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既視感あるくない?  作者: むぅむぅ星人


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第48話「黒ワシの真価」

――ガンドラ基地上空。


澄み切った青空を、二つの黒い影が切り裂いた。

ミハエルとレティシアは受領した最新鋭ACE〈ヒポグリフ〉を早速テスト飛行していた。


「これが感情の壁を突破したNuGearか…!」

ミハエルは驚嘆を隠せなかった。


搭載された改修型NuGearは、

従来の“感情過多による制御難”が大幅に抑制され、

それどころか、意思に先回りするような反応補正 すら見せていた。


「ついてこられるか、レティシア?」

ヒポグリフの性能にミハエルはレティシアを心配する。

しかし、レティシアの瞳が射抜くように光り強気に返事する。

「当たり前!」


黒い翼は互いに追い抜き、交差し、また急上昇して弧を描く。

ミハエルはレティシアのパイロットの素質に驚いていた。


しばらくのテスト飛行を終えると、ミハエルが提案した。

「次は……実戦形式で試すか?」

「望むところよ!」

レティシアも乗り気で挑戦に応じる。

「凄い物ものだな。機体もパイロットも。よし、模擬戦を許可する。」

ヴァルターは二人の飛行に感心し、模擬戦が開始された。


最初、ミハエルは手心を加えていた。

だがレティシアのNuGearは彼女の負けん気に反応し、機体スペックを限界近くまで底上げする。

彼女のヒポグリフがあり得ない軌道を描きながら、むしろミハエルを挑発する。

「大したものだ。もうNuGearを使いこなしている……本気を出さないと、追いつけないな。」

ミハエルの声がわずかに熱を帯びる。

レティシアは息を荒くしながらも笑った。

「全力で来な!」


空が震えた。

二人のヒポグリフは黒雷のように空間を切り裂き、

互いの死角に飛び込み、離脱し、またぶつかる。


模擬戦とは思えぬ迫力に、地上で見ていた整備兵たちは息を呑んだ。

「ヒポグリフが凄いのか、新型NuGearが凄いのか。」

「どっちもだ!」


「いや、二人がずば抜けてる。素晴らしい!」

興奮したヴァルターも直接見に、外へ出ていた。


激戦の末、模擬戦は引き分けとなった。



ーーガンドラ基地への帰投中。


ミハエルは大いに喜びレティシアに話す。

「大した腕だ。バディとして申し分ない。」

レティシアもミハエルを笑顔で称える。

「アンタも。シュヴァルツ・アドラー…伊達じゃないね。」


少し間を置き、ミハエルは静かに切り出した。

「レティシア……どうしてヴァルター将軍に、あんなに当たる?」

レティシアの肩がわずかに揺れた。

「……アンタには、関係ないでしょ。」

ミハエルは首を振る。

「命を預け合うバディなら、お互い知ることも必要だろう。」


そう言うとミハエルは、瞳の奥に孤独を滲ませながら語り始める。

「私の家はかつて名門貴族と言われていたが、父の事業失敗で家は没落した。

 学費さえ払えないほど落ちぶれた私には、軍に入るしか道がなかった。

 父を恨みこそしないが、それからは文字通り必死だったよ。

 それで第二の父のシェザール閣下に拾って頂いた。」

「そう…アンタも結構苦労してんだね…」

レティシアがミハエルの生い立ちに共感していると、ミハエルは切り出す。

「それでは、君のことを聞かせてくれるかな?」


そう言われ、少し躊躇ったが、レティシアは少しずつ語り始めた。

「アタシの母さんは病弱でさ。そんな母さんを置いてあのオヤジは軍務、軍務と没頭してたんだ。

 挙句にアイツは母さんの葬儀にすら現れなかった。サイテーでしょ? 

 母さんは最後までアイツを責めなかったけど……アタシは許さない!

 軍に入ったのもアイツへの当てつけさ!ざまーみろだ。」

ミハエルは空を見ながら話す。

「軍人たる者、ずっと家族のそばに居る事は出来ない。

 それは君も分かっているだろう。

 それに、君の母上は、将軍を一度でも罵ったか?」

レティシアは答えられなかった。

ミハエル少し哀愁を漂わし言う。

「母上を失って、一番つらいのは将軍なんじゃないかな。

 許せとは言わない。ただ……一度話をしてみる価値はあると思う。」


レティシアは小さく息を飲んだ。

誰ひとりヴァルターを悪く言わなかったことを思い出す。

「……本当にサイテーなのはアタシだったのかも……」

「君だけが悪いわけではない。ボタンの掛け違いがあっただけだ。

 それに気づけたのなら、それだけで十分じゃないか。」

責めるのではなく、肯定して受け止める。

そのミハエルの優しさに、レティシアは初めて尊敬の念を抱いた。



ーーガンドラ基地・指令部


模擬戦の結果に自信を持ったミハエルは、ヴァルターの元へ向かった。

「提案があります。

 レティシアと二人で、バーミッカム基地に拘束されている捕虜の救出したく思います。」

ヴァルターは驚いたが、ミハエルはモニターにバーミッカム基地の地図を映し、作戦詳細を説明する。

「閣下、これはヒポグリフの性能と私たち二人ならではの作戦です。

 先ず、大量のチャフを散布し対空ミサイルを無力化します。

 次にヒポグリフの機動力と精密射撃により対空砲台を無効化。

 対空防衛網を殺した末、捕虜解放を要求します。

 地上部隊を展開すれば、人質の危険が高まりましょう。

 だからこそ、空からの限定的制圧で交渉に持ち込みます。」

ヴァルターは眉を寄せた。

「危険すぎる。」

「我々なら出来ます。模擬戦をご覧になったでしょう。」

ヴァルターも静かに頷く。

「確かに、一刻も早く可愛い部下たちを助けたいのは山々だ…

 分かった。君とレティシアに任せよう。」

ヴァルターの真摯な願いに応えるように、ミハエルは強く敬礼をした。

「必ずや!」



ーーバーミッカム基地・上空。


その日、バーミッカム基地に警報が鳴り響いた。

「上空に敵ACE2……黒い…グリフォンです!」

「黒いACEって…例の?」

新任基地司令のアメリア・ブラウンは、ミハエルを予期して対処を急いだ。


しかし、黒いヒポグリフ二機は、基地上空を急速旋回しながらチャフをばら撒いた。

直後、空一面に銀色の雨が降った。

対空ミサイルは軌道を乱し、次々と自爆していく。


「黒いACEって、ミハエル・ファフナーですか!」

キース達も慌てて駆けつけるが、基地の光景はポツポツと火が上がっている程度だった。

「あいつ等、的確に対空砲だけ落としてやがるぞ。」

レイが驚愕する。

「二機とも凄い…」

ミリィも感嘆する。


「関心してる場合じゃない、基地を守るぞ!」

ホワイトファング隊を先頭にACE部隊が出撃する。

しかし、空対地ーーヒポグリフは空で“踊る”ように跳ねキース達の攻撃をかわす。

急上昇、急降下の捉えようのない攻撃の連続。連携も見事だった。


レイの狙撃も、サイラスの散弾ボウも、

ヘレンのNジャマードローンすら捉えられない。

「ダメです……! 反応が速すぎる!」

サイラスが目を見開く。


キースは歯を噛みしめる。

「この動き…グリフォンの発展機だとしても異常だ。

 エウロパのNuGearも、ついに感情暴走を克服したのか……?」


手も足も出ないキース達を他所に、ミハエルたちは全ての対空砲台を落としていた。


ブラウンは顔を蒼白にした。

「防空網が死んでは手の打ちようが……!」


そこへミハエルから通信が入る。

『これで、基地防空網は無力化された。

 要求はひとつ。チアゴ・ソウサル中佐以下、捕虜の解放だ。』


「捕虜の解放……!?」

要求が想定外すぎて、アメリアは言葉を失った。


しかし防空網を失った今、抗う術はない。

「……分かりました。要求に応じましょう。」


捕虜移送が完了すると、ミハエルたちは早々に帰路についた。

黒い影は、来たときと同じ速度で空に消えた。


キースは拳を握る。

「……あいつら、強い。だけど――だからこそ、絶対に追いつく。

 次は、好きに暴れさせたりしない。」


バーミッカムの空に響くのは、

ただ黒き翼が残した風だけだった

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