第6話「研究所模擬戦」
――アウグスト研究所・カンファレンスルーム。
「では先ず、NuGearについて改めて説明するわよ……」
白衣姿のフォスター博士が前に立ち、ホワイトボードに複雑な図を描きながら講義を始めた。
レイが手を挙げて割って入る。
「先生、すみません。さっぱり分からないので、小学生でも分かるようにお願いします。」
博士は眉をひそめ、不満げに溜息をつく。
「はぁ、それじゃラッキー。お願い。」
小さな犬型ロボット――ラッキーが前に立って可愛く手を上げる。
「はーい。みんな、NuGearってのは簡単に言うと、頭の中で思ってる事を直接機械に伝える道具の事を言うんだよ。例えば車で右に曲がりたいと思うとハンドルが無くても右に曲がれるんだね。それで、そんなNuGearを使うから複雑な操縦が必要なACEが使えるんだねー。」
簡潔で口語的な説明に6人がスタンディングオベーションで賞賛する。
「なるほど……!」
「すごい、分かりやすい!」
しかし博士は更に不満気でご機嫌斜めだ。
そこへ空気を読んだミリィがすかさずフォローを入れる。
「博士、後で個別に具体的な説明お願いします。」
それを聞いた博士はにんまりして機嫌を直した様だ。
「うんうん、君の様な優秀な子には特別講義をしてあげるねー。」
ミリィはこの後長くなりそうと、ちょっと後悔混じりに半分笑顔で応える。
――研究所内・試験場。
観測室からフォスター博士の声が響く。
「――貴方達をここに呼んだ目的は明確よ。ウチのACE使いの2大エース同士の模擬戦を通して、NuGear接続法の最適化、未経験者のACE転換支援、課題点の洗い出しと改善。の3つね。よって貴方達は好きに模擬戦を行って下さーい。無茶しても怪我してもOKよー。私がいるからねー。」
キースたちは少し苦笑ながらも、気を引き締めた。
レイは更に引いて呟く。
「マッドサイエンティストかよ……怖いな。」
一方ダグラスは息巻く。
「君らホワイトファングと言う部隊名を貰ったそうだな。こちらもレイクヴィクトリアチームでは勝ち合わんから、我々はレッドホーン(血に飢えた角)と名乗らせてもらうぞ!」
キースとミリィも笑顔で応える。
「あなた方らしいですね。」
「良い名前です、レッドホーン。」
――模擬戦開始。
ミリィとオリバーは敵部隊の武装や動きを分析。
ミリィ「大尉はサブマシンガン二丁で近中距離対応ね。ライアン曹長はハンマーで私と同じ近接型。オリバー軍曹はバズーカにミサイルランチャーの重支援型か。」
オリバー「隊長機はアサルトライフルのバランス型、それにスナイパーが居て、ソード持ちを両面から支援か。隙がない。」
レイとライアンは互いに牽制をかけ合う。
レイ「策はあんのか?」
ライアン「隊長、そろそろ指示を下さい。いつでも行けます。」
キースとダグラスは戦術プランを練る。
キース「やはり大尉が主軸であるなら狙いたいが、二人がそうさせてくれないな。となると曹長狙いで数的優位を得るか。」
ダグラス「3人がそれぞれの得意分野で補い合っている。理想的な編成だ。だが、近接機は孤立しがち。そこに付け入る。」
衝突する両部隊、だが互いの戦術が噛み合ってお互い決定打を与えられない!
「く、考える事は同じか。」
「だが我々には君たちにはない実践経験がある。能力で劣っても年の功で勝負させてもらう!」
――戦いの熱量が高まっていく。
モニタリングしていたフォスター博士は感心する。
「なるほどなるほど……戦闘が激化するほど皆んなの熱量も上がって、比例して同調率も上がる。NuGearは単に脳内電気信号を直接端末に伝える装置だと思ってたけど、“感情”がキーだったのね。」
――しかし突如の異変。
ライアン機が暴走を始める。
ダグラス「NuGearからリンクをカットして、リセットをかけろ!」
「だめです!やってますが制御が効かない!」
ミリィが思い出す。
「あの時と同じ過度のストレスによる暴走…?」
キースが駆け寄る。
「とにかくライアン機を押さえ込むんだ!」
キースがライアンに駆け寄って来るのを見ると、更にライアンの熱量は上がる。
「クソ!こんな無様な姿、隊長に見せられるかよ!」
暴走が激化し、キースに襲いかかろうとする。
そこへレイが咄嗟に武装部マニュピレータを破壊。
「おし!冷や冷やさせるぜ…」
キースとダグラスでライアン機を取り押さえ、矯正カットから停止。
――汗だく6人はふぅとの一息つき安堵した。
感情が同調率を押し上げる力と、暴走を呼ぶ脅威。
ACEの持つ両刃の剣を、全員が鮮烈に思い知らされた。




