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既視感あるくない?  作者: むぅむぅ星人


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第74話「激闘の行方」

ーーピースブリタニカ島・北海沿岸。


白オオカミと黒ワシの激闘は続く。


だがその最中、ミハエルが静かに口を開く。

「全機通達。残念ながら撃破は困難と判断した。

 我々の力量不足か…敵が想像以上だったか…」

シュヴァルツアドラーの一同は納得して頷く。

しかし、ミハエルは僅かな笑顔を添えて続ける。

「作戦を変更する。

 全機、撃破ではなく時間稼ぎに徹せよ。

 敵にはタイムリミットがある。

 このまま死地に踏み込む必要はない。」

マルティンが薄く笑う。

「なるほど。焦りを誘うわけですか。」

ロメロも静かに応じる。

「現状、それが最善でしょう。残念ですが。」


黒い機体群が、わずかに距離を取る。

(さて、この状況…

 どうする?ホワイトファングのアルファ…)

ミハエルの視線は、キース機を射抜いていた。


「なぬ?退く気か?」

レイが怪訝に呟く。

「違う。時間稼ぎに作戦を変更したのよ!」

ミリィの声は硬い。

「なら、隙をついて逆に強行突破するか?」

「それが無理なのは分かるでしょ!」

ビルの冗談も必死なサイラスには通じない程、状況はひっ迫していた。

「隊長!このままでは……!」

最悪の事態を想定したユアンが、キースに迫る。


キースは理解していた。

(ユアンの言う通り、ここでもたついてたら作戦失敗だ。

 いや、撤退が遅れれば全滅だって…)


そこへボビー・ボンド大佐の通信が割り込む。

『何をグズついている!

 もう第七艦隊は撤退を始めている。

 お前たちは突破しか選択肢がないんだぞ!』

ジャスティン・ネルソン中将が付けくわえる。

『非情に見えるが……

 これは艦隊保全と君たちへの信頼による判断だ。

 ホワイトファング……頼む!』

ジェイソン・モリス少将の声は、祈りに近かった。

『君たちが今作戦の要なんだ。

 何としても……我々を助けてくれ!』


(逃げ場はない。行くしかない。)

自身の焦りと、各司令からの悲痛な願いを聞きーー


キースは決断した。


「第一小隊は散開する。

 ケビンは第二小隊へ、マリアは第三小隊へ。

 それぞれ救援に向かってくれ。」

キースの唐突な命令に、二人は動揺する。

「それじゃ、隊長一人になっちまうじゃないですか!」

「無茶です、隊長!」

キースは諭す。

「戦況は拮抗状態だ。

 打開するには、数的優位を取るしかない。

 お前たちがレイとユアンの援護に入って四対三にするんだ。」

それでもケビンをマリアは納得できない。

「隊長を置いて行けません!」「隊長を置いて行けません!」

「いいから行け!行くんだ!

 これは隊長命令だ。行ってくれ!!」

キースの声は命令であっても願いに近いものがあり、それ以上二人が反対する事は出来なかった。

「すぐ戻りまりす!」「すぐ戻りまりす!」

「あぁ。頼むぞ!」

ケビンとマリアは機体を全速で走らせた。


第一小隊から二機が離れるのを見て、ミハエルは即座に察する。

「そうだな。そうするだろうな。

 ………残念だ。

 出会った場所が戦場でなければ………

 君とは良き友人になれたろう………」

ミハエルはキースの決断を称賛しながらも、顔を上げる。

「…だが、今は戦争だ!

 レティシア!、エミール!

 ホワイトファングのアルファを討つ!」

「「了解!!」」


キースは下がりながら、三匹の地獄の猛獣〈ガルム〉を迎え撃つ。



ーー第二小隊の戦い。


近接機対決では、マルティンが素早く回り込みながらミリィに仕掛けるが、ミリィは呼応する。

「機動力で上回ってるなずなのに、何でだ!来い、ギデオン!」

「速い…けど負けない!」

そして、レイとヘレンの目標は、そのギデオンをロックしていた。

「ったく、ガトリングの中に一々ライフル混ぜやがって!!」

ギデオンの機体はスナイパー弾を避けるのに必死で、僅かだがガトリング弾で傷付きだした。

だが、それ以上である。自由を取り戻したベルントが後方のヘレン、レイに向かう。

「ダメ!止まらない!ドローン!!」

しかし、ベルントはラウンドシールドをヨーヨーの様に飛ばし、勘だけで的確にドローンを落とす。

「ヘレン!てめぇ、良い加減にしろよ!」

レイの鋭い一撃がベルントのシールドを繋ぐチェーンを捉え、シールドの軌道をずらす。

「おぉ!目が良いのがいるなぁー。」

ベルントは悠然とレイのスナイピングに感心する。


そんな中、ケビンが最大速で入ってくる。

「援護に来ました!」

ケビンの一言にレイが驚く。

「援護ぉ?お前、キースはどうしたんだよ!?」

「その隊長命令で来ました。数的優位に持って行けと。」

ケビンの言葉にレイが怒る。

「あんの、バカヤロー!!死ぬ気か!!」

しかし、ひと呼吸おいてレイは落ち着き、ケビンに指示を出す。

「なら、ミリィの援護に行ってくれ。

 対等に見えて押されてる。俺も援護に回れない。」

「了解!」

ケビンはミリィの元に駆ける。


「あほキース。さっさとケビンを戻してやるから……死ぬんじゃねーぞ!!」

レイは悪態をつきながら、キースの無事を願う。



ーー第三小隊の戦い。


ここではビル、サイラス、ユアン三機でワーグナーツインズと交戦していた。

「ビルはサイラスの攻撃を誘いにして、マシンガンパンチを狙って!」

「おりゃー。」

サイラスがセレナ機に向かってトマホークを投げる。

「こんなもの!」

セレナがレイピアでトマホークを受け流す。

そこへビルが素早く接近する。

「おらぁぁぁぁぁ!食らいやがれ!」

ビルのマシンガンパンチが炸裂!…………しないのだ。

エレナのサブマシンによってビルの腕が止まってしまう。

「甘い、甘いですわ。」

「そうかい?」

ユアンがエレナに向かってアサルトライフルを集中射しながら迫る。

「ロメロ様!」

「任せろ!」

ユアンにミサイル群が襲う。

「やられる…!!」

直撃コースのミサイルにユアンは死を覚悟する。


ーー刹那。


ミサイルは迎撃される。

「援護に来ました!」

マリアだ。

「え?援護?第一小隊は勝ったのか?」

突然のマリアの出現に、ユアンは咄嗟に第一小隊の行方を確認する。

しかし、マリアの表情は暗い。

「隊長が……第三小隊を援護しろって命令で……」

ユアンは黙って頷く。

「数で優位を取れって事か…隊長らしい…

 でも…相手はミハエル・ファフナーなんだ!無茶過ぎる!」

 


ーーそう、キースは既に満身創痍だった。


装甲は裂け、警告音が鳴り続ける。


レティシアが呟く。

「コクピットを外せって言うけど。」

「これ以上は…無理ですね。」

エミールもかつて苦戦した敵の、ボロボロの姿を前に言葉を無くす。


ミハエルは思考する。

(このまま討ってしまうのがエウロパ軍の為だろう。

 しかし、彼はクリリアの野望を砕く希望でもある。)


《ホワイトファングの隊長、キース・ウォレンだな?》

ミハエルの外部音声に、傷だらけになりながらキースも応答する。

《あぁ、そうだ…》

キースは撃たないミハエルに対して問う。

《へっ…どうした?撃たないのか?》

ミハエルは一考の後、解答する。

《機体はもう持つまい。機内ではアラートが鳴りっぱなしだろ?》


確かにキースのアスカロンでは、各アラートが引っ切りに無し鳴り響いていた。

勝ち目のない賭けに出て、キースは緊急脱出を図る。

その瞬間をミハエルは逃さない。

ーーが、撃てなかった。

「ミハエル?」

レティシアが咄嗟に声を出す。


地面に転がり込むキース。


ーーその後の出来事は、一瞬に近かった。


倒れ込んだキースに向かって、突如トラックが走り込んで来た。

トラックから麻袋を持った男たちが降りてくる。

キースを麻袋に包む。

そのまま颯爽とトラックに乗り込み走り去って行った…


「な、なんだ?」

エミールが一瞬の出来事に混乱する。

「あれって…」

「PLFーーピースブリタニカ解放戦線だ。」

レティシアの閃きに、ミハエルが答える。


ミハエルは即座に隊に通信する。

「全機戦闘終了。

 敵隊長機を撃破。

 これより帰投する。」


そして、海岸に響く音声で伝える。

《ホワイトファングの諸君へ。

 隊長機を撃破。

 君たちの隊長はPLFに捉えられた。》

 

ミハエルの声が静かな海岸に拡がる。


ホワイトファングのアルファが失われたのだ……

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