果としてホワイトファングに全戦力を向けられた為、被害は僅かで抑えられた。

ジェイソン・モリス少将は深く反省していた。

「ホワイトファングに頼り過ぎた…」


カリビア山脈越境は失敗に終わった。


そして、キースはいずこかへ消えてしまった。


戦いは新たな局面を迎えるのか…

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