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既視感あるくない?  作者: むぅむぅ星人


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第60話「地獄と化すノースブリッジ」

ーーノースブリッジ市内。


ジェイソン・モリス少将は、息の飲み慎重に指示を下す。

「侵入は各方面一個中隊を、第一陣とする。

 北部アルファ、西部ブラヴォー、南部チャーリーの順で15分間隔で行え。」


容易だったように見えた。

むしろもぬけの殻と化していたノースブリッジに、時間差作戦は意味を為さなかった。

「アルファ1、クリア。」「ブラヴォー1、クリア。」「チャーリー1、クリアです。」

「まさにゴーストタウンだ。進軍を続ける。」

モリスも全部隊が侵入に成功した事で、一息安堵した。


第一陣の進軍は、奇妙なほどスムーズだった。

都市深部へ歩を進める第1陣を確認し、モリスは次の一手に移る。

「よし、続いて第二陣侵入。ホワイトファング隊も加わってくれ。」

第二陣が、ホワイトファング隊を先頭に侵入する。


監視カメラで、ホワイトファングの侵入を確認した、エンリケ・ナバロ中佐が笑みを浮かべる。

「来たな、ホワイトファング。では、始めるとするか。」

コロンゴ軍第二陣が、市内侵入を完了した瞬間、放送が流れる。


《地獄へようこそ。》

ナバロの、歪んだ笑い声が市中に響いた。

「地獄?どういう意味だ?」


街は、異様なほど静まり返っていた。

部隊は慎重に歩を進めた。

だが次の瞬間——

市内全域で、一斉に舗装の下、ビルの隙間、排水溝…あらゆる隙間から、小さな影が湧き出した。

「動体反応、複数!」

「速いぞ!…何だアレは?」

「クモだ! 小型ドローンだ!」

高速で走る子グモ型ドローンは、ACEの脚部関節部を狙って突撃し、自爆する。

「こいつら…自爆ドローンだ!」

「寄せ付けるな、撃ち払え!」

しかし、恐怖はACEの性能を容赦なく奪っていく。

当たるはずの攻撃は外れ、回避行動は遅れる。

「くそっ、照準が合わない!」

「どこから来る!?」


「くそー、こいつら!」

「来るな!来るな!…ひぃーーー!!」

動けないACEに対しては、容赦なくコックピットを狙って自爆する子グモ。


ホワイトファング隊は、辛うじて正気を保っていた。

「周囲を見ろ! 単独行動はするな!」

「味方を守り合え!」

キースの指示のもと、互いをカバーしながら応戦する。


だが、周囲の部隊の混乱はそれ以上だった。

「くそ!俺たちだけじゃどーにもなんねーぞ!」

収拾のつかない状況に、レイも泣き言が漏れる。

「敵はドローンだけです!動きは読めるはず!

 皆さん、落ち着いて対処を!」

ユアンの指示も、混乱状況では響かなかった。


モリスは急遽作戦を変更する。

「第三陣、全機EMP兵器を装備して出撃せよ!」

投入された第三陣により、子グモの勢いは低下しだした。

が、圧倒的数に対してEMPが不足していた。


そして、混乱は混乱を呼ぶ。

「くそがぁーーーー!」

「待て!撃つな!ーーぐぁぁ!」

誤射ーー同士撃ちの発生である。

恐怖は、もはや敵ではなく、味方の影に向けられていた。

兵の精神状態は作戦実行を逸脱し、恐怖からの逃避へと移っていた。


市内各所で悲鳴と断末魔が止まらなかった。

キースは歯を食いしばる。

(このままじゃ、全滅する……)

視線の先、市庁舎の方向にそびえる巨大な影。

ユアンが告げる。

「コレだけのドローンが統率されています。司令機が居るはずです!」

――そう、大グモこそが元凶!!ーー


「ホワイトファング各隊に通達!」

キースは即座に決断した。

「目標を市庁舎の大グモに変更!

 大グモを叩く! それ以外に道はない!」

ホワイトファング隊が、瓦礫を縫うように前進する。


ナバロはその動きを見逃がさなかった。

「やはり来るな、ホワイトファング。」

ナバロは放送マイクを握る。


《地獄・第二章の幕開けだ。》

再び、市内放送が響く。


次の瞬間ーー

市内各所の高層ビルから、ロケット砲台が一斉に火を噴いた。

加えて、アルケニーも巨体から榴弾を放ち始めた。

砲撃の狙いは、ACEではない。

高層ビルだった。


爆撃を受ける高層ビルは崩落を始める。

そのビルの倒壊が、隣り合うビルに波及し、ビルのドミノ倒しが発生した。

「ビルが!倒れてくる!」

「押しつぶされる!うわぁぁぁぁ!!」


倒壊を繰り返すビルにより、ノースブリッジは粉じんで視界が無くなる。

しかし、子グモの特攻は止まない。

困惑するACEに子グモ、榴弾砲、ビルの瓦礫…無数の脅威が襲う。


モリスは叫ぶ。

「撤退だ! 全軍撤退せよ!」

しかし遅かった。

退路は瓦礫で塞がれ、

クモ型ドローンが撤退する者を逃がさない。


モリスは、歯を食いしばった。

(慎重を期したはずだったが、甘かったか…)

「……ホワイトファング隊……頼む。

 大クモを、止めてくれ。」


キースは、モリスの悲痛な頼みに答える。

「必ず!

 少将は残存部隊の生存を、優先してください。

 撤退ではなく、守り合って下さい。」

「分かった。」

モリスは気を取り直し、残存部隊の再編と相互補助を命令した。

地獄は続くが、残った部隊は少しづつ混乱から解かれる。

正気を取り戻したACEは再び立ち上がり、本来の姿を取り戻す。

「よし、三機小隊で当たれ。」

「相互にカバーし合うんだ。」

「ホワイトファングを信じて、俺たちはココで耐え凌ぐぞ!」

「おぉー!!」



ーー市庁舎前。


キースたちはアルケニーの前に辿り着く。

刹那ーー

アルケニーは、その巨体を八本の脚を以って高く跳躍しだした。

「コ、コイツ、動くのか?!」

思わずビルが声を漏らす。


再び、放送

《アルケニーは動く火薬庫だ。》

《各所に爆発物を搭載している。》

《誘爆すれば——ノースブリッジは消えよう。》

《終わりなき地獄に恐怖するがいい。》

ナバロの声は、半分狂気じみていた。


アルケニーは、人型部位から機銃とグレネードランチャーを展開させる。

ホワイトファングに爆撃と機銃掃射が襲う。


キースの判断は早かった。

「接近は無理だ!

 ミリィ、ビル、ケビン!三人は、周囲部隊の援護に回れ!」

三人は即応する。

「了解!」


キースはサイラスに叫ぶ。

「スキャンだ! 火薬庫でも、誘爆ポイントは限られてるはずだ!」

「了解、リアルタイムスキャンでケアン基地と解析を行います!」

サイラスは跳び続けるアルケニーを必死に追い、スキャンを続ける。



――ケアン基地。


膨大なデータが解析されていく。

「第一解析終了!」

オペレーターが声を上げる。

「誘爆を起こさず破壊可能なポイント……セーフポイントを送ります!」


だが、それはあまりにもピンポイントだった。

「こんな狭いポイントでは…」

モリスは躊躇する。


その時、オセリスが静かに言った。

「信じて下さい。

 彼らなら…やります!」


モリスは一瞬目を閉じ、そして頷いた。

「……ホワイトファング隊。

 アルケニー攻撃を許可する。」


「了解!」

レイは照準を定めていた。

跳躍するアルケニーの脚部関節。

(外せば、終わりだ…)

さすがのレイも無駄口を無くし、一撃に賭ける。

引き金を引く。


閃光が走るーーーーーーーーーー命中!


関節から足の一本が吹き飛び、アルケニーは大きく体勢を崩した。


キースは、すかさずヘレンへ指示を飛ばす。

「今だ、ヘレン!!」

「はい!」

跳躍不能となったアルケニーへ、ヘレンのNジャマードローンが接近する。


Nジャマー発動ーーーーだが

「……止まらない!?なんで?」

ドローンは虚しく撃ち落とされた。


落胆するホワイトファングに、ナバロの嘲笑が響く。

《無駄だ。》

《アルケニーは、もう誰にも止められん。》


市庁舎ではナバロは、宙を見上げながら一人呟く。

「これでホワイトファングを巻き込めれば、ナバロ家の汚名も少しは晴れよう。」

同時に、市庁舎へ榴弾が降り注いだ……


指揮官を失っても、アルケニーとの死闘は続く。

「Nジャマーが効かないACEなのか?!」

困惑するキースの元に、司令部から報告が入る。

「第二解析完了!

 アルケニー内部に人間の熱反応なし!

 無人機です!」


その報告に、マリアが即座に反応する。

「無人機……!

 なら、EMP弾だ!」

マルチランチャーからEMP弾が放たれる。

弾はアルケニー目前で弾け、EMPフィールドを形成する。


アルケニーは、ついに完全停止した。


だが――


本体から、人型部位が飛び出す。

「嘘でしょ!」

予想外の事態にマリアが驚愕する。


機銃とグレネードを抱えたそれは、

単調な動きで無差別攻撃を始めた。

それの動きに、ユアンの監察眼が鋭く刺さる。

「……これは…アナログAIだと思います。」


キースが呟く。

「最後の悪足掻きか…」


司令部の確認が入る。

「敵ユニットに、致命的誘爆の危険性はありません!」


「了解!これで終わりだ!」

キースは、アルケニーの残骸に容赦なく一斉射をかける。


アルケニーは、断末魔のような奇声にも聞こえる音を発しながら、蜂の巣になった。

指揮を失った子グモたちも、機能を停止していた。


地獄は、明けた。


だが、ノースブリッジは廃墟となっていた。


静まり返った街には、粉煙と炎のゆらめきだけが残っていた。

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