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既視感あるくない?  作者: むぅむぅ星人


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第62話「変わり始める状況」

ーーコロンゴ本国。10万人規模のスタジアム。


アレックス・ターナー大統領が、ノースブリッジの惨状をスクリーンに映しに力説する。

「国民の皆さん、ご覧ください。

 これがエウロパの非道で無くして、何と言うのでしょう?

 彼らは言うでしょう、“それは戦争だった”と。

 だが、私は問いたい。ーーこれは戦争か?それとも虐殺か?

 確かに、我々は国境を取り戻した。

 しかし、帰るべき場所を失ったノースブリッジ市民の悲痛を、我々はどうやって贖えば良いのでしょう?

 私は、エウロパに対し断固この問題を糾弾する姿勢を崩しません!

 停戦も良いでしょう。

 しかし、ピースブリタニカで失われた多くの魂に報いるには、今のエウロパと無条件で和解などあり得ません!」

大統領の演説に支持者たちの声がスタジアムに響き震わせる。

「ターナー!!」「ターナー!!」「ターナー!!」「ターナー!!」「ターナー!!」

支持者たちの声援に、右腕を高く掲げターナーは更に煽る。



ーー一方、エウロパ本国。首相官邸。


ヨハン・クラインもまた、確固たる姿勢で演説する。

「先の報道でも公表したように、ノースブリッジの件は一部軍部の暴発によるものです。

 我々にはノースブリッジ市へ、支援の準備があります。

 にも関わらず、アレックス・ターナーは停戦を望まないのです。

 我々は感情で戦争を語りません。

 しかし、法と秩序が踏みにじられた時、沈黙する国家に未来はありません。

 戦争犯罪人アレックス・ターナーは、正に今、感情に依ってのみ行動しています。

 この戦争で失われた英霊の為にも、我々の正義を折る事は許されないのです。

 国民の皆さん。私に力を下さい。

 エウロパの未来はアレックス・ターナーを討ち取ってこそ得られるのです。」

クラインの言葉は、静かに丁寧であったが、その内には揺ぎ無い熱意があった。



ーーディパン・某放送局。


キャスターと有識者の懇談が放送されている。

「…このように、コロンゴ、エウロパ両国に対し、

 調停の機会を得らないまま開戦より、1年が過ぎました。

 スギシタさん、ディパンとしてこの戦争への介入はどこまで可能なのでしょうか?」

「我が国としては、クリリア大戦で締結された国際同盟の

 法に則った形で同盟国での調停を行うが一般論です。

 しかし、開戦間もなくコロンゴ、エウロパ両国とも国際同盟を脱退してる現状では…

 同盟法は機能しない状態であり、二大国に対して倫理的観点から停戦への訴えを続けるしかないと思われます。

 コロンゴのターナー大統領は既に継戦の意思を示しており、国民感情もそれを支持しています。

 一方、エウロパもコロンゴに対して譲歩姿勢を見せつつも、一方的に非を認める事は考えていません。

 一つの行動で大国の権威失墜に陥るこの状況……両国は現状姿勢を崩す事は難しいでしょう。」

「では、今後もこの戦争は続くと?」

「我が国として、政府は最善の努力を続ける事は間違いありません。

 しかし、二大国の戦争に我が国がどこまで関われるかは…やはり限界があると思います。

 今求められるのは、両国国民の良識ではないでしょうか。」

「スギシタさん、ありがとうございました。

 コロンゴ、エウロパ。互いに譲れないモノがあるのは確かです。

 しかし歩み寄る姿勢が、国際協調には必要なのではないでしょうか。」



ーーディパン・政府特別諜報室。


報道を見ながら室長のカイセイ・イダカが、呟く。

「表は、健気にスケープゴートとして頼りないディパンを演出してくれている。

 我々も一刻も早く彼らの努力に報いねば…」

補佐官が一つのデータを提出する。

「リュウ・ダゴダの依頼の件ですが、手掛かりになる情報が手に入りました。」

データを閲覧するイダカ。

「なるほど、確かにこれはカードとして十分だ。

 しかし切り方次第では…」

補佐官もそれを懸念して頷く。

「はい。リュウに伝えるべきでしょうか。

 この情報は彼にとって諸刃の剣。

 知って追求する事で得られるモノもあります。

 しかし、それが裏目に出れば…」

深く息を吐き、イダカは答える。

「…リュウに賭けよう。

 状況打開の為には、リスクを取る事も仕方ない。

 もはや、状況は切迫している。

 コロンゴ、エウロパ…どちらもいつ爆発するか分からない。」


重い沈黙が室内を包む…



ーーケアン基地。司令官室。


ジェイソン・モリス少将は、机上の報告書から目を離せずにいた。

「……ターナー大統領の演説。

 それに呼応する形での、更なる増援……」

静かに息を吐く。

「これは、侵攻しろという命令だな。」


本来、彼は主戦派だった。

戦争は、決断を先延ばしにするほど被害が膨らむ——そう信じてきた。

だが、ノースブリッジを見た。

焼け落ちた街と、帰る場所を失った人々を見た。

そして、それを「作戦の結果」として報告する立場に立った。

(……もう、現場に責任を押し付ける事は出来ん。)


本国は声高に進軍を叫ぶ。

ピースブリタニカの民は、静かに平和を願っている。

軍人として、命令を拒否する選択肢は無い。

ならば——

モリスは、確たる信念を胸に、ゆっくりと立ち上がった。



ーー世界情勢。戦局。共に状況が変わり始めるーー



ーーノースブリッジ解放から一か月。

  ケアン基地。


本国からの増援は、まさに侵攻軍隊であった。

海軍には、旗艦セントランジェの代わりとして、戦艦サーエヴァンスが新たな旗艦となった。

加えて、イージス艦四、駆逐艦二。更に水中型ACE〈トライデント〉運用艦として潜水艦四艦が配備された。

陸軍には、全機アスカロンで固めた一個旅団が導入された。



ーーケアン基地・司令官室。


増援と参謀本部からの指示について、現地将官三人で会議が行われている。

ネイサン・テイラー准将が口を開く。

「”総力を以って、ピースブリタニカ島よりエウロパ軍を排除せよ。”

 これだけ……なんですよね?」

ジェイソン・モリス少将が首を傾げる。

「あぁ。具体的行動は現地指揮官に委ねる……随分杜撰な命令書だ。」

ジャスティン・ネルソン中将も表情は暗い。

「艦隊再編は結構だが、敵第八艦隊もミドガルズオルムを落としただけの状態。

 今ぶつかってもな…」

モリスは低く言う。

「しかし、本国は”侵攻”を決定した。これは覆らん。」

テイラーは、南部の状況から提案する。

「昨年のエウロパの南北同時侵攻は見事に防ぎました。

 逆を言えば、同時侵攻作戦は悪手と考えます。

 南部は膠着状態です。敵将ヴァルターはやり手です。

 責任逃れのつもりはありませんが、進軍は北部に絞って行うべきと提案します。」

ネルソンもその点に関しては、同意がある。

「確かに我が第七艦隊は北海を抑えている。多少なら揚陸艇を送る事も出来るだろう。」

モリスも頷く。

「そうだな。私は初めから、エウロパ領侵攻を視野に派遣されている。

 その責務を負うなら私だろう。

 では、提督、カリビア山脈からのルートと第七艦隊からの上陸ルートでカリビア市攻略を検討しよう。」

テイラーは、最後に添える。

「私は、正直に言えば侵攻には反対です。

 昨年、侵攻を受けた駐留軍士官たちの命がけの奮闘を思い返して下さい。

 それは当然エウロパ軍も同じです。

 進軍は慎重に行ってください。」

モリスは強く頷く。

「分かっている。ACE性能も拮抗しているのだ。三倍の法則は必要だろう。

 …要はホワイトファングになるな。」

ネルソンも同意する。

「ホワイトファング…彼らはまさに我が軍の希望だな。」


室内は重い空気に満ちていた。



ーーケアン基地・ブリーフィングルーム。


ホワイトファング隊が集められていた。

珍しく、オセリスはまだ姿を見せていなかった。


話題振りに、レイが増援の異常さに喋り出す。

「増援見たかよ…あんな数のアスカロン、いつ揃えたんだよ…」

ミリィも真剣な面持ちで言う。

「本国が総動員令を出したって…噂じゃないのかも…」

サイラスも表情は暗い。

「前線では計れませんが、本国の空気は継戦で沸いている…」

ビルは達観している。

「しかし、俺たちは軍人だ。命令に従い成果を出すしか出来ないだろ。」

「いや、違う。」

キースが即座に反論した。

その声は、これまでよりも低く、はっきりしていた。


「命令は確かに守らなければならない。

 でも、俺たちで出来る事は他にもある。」

「被害を抑えるんですね!」「被害を抑えるんですね!」

ケビンとマリアが同タイミングで答える。

「お前たち…分かって来たな。」

キースは二人に頷き、全員を見渡した。

「そう、ただ戦うんじゃない。

 コロンゴもエウロパも…どっちも苦しみを最小限にする努力をするんだ。」

「傷つけない戦い方…だね。」

ヘレンが言葉を変える。

「傷つけない戦い方…ですか。難しいですね。」

ユアンは少し不安になる。

「出来る。」

キースは迷いなく言い切った。

「出来なかったら、俺たちの意味を失う。」

彼は拳を握り締める。

「戦いは続くーー

 だが、俺たちなら”救う戦い”が出来るはずだ。」

その言葉に、皆が同じ意思を持って頷いた。


オセリスは部屋の外で、その様子を聞いていた。

更に、彼の後ろには一人の男の存在があった。


世界の状況は変わり始めた。


ホワイトファングたちも、また変化の兆しが訪れていた。

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