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既視感あるくない?  作者: むぅむぅ星人


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第41話「血に飢えし角の死闘」

ーー南部森林地帯・エウロパ軍前線司令部。


『……申し訳ありません、大佐。作戦は失敗です。全軍撤退を進言します。』

『了解した。全機シュヴァルツ・アドラー隊を救出しつつ撤退せよ。

 …聞いての通りだ、ハインライン。ケアン攻略は失敗だ。』

北部の撤退報告を受けたアドリア・ハインライン大佐は、深い失望を隠せなかった。

(結局口だけだったか、ファフナーめ。

 リベイロも北部が失敗したから、攻略自体を諦めろだと?…ふざけるな)


「口ばかりの若造が……情けない。もういい。南部だけで攻略する。」

苛立ちを押し殺した声の冷たさが、幕引きの鐘のように響いた。


しかし、北部崩壊はハインラインにとって、最悪の判断をせざるを得ない状況となった。

「コンティ、一旦兵を戻せ。状況が変わった。」

前線指揮していたダリオ・コンティ中佐は不満げに答える。

「……了解。全機、一度森林から撤退する。」



ーー一方、ケアン基地・司令部。


『北部方面防衛――成功! これよりホワイトファング隊は南部へ急行する!』

キースの力強い声が届くと、司令部は歓喜に包まれた。

だがオセリスの目は冷静だった。

「喜ぶのは早い。ホワイトファング隊が着くまでに、南部は崩れる可能性がある。

 敵は必ず戦術を変える。急ぎダグラスへ伝令を向かわせろ。」



ーー再び、南部森林地帯・エウロパ軍前線司令部。


「”森林に姿なき赤サイが多数潜んでいる”……か。」

ハインラインの言葉に、コンティが神妙な面持ちで頷く。

「はい。接敵した小隊は全滅し、情報が全く上がってきません。」

ハインラインは地図を覆い隠すほど影を落とし、静かに語る。

「オセリスは狡猾だ。こちらの動きを読んで布陣している……。」


そして、硬く息を吐いた。

「北部の失敗で猶予は消えた。――遺憾ながら総力戦に切り替える。」

コンティはごくりと唾を飲む。

「いよいよ、ですか。」


「六個中隊を再編成し、一斉投入する。

 本来ゲリラ相手に大部隊で動くのは悪手だが……あえてやる。

 各隊の上空支援にグリフォン中隊をつける。」

ハインラインはコンティを一瞥し、皮肉気に微笑む。

「バルディーニ大将の薫陶を受けたお前には、こちらの方が合うだろう?」

その言葉にコンティは嬉々として敬礼した。

「閣下の戦い方そのものです! すぐに準備します!」


去っていく背中を見送り、ハインラインは小さく呟いた。

「総力戦……。出すべきではなかった一手だ。

 私は……何をしている……?」

だが次の瞬間、彼は自分自身を叱りつけるように叫んだ。

「いや、オセリスのような平和を裏切る大罪人を野放しにしてはならん!」



ーー同刻・南部森林地帯・コロンゴ軍サイド。


撤退していく敵影に、ダグラスは眉をひそめた。

「……退く? 状況が変化したのか?」

だが通信は遮断されており、判断材料はない。

ダグラスは静かにヘルメットを被り直した。

「……作戦継続だ。」


森に響く動物の声が、何かの前触れのようにひどく不吉だった。



ーー再び、南部森林地帯・エウロパ軍前線司令部。


「全軍、前進開始! 迷うな、押し潰せ!」

六個中隊が一斉に森林へ侵入。

上空のグリフォン九機は高度を変えながら獲物を探る。


地面を揺らす地響きがACEの足裏から伝わり、ダグラスは直感した。

「この振動。敵は総力戦に出たか!」

急ぎ、強制通信で周囲の小隊に叫ぶ。

「作戦中止! 敵は中隊規模で動いている、撤退準備に移れ!」

ACE部隊が混乱する中、悲鳴が聞こえた。

『七……いや九……! 中隊が――ぐあああああ!!』


ダグラスは即座に司令部へ報告し、応じたオセリスが短く答える。

『ホワイトファングが到着する。それまで持たせろ。』

「当然だ……!」

だが胸の底では、不吉な影が揺れていた。

「全隊、指定ルートで撤退! 

 バーミッカム駐留部隊と合流し、森を抜けた敵を叩く!」


ーー惨劇の撤退戦。

上空のグリフォンが位置を補足、低空爆撃がACE部隊を襲う。

地上では数の暴力による殲滅が始まっていた。


瞬く間に”赤い影”はその数を失っていく。


レッドホーン隊はあえて敵中隊へ突撃し、味方の盾となっていた。

ライアンがハンマーを横薙ぎに振るい、三体を吹き飛ばす。

「おらぁぁぁ!真のレッドホーン隊の力、見せてやる!」

オリバーは地対空ミサイルを撃ち、グリフォンを墜とす。

「敵、射程高度侵入。落ちろ…!」

ダグラスは間隙をついて敵隊長機を倒し混乱を誘う。

「ここは通さん!」


その戦いぶりを見て、ハインラインは目を見開いた。

「一個中隊でも落ちんだと……!?

 赤サイに二個中隊を向けろ! 上空も飽和攻撃だ!

 アレと狼付きが合流したら大惨事になる!」


グリフォンのミサイルが雨のように降り注ぎ、レッドホーン隊の動きが封じられていく。

「くそ、上からなんて卑怯だぞ!」

苛立つライアンが吠える。

「落ち着いて。爆撃は精度が低い……でも隊長、もうミサイルがありません。」

オリバーは落ち着いて見せるが、声に焦りが滲む。

「時間が惜しい。突破するぞ!覚悟を決めろ!」

炎をまとって駆け抜ける赤いACEは、まるで紅蓮の戦神のようだった。


だが、抜けた先には――十八体のACE。

「…六対一。俺達も随分高く評価されたもんですね、隊長。」

ライアンは苦笑いする。

「でもここで我々が敵を引き付ければ味方が逃げられる。」

オリバーも相変わらずの笑顔だ。

「お前たち…よし!レッドホーン隊の本領を発揮するぞ!」

三人は頷き合った。


包囲している二個中隊に対しハインラインが動揺を隠せない声で指示する。

『い、いいか。三体以上でかかるんだ。敵はバケモノだ。

 だが、倒さねばならん…諸君らに対してこのような命令を下す私を、許してくれ…』

怨嗟と復讐に燃えていたはずの男の声音は、もうそこにはなかった。


包囲してるエウロパ軍もレッドホーン隊の姿を見て恐怖しかなかった。

そこへコンティが号令する。

『数で圧倒しろ!死を恐れるな!』


恐怖する兵士に、さらに恐怖を重ねて前へと押し出す。戦争という名の怪物の側面である。


しかし、命令は絶対であり、隊長機の号令で二個中隊の一斉攻撃が始まった。

オリバーのロケットとバズーカが敵を散らすが、勢いは止まらない。

「敵も正気じゃない!」

突破してきたゴブリンを、ライアンが大旋回ハンマーで粉砕する。

「どおぉらぁぁぁ!」

ダグラスも笑みを浮かべながら突撃した。

「これだけの数なら……殴り甲斐がある!」


ーー壮烈な戦い。レッドホーン隊の奮闘ーー

しかし、オーガのミサイルがライアンを直撃した。

「ライアー―――――ン!」

ライアンのグラディウスは上半身を爆散させ、立ったまま息を引き取った。


「隊長ッ!!」

オリバーが叫ぶと同時に、敵の集中砲火がダグラスへ。

……だが、衝撃は来なかった。

「残弾……ゼロでは……これくらいしか……」

身を挺してダグラスを守り、崩れ落ちる。オリバーのグラディウス。

最後まで、彼は笑っていた。


「貴様らあぁぁぁぁ!」

ダグラスのグラディウスは赤いオーラを噴き上げ、手当たり次第に敵を殴り倒す。倒す。倒す。

レッドホーン…血に飢えた角は修羅の如く敵を倒し続けるーー



ーーケアン基地。


森林を突破した数個の部隊がケアン基地に迫っていた。


オセリスも覚悟を決め、命令をする。

「最後の正念場だ! ホワイトファング隊到着まで一歩も通すな!」

砲撃の雨が降り注ぎ、敵ACE部隊を阻害する。

しかし、敵ACE部隊は着実に歩を進め掃討を始める。


オセリスは不退転の構えで戦局を見つめる。

(そろそろ来い、ホイワトファング。皆がお前たちを待っているんだぞ。)


すると一人の兵が歓喜を上げる。

「援軍だ!ホワイトファングが来たぞー!!」

オセリスは笑みを浮かべた。


ホワイトファング到着の報に、エウロパ軍司令官二人の反応は対照的だった。

コンティは猛る。

「今再び、閣下の弔い合戦の刻だ!」

ハインラインは逆に血の気を失う。

「狼付き、赤サイ。バケモノ二匹も相手に勝てる訳が無い!撤退だ!」

「ふざけるな大佐!! バルディーニ閣下の仇が――!!」

コンティが怒号を上げるが、

「黙れ!!これ以上兵を無駄死にさせる気か!」

ハインラインは狂えるコンティを殴り倒し、退却を命じた。

その拳は恐怖と後悔で震えていた。

「私は……何をしてしまったんだ……誰が、許してくれる……?」

指揮所を去るハインラインの背は、指揮官としてはあまりに小さかった。


ケアン基地は守られた。

だが救った以上に、あまりにも大きなものを失った。


森はなお、炎に包まれていた。

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