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既視感あるくない?  作者: むぅむぅ星人


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第56話「新生第一小隊」

ーーショーハンプ平原。


ノースブリッジ市が無血陥落してから、ここは緩衝地帯となっていた。

かつてこの地で、ホワイトファング隊はミハエルのスレイプニルと死闘を繰り広げた。

そして今、かつてを遥かに上回る規模の死闘が、再び始まろうとしていた。


ケビン、マリアは武者震いをしている。

「初めての戦闘だ。気持ちは良く分かる。

 だが、俺に付いてくれば大丈夫だ。」

キースの気遣う優しい言葉に、二人は安堵する。

「はい…」

そんな二人の肩を緩める為に、レイはからかう。

「ブリーフィングの時随分大人しかったのは、そういう事か。

 怖かったら、今からでも学校に戻っていいんだぞー?

「逃げません!」「やってやりますよ!」

相変わらずのケビンとマリアの息の合った強がりでキースも安心する。


(…コイツらより、ユアンだな…)

「ユアン、どうだ?やれそうか?」

ユアンはどもりながら慌てて応答する。

「な、なんとかやってみせます。頑張ります!」

ガチガチのユアンにビルとサイラスがユアンの機体に手をやり安心させる。

「大丈夫、俺たちが全力でサポートする。」

「隊長は俺が守り抜いてみせます。」

「よ、よろしくお願いいたします。」

二人の言葉に思わず敬語になるユアンに、ビルとサイラスは笑って和ませる。


「中隊長殿ぉ。第二小隊も気にしてくださいよぉ。

 ミリィとヘレン、どっちを優先したらいいんすか?」

レイの毎度のお茶らけに、ミリィがソードで軽くこつく。

「レイなら私たち二人とも大事にするでしょ。ねー。」

レイはたじたじで、ヘレンは苦笑いする。

「ヘレン、二人に合わせなくてもいい。逆に二人がヘレンに合わせてくれる。

 安心して、自分の出来る事に集中するんだ…決して無理はしないでくれ。」

キースの優しさにヘレンも応える。

「うん。二人を信じて自分がやるべき事を頑張る!」


ホワイトファング隊の無線を聞く、モリスの参謀は少し苛立ちを覚える。

「のんきなもんだな。エース様は。」

モリスは笑って答える。

「いやいや、ACE操縦にはストレスは害だ。常に気を張る必要は無い。

 オン/オフがハッキリ出来るのも、彼らの強さかも知れん。

 さぁ、目標座標だ。

 ーー全軍、展開!」


モリスの号令で部隊は展開を始める。

(…さて、どれだけ這い出て来る?)



ーーノースブリッジ・市庁舎臨時司令部。


進攻するコロンゴ軍に対し、緊急作戦会議が開かれている。

「敵の戦力は、とてもココを落とすとは思えん物量だが?」

エンリケ・ナバロ中佐は、訝しげに言う。

「これは、陽動でしょうな。

 しかし、放置もしておけますまい。

 先ずスレイプニル二機で、敵を牽制しましょう。」

マルセロ・ヒメネス大尉が進言する。

「では、スレイプニル二機と、三個大隊を引き連れ迎撃に当たれ。

 まぁ、スレイプニルだけで決着がつくだろうがな。」

ナバロは笑いながら余裕の顔で、命令した。

「御意。出るぞ!」

ヒメネスは意気揚々と出撃に入った。



ーーショーハンプ平原・中部。


丁度、ケアン基地とノースブリッジとの中間地点で双方が射程に入った。


ヒメネスは躊躇なく号令をかける。

「スレイプニル一号、二号、両翼を駆けまわれ。敵を混乱させるのだ!

 ホワイトファングは無視すればいい。敵の数を減らせ!」

命令を受けたスレイプニルが勢いよく突出する。

二機の巨大馬の疾走が、地響きを越え軽い地震を起こす。


「うぉぉぉぉ!」

コロンゴ軍がスレイプニルの存在、動きに動揺する。

「落ち着くんだ!」

キースはありったけの大声で、全員を正気に戻す。

「敵をよく見てやれば、かわせる相手だ。前回だって全員無事だった。」

その発言にすっかり冷静を取り戻した大隊は、予定通りの行動に移る。

「スレイプニルの相手はホワイトファング隊だ。他は援護に回れ!」

モリスの号令がかかる。

「二機か…よし、第二、第三小隊は右のをNジャマーで止めてくれ。

 左は第一小隊で足止めする。右を落としたら直ぐに来てくれよ。」

「了解!!」

キースの指示でホワイトファング隊は即座に行動に移る。


左のスレイプニルを、キース達だけで相手をする。

確かに一度は勝利したが、敵性能が恐るべき事は変わらない。

キースは落ち着いて、撃破より足止めに集中した。

しかし、ケビン、マリアは初陣もあって、気負いしてしまい、単独行動に出る。

「やってやるぜぇ!」

ケビンは単機でスレイプニルに向かっていく。

「喰らいなぁ!」

マリアも呼応してマルチランチャーからミサイルを発射する。


二人の連携は見事に成功し、スレイプニルにダメージを与える。

が、その程度で致命傷になる訳もなく、接近し過ぎたケビンにスレイプニルが襲う。

「やらせるか!」

咄嗟にキースが援護をし、ケビンを救出する。

「バカヤロウ!!死にたいのか!?」

キースの怒号が響く。

「お、俺は…」

ケビンは死の危機、キースのシッ責、自分の反省…様々な事が一斉に押し寄せて、放心状態になる。

「マリアもだ!命令も無しに攻撃なんて…ふざけてるのか!?」

マリアは半泣きになる。

「だ、だって…」

「少将、すみません。ホワイトファング第一小隊は一度退きます。直ぐ戻ります。」

モリスは残念な声で答える。

『了解。しかし我々だけでアレを止める事は出来ん。直ぐに復帰してくれ。』



前線から退き、機体から降りたホワイトファング第一小隊。

キースは、ケビン、マリアの前に立つ。

しかし二人が思うほど、キースに怒りの表情はなく、むしろ失望した雰囲気をかもし出している。

「……お前たちにはガッカリだ。」

キースの冷たい言葉に、二人は子供のようにすがる。

「隊長、俺たちを見捨てるつもりですか?」

「隊長に捨てられたら私たち…」

キースは、子犬のように怯える二人の方に手をやり話す。

「お前たち、ユアンにもあんな態度で勝手に行動してただろ。

 小隊はチームだ。一人でも勝手な行動をすれば、隊は即壊滅する。」

ケビンもマリアも黙って、真剣にキースの語りに耳を傾ける。

「俺とレイとミリィも最初はデコボコだった。

 でも、チームとして成長していく中で、お互いかけがえのない仲になっていった。

 俺は、お前たちともそうなりたい。

 その歳で初陣だ。そりゃ俺以上に怖かったろう。でも、気負わなくていい。焦らなくていい。

 俺の事を、信じて付いてきてくれないないか。俺もお前たちを信じて戦う。」

ケビンもマリアも涙を浮かべる。

「隊長…すみませんでした。」「隊長に付いていきます。」

二人の顔は、すっかり緊張もほぐれいつもの調子に戻っていた。

「よし、それじゃサッサと戻るぞ!大佐にシカられるからな。」

「はい!」「はい!」



ホワイトファング第一小隊が抜けた穴は、大きかった。

既に何機かのグラディウスが、行動不能になっていた。

「すみません。遅くなりました。」

モリスは少し怒りを覚えるが、信じていたので冷静に応答した。

『学生の教育はバッチリか?』

「はい。これから挽回します!」

「今度はチームでやります!」「今度はチームでやります!」

キースに続くケビン、マリアの声はいつも通りに戻っていた。

オセリスは一人口角を上げる。

(…キース、成長したな…)


復活したホワイトファング第一小隊は、再びスレイプニルに立ち向かう。

しかし、その動きは冷静であった。

キースが二人に指示を出す。

「さっきのケビンの突きも、マリアのミサイル援護も良かった。

 が、当て所が悪かった。関節を狙うんだ。

 俺が前に出て敵の注目を引き付ける。

 マリアはテルミット弾で関節部を狙って溶かせ。

 ケビンはその後、すかさずさっきの突きをお見舞いしてやれ。

 それで片足はもげるはずだ。」

ケビンもマリアも笑顔で頷く。

「了解!」「了解!」


ターゲットを変えないスレイプニルに、キースが牽制をかけ注意を引き付ける。

「さぁ来いよ!俺が怖いか?馬野郎!」

しつこいキースに、スレイプニルもターゲットをキースに切り替え突っ込んでくる。

「今だ!」

キースの号令でケビン、マリアが動く。

マリアのテルミット弾で関節部装甲が溶け出すのも確認する前に、ケビンは最高のタイミングでランスの突きを連撃する。

「いっけぇー!」「おらららら!」

スレイプニルの片足が崩れるまでに、僅か数秒の事であった。


改めて二人の連携の実力を目の当たりにしたキースは、考えを変える。

「大佐!これなら第一小隊だけでやれます!」

『分かった。見事討って見せろ。』

オセリスはニヤリとする。

(キース…やはりお前は人を成長させる…)


キース達は崩した足の反対に回ると、同じように仕掛ける。

当然片足を失った状態の相手は、悠にもう片足を失う。

「っしゃあ!」「やったぁ!」

「まだだ!気を許すな!」

喜ぶケビンとマリアを、キースは直ぐにいさめる。

「走行モードに変形するぞ。その前に乗り移って潰す!

 全機、ブーストジャンプだ!」

ブーストジャンプで飛翔し、スレイプニルの背中に乗る三機。

キースは間髪入れず指示を出す。

「マリアは周辺の機銃を近接弾で、ケビンは俺が撃った所をランスで追撃!」

無駄のない連携ーーもう三人はチームとなっていた。

スレイプニル装甲が剥がれ落ち、機関部が見えるとマリアに止めを指示する。

「時限式炸裂弾を撃ち込んで、逃げるぞ!」


スレイプニルから退避する三人。

「今!」

スレイプニルから轟音と共に火柱が上がる。


「おぉ!」

「ホワイトファングだけでやってくれたぞ!」

「ホワイトファング!ホワイトファング!」

兵たちは、キース達の見事な暴れ馬退治の技に歓声を上げた。

「やはり、ホワイトファングだな。」

モリスは満足気に笑った。


逆に、エウロパ軍ACE部隊は、その進軍をストップさせた。

「ホワイトファング、本当にバケモンじゃねーか!」

「冗談じゃない、やってられるか!」

「バカ者!逃げるな!…チッ、だからホワイトファングは相手にするな、と言っておいたのに!」

苛立ちを抑えられないヒメネスは、必死に散兵を抑え込もうとする。

しかし、所詮金で雇った私兵では統率は無理であり、ACE部隊はクモの子を散らしてノーズブリッジへ敗走する。


この日、キース・ウォレンは知る。

勝利とは、敵を倒すことだけではないということを。


そして若き二人は、

名実ともにホワイトファングの一員となった。

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