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既視感あるくない?  作者: むぅむぅ星人


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第66話「黒ワシ再来す」

ーールーティア基地・格納庫。


シュヴァルツアドラー中隊としてピースブリタニカ島に帰ってきたミハエル。

「戻ってきたな。この地に…」

感慨深いミハエルに、マルティンも熱意を込める。

「ホワイトファング…リベンジですね!」

ロメロもその瞳に熱いモノを光らせながら言う。

「我々であれば間違いないでしょう。」

「「もちろんですわ!」」

ロメロにエレナ、セレナのワーグナーツインズが声を揃える。。

「相変わらずのロメロ中尉推しっスねー。」

ベルント・ガーレルが二人を見て、にこやかに言う。

一方レティシアは腕を組んで鼻を鳴らした。

「ふん、色恋を戦場に持ち込むとロクなことないよ!」

そんなレティシアに対して、敵意剝き出しでエミールが言う。

「貴方こそ、特務少佐の顔ばかり見ているじゃないですか!」

「それは…バディなんだから当たり前でしょ!坊やには関係ない事。」

「毎度坊やって……貴方とは一つしか離れてない!」

「でも顔もオツムも坊やだから、仕方ないじゃない。」

「童顔をバカにするな!」

尊敬するミハエルが粗雑なレティシアを懇意にしている事に、エミールは気に入らない。

しかし、レティシアはそんなエミールを評価こそすれ、時折イジって楽しんでいるのである。

「やれやれ、仲が良いほどケンカするってヤツか…」

ギデオン・シュナイドは、その様子を呆れながら見る。


すると、九人の元へダミアーノ・カルドーネ少将が現れる。

「よく来てくれた。シュヴァルツアドラー中隊。

 歓迎する。」

ミハエルはカルドーネに対し、皮肉交じりに返す。

「何時ぞやは”邪魔”と言われた気がしましたが…

 今回は歓迎頂き、恐縮です。」

ミハエルの物言いにカルドーネは一瞬眉を動かすが、すぐ平静を装う。

「状況も変われば、考え方も変えねば。

 良き戦術家とは、そう言うものだろ。」

ミハエルは内心、自らの未熟を恥じた。


得意気にカルドーネが続ける。

「貴官らが我が軍に加わってくれれば、再侵攻も容易だ。」

“再侵攻”という言葉に、ミハエルの表情が硬くなる。

「…が、司令部からは「先ずは防衛に徹しろ。」との命令でな。

 本国の考えは、コロンゴの増援が確認された為、エウロパ領へ侵攻の恐れがあるとの事でな。

 一度撃退した後、“侵略者コロンゴ討伐”の大義名分で再侵攻ーーと言う計画だそうだ。」

再侵攻の思いに顔が崩れるカルドーネに対して、ミハエルは冷徹に言う。

「我々第九十二独立中隊は、シェザール少将麾下の特務遊撃隊です。

 私も特務少佐として任に当たっており、それなりの権限を与えられています。

 閣下の全ての作戦に参加する保証はありませんので、悪しからず。」

カルドーネは不快を隠しきれず踵を返す。

「まぁいい。貴官らはホワイトファング討伐に集中してくれたまえ。」

そう言い残しカルドーネは去って行った。


「相変わらず嫌味な奴ですね。」

マルティンが思わず本音を漏らす。

「まぁ、我々を頼りにしていると言う点だけでも、良しとしておきましょう。」

ロメロがマルティンを軽くいなすと、エレナ、セレナも同調する。

「「ロメロ様のおっしゃる通りですわ。」」

ベルントは穏やかに笑って、ギデオンはやれやれと腕を左右に広げた。


一方ミハエルはホワイトファングの名を反芻する。

(…閣下の仰った通りなら…)


ーーー回想ーーーー

ミハエルは出発前に一人、シェザールに呼ばれていた。


出発前の呼び出しを不思議に思うミハエル。

「閣下、出発前に如何なご用件でしょう?」

シェザールはいつもよりひと際真剣な面持ちで、話し出す。

「すまんな。タイミングが悪くて。

 状況に変化があった為、急に呼び出してしまった。」

シェザールの表情に気付き、ミハエルも身構える。

「状況の変化とは?」

シェザールは考えながら話す。

「何から話そうか…

 先ず、私がこの戦争を調査するに当たって、協力者がいる。」

シェザールの発言に、ミハエルは少し前のめりになる。

「協力者ですか…?」

シェザールは軽く頷く。

「ディパンだ。」

ミハエルは”ディパン”の名に疑問を持つ。

「ディパン?あの経済力こそあれど、国際的イニシアチブも低い口だけ国家のディパンですか?」

シェザールはミハエルの辛辣なディパン評価に苦笑しつつも、続ける。

「君にまでその様に見せているなら、ディパンは大した役者だな。

 かの国は確かに表では弱い存在を演じているが、それも彼らの策略なのだ。」

ミハエルは尚不思議に思う。

「演技?…ですか。ーーでは、あの国の正体とは?」


シェザールは肘を机について両手を前に組み、説明を始める。

「ディパンは百余年前の世界大戦では帝国主義を掲げ、我が国やコロンゴらと争い…

 そしてーー核の制裁を受けた。

 彼らはその時の愚行を教訓として、平和維持を目的とする組織を作った。

 それが、政府特別諜報室ーー”トクシツ”と言われる。」

初めて聞くディパンの正体に、ミハエルは言葉失い、シェザールの話に必死に耳を傾ける。


シェザールは続ける。

「そのトクシツから「クリリアのスパイの情報を得た」と連絡があったのだ。」

ミハエルは求めていたモノを手に入れた様に興奮する。

「ついに、クリリアの手がかりを!」

しかし、シェザールは表情を暗くして首を振った。

「だが、そのスパイとの交渉に向かったトクシツ諜報員が死亡したそうだ。」

「なんと………」

ミハエルは一気に落胆した。


シェザールはミハエルを見つめ言う。

「状況が変わったとはそう言う事だ。

 連中はついに実力行使を始めた。

 私の行動もいつまで隠し通せるか分からん。

 故に、私に万が一の事があれば、君に全てを託したいと思う。

 これを…」

シェザールはミハエルに小さなチップを渡す。

「トクシツと私が掴んだ情報が入っている。

 だが、直ぐに開かないでくれ。開く事で君もまた奴らに狙われる危険が生じる。」

シェザールの言葉に、ミハエルは手にしたチップを見つめる。

「一つだけ、教えておこう。

 例のクリリアのスパイーーコロンゴではジャック・オセリスと名乗っているのだがな…

 彼はホワイトファングの指揮官だ。」


衝撃の事実にミハエルは狼狽する。

「ホワイトファングの?…クリリアの亡霊が作ったと?」

シェザールは頷くが、表情は重くない。

「確かにそうなのだが、君もホワイトファングの隊長ーーキース・ウォレンのインタビューを見ただろう。」

ミハエルは即座に返す。

「はい、アレで狼付きの本来の名を知ったのでした。」

シェザールはミハエルの目を見て続ける。

「彼の目だ。ーーあの目には画面を通しても分かる平和への想いを感じた。

 彼らの行動を省みても、破壊工作員とは思えない良心を持って戦争に臨んでいる。

 我々と同じ志を持つ可能性が高い。

 ディパンでもそう評価されている。」

ミハエルはそこで疑問に思う。

「しかし、オセリスなるクリリアの亡霊が何故?」

シェザールもその点には答えに詰まる。

「…分からん。ただ、彼はホワイトファングを離れたと聞いている。」


ひと時の沈黙の後、ミハエルが切り出す。

「ホワイトファングと接触しましょう。」

だが、シェザールは首を振った。

「今はまだ時期尚早だ。

 確かに君と彼らが手を組めば、この戦争を動かせる可能性はある。

 しかし、クリリアの亡霊はもう表に出始めた。

 君らを軽率に失う訳にはいかん。

 今は彼らの真の姿を見極めて欲しい。」


「戦いを通して…ですか?」

ミハエルの問いにシェザールは強く頷く。

「君はあくまで対ホワイトファングとしての彼らと相対してくれ。

 刻は必ず来る。焦せりは死を招く。

 くれぐれも注意して行動してくれ。」

ミハエルはシェザールに深い敬礼をする。

「は!」


ーーーーーーー


回想に耽り考え込むミハエルを見て、レティシアがちょっかいをかける。

「なーに、一人で耽け込んでるのさ。」

エミールも心配になり声を掛けるが、レティシアがまたしてもからかう。

「特務少佐、私で良ければお話伺いましょうか?対ホワイトファングの戦略ですか?」

「坊やはアタシとミハエルのサポートやってりゃいいよ。アタシらでちゃっちゃとかたずけてやるから。」

「僕は特務少佐とお話したいんだ!邪魔をしないで頂きたい。」

「ミハエルはどっちと話したいの?」

「どっちなんですか?!」

レティシアとエミールに迫られ、ミハエルも少したじろぐ。

「はは、そうだな…」

困ったミハエルにギデオンとベルントがフォローを入れる。

「まーまー、隊長には他にも考える事があるんだよ。」

「なんせ特務少佐っスからねー。」

ナイスなフォローをする二人を自慢気に、マルティンは二人の肩を抱えて言う。

「少佐、よく見てるでしょこの二人。」

ミハエルは咄嗟に軽く返事をしてしまう。

「あぁ、そうだな。第二小隊は安心して任せられそうだ。」

その一言にロメロが対抗する。

「第三小隊も完璧ですよ。」

「「ロメロ様がいれば無敵ですわ。」」

またワーグナーツインズが同調する。

「確かに第三小隊も安泰だな。我々も負けられんな。」


ミハエルは彼らを見ながら、一抹の不安を覚える。

(これから先、真の敵と戦えば、彼らも危険に晒す事になるのか…)



ーーケアン基地・ブリーフィングルーム。


ジェイソン・モリス少将が重い口調で話す。

「諸君、ついに我々にエウロパ領侵攻の命が下った。」


ついに、コロンゴはエウロパへ侵攻を決意する。


平和への願いを持つ者たちの想いは届かず、戦争はさらに深い闇へと踏み込んでいった。

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