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既視感あるくない?  作者: むぅむぅ星人


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第49話「交差する決意」

――ガンドラ基地・司令部。


救出されたチアゴ・ソウサル中佐は、やつれた顔でマティアス・ヴァルター少将の前に立った。

だがその目は死んではいない。むしろ、再起を誓う軍人の鋭さを取り戻していた。

「……以上が、現在のバーミカッム基地の状況です。」

ヴァルターは重々しく頷く。


敵の司令官について質問すると、ソウサルは即座に応える。

「基地司令のアメリア・ブラウン大佐は、今は基地修繕に追われています。

 加えてミハエル少佐による基地攻撃もありました。

 タロン市奪回の余力は、少なくとも数週間はないでしょう。

 印象としては――“守りの将”ですね。」


「ふむ……ではネイサン・テイラー准将は?」

ソウサルは苦笑した。

「彼は捕虜の私に友人のように接してくれましたからね……危うく懐柔されかけましたよ。

 間違いなく穏健派です。エウロパへの挑発行動には出ないでしょう。

 ましてや、我々を攻めてくる可能性は低いかと。」

ヴァルターも思わず笑みを返す。

「両者とも戦闘を望まない指揮官か…良いな。」


ヴァルターは地図の前に立つと、指先でタロン市西部を叩いた。

「敵が動かないのであれば――こちらが動く。」

ミハエルが一歩前に出る。

「将軍、攻撃を仕掛けるのですか?」

ヴァルターは首を横に振る。

「いや。攻撃する”ふり”だ。

 前回の捕虜奪還で、基地は手薄になっている。

 我々は地上部隊をタロン市西部グレイムーア平原へ前進させ、睨み合いの状態を作る。

 これは敵への圧力であり、本国への政治的アピールにもなる。

" 戦う意思が無い事を示しつつ、本国には“こちらは常に戦う準備がある”と見せる。

その両立が必要なのだ。」"

にこやかに語るが、ミハエルの表情は不安げだ。

「……ですが、本気で衝突すれば?」

ヴァルターは頷く。

「NuGearの性能差は、すでに互角。

 となれば、戦力が拮抗した状態の消耗戦だ。しかしそれは双方望むまい。

 それに、ACE同士の戦闘はパイロットの能力が大きく影響する。

 恐らく、君たちと狼付きのエース同士の勝敗が、そのまま戦局を決めるだろう。」


司令室が静まり返る。

重大すぎる言葉だった。

ミハエルもレティシアも、ごくりと喉を鳴らす。

「つまり……私たちの戦いが、両軍の勝敗を決める、と。」

ヴァルターは強く頷いた。

「そうだ。この戦争、君たちのようなAce of ACEsが決め手となる。」


ミハエルは胸に手を当て、深く一礼した。

「必ず、勝利を。」

レティシアも強く頷く。

「任せて。アタシ達が決めてやるよ。」



――ガンドラ基地・司令部・作戦会議後。


ヴァルターがひとり残り、資料を閉じていた。

レティシアは、そんな父の背中が少し小さく見えた。


「……と、父さん…」

「…ん?レティシアか。どうした?

 かしこまって“父さん”なんて、いつぶりだ。」

照れたように笑う父に、レティシアは視線をそらして言った。


「ミハエルがさ……“話せ”ってうるさいから、仕方なく来たのよ。」

強がった口調とは裏腹に、その声は震えていた。

「その……母さんが死んだ時、アンタは軍務で来なかった。

 …ずっと、それが許せなかった。」

ヴァルターの手が止まる。

「……そうだな。言い訳は無い。すまなかった。」

レティシアの肩がピクリと揺れる。

「ちがっ………アタシもアンタの事、全然考えもしなかった。

 ずっと、アタシだけが被害者みたいな顔して…」

父は立ち上がり、娘の前に歩み寄る。

その目には、老練な将ではなく――家族を失った一人の男の弱さがあった。

「レティシア……母さんを悲しませたのは、私も同じだ。

 お前とアラナには……本当に寂しい思いをさせた。」

父の苦しみを、初めて正面から受け止めた。

「……アタシ、バカだった。」

「いや……どちらも、不器用だっただけだ。」


レティシアは涙を袖で乱暴に拭い、背を向けた。

「……これでこの話はお終い……あー清々した。」

ヴァルターは微笑み、すこし冗談混じりに言った。

「そうだな。これだけの事に何年もかけて…ミハエル君は本当に出来た男だ。

 お前も彼の言う事なら随分素直だしな。…惚れたか?」

「はぁ!? 違うし!! なんでそうなるのよ!!」

顔を真っ赤にして逃げるように去っていく娘を見ながら、ヴァルターは呟いた。

「アラナ…レティシアを強い子に育ててくれて、ありがとう。」



――バーミカッム基地・ブリーフィングルーム。


ネイサン・テイラー准将が地図を指し示す。

「エウロパ軍がタロン市へ大規模な戦力を集結しつつあります。

 これは、バーミカッム奪回の前兆と見ていいでしょう。」


静まりかえる室内。

「逆に今なら、我々が先制できます。距離の面でも有利です。

 敵司令のヴァルター少将が穏健派であるなら、彼は本来膠着を望むはず。

 そこでタロン西部グレイムーア平原へ誘い出し、決戦を仕掛けます。

 勝てばタロンを奪回できるはずです。

 先ずは、国境線まで敵を追い出す。ここまでしないと、本国も納得いかないでしょうしね。」


キースたちホワイトファング隊は真剣な眼差しで聞いていた。

「厄介なのは、今空戦に対応できるACEが無い状態です。

 ミハエルの強化型グリフォンも再び参戦するでしょう。

 しかし、逆に彼らを早期に堕とせば、敵の士気は一気に崩れるはず。

 ホワイトファングには彼らの対処を任せたい。」


オセリスは短く息を吐き、頷いた。

「了解しました。」

キースもまた強く、頷いた。

「次こそ――必ず勝ってみせます!」



――ミーティングルーム。


モニターには、前回のヒポグリフ強襲の映像が流れている。

「敵は空戦特化。地上からでは捕捉すら困難だ。」


オセリスが画面を切り替える。

「そこで、アスカロンを“飛ばす”。」

レイが目を丸くする。

「飛ばすって……どうやって?」

オセリスは端末を操作し、新装備の設計データを映した。

「アスカロンを極限まで軽量化し、フライトユニットを装備する。

 名付けて――〈アスカロン・フライヤー〉だ。」

ビルが苦笑する。

「……随分と無茶な事しますね。」

サイラスは真剣な表情で続けた。

「今、空戦型の〈アルテミス〉が使えない以上、アスカロンを空戦仕様にするしか手はありません。」


オセリスは頷き、作戦を説明する。

「確かに、アルテミスに比べたら差し詰めインプ程度の空戦能力しかないだろう。

 しかし、敵は二機。こちらは六機。数で勝負する。詳細を説明する。

 ミリィ・ビルがツ―マンセルで敵一機に纏わり付け。サイラスはその援護。

 もう一機をキースがクレイバズーカで機動力を奪う。

 鈍った所をレイがワイヤーショットで敵機を補足。

 そして――ヘレンを牽引し、Nジャマーの射程へ運び、敵機のNuGearを停止させる。」


レイがヘレンを横目で見てニヤニヤする。

「俺がヘレン抱えて飛ぶって事か……映画の主人公とヒロインみたいだな。」

バチンッ!ーーミリィがレイの尻を叩く。

「いって!?またかよぉ、ミリィ…」

「調子に乗らない。」

ミリィがむくれて顔をそらす。

ヘレンは(ははぁん、これは…)と全てを察した顔をする。


キースは全員を見渡し、声を上げる。

「多分、敵のACEもNuGearの感情問題を克服していると思う。

 もうアドバンテージは無い。

 ここからは――純粋なパイロット勝負だ。

 どっちが本当のAce of ACEsか、見せてやろう!」


仲間たちの声が重なる。

「了解!」


――そして、決戦の刻は静かに迫る。


風が止み、戦場の空気だけが静かに張り詰めていた。

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