表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
既視感あるくない?  作者: むぅむぅ星人


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
39/140

第38話「開戦前夜」

――ルーティア基地・作戦司令室。


重厚な扉が閉じられると同時に、室内は張り詰めた空気に包まれた。

ホログラム地図の上で、赤と青のマーカーが静かに、しかし不吉に動いている。


中央のテーブルに立つのは、二人の指揮官――

北部方面指揮官フェルナンド・リベイロ大佐と、南部方面軍司令アドリア・ハインライン大佐。

「北部からの進軍経路はカリビア山脈に遮られる。だが、裏をかけば侵攻は可能だ。

 それに呼応して南部からも押し上げる。」

ハインラインの声は低く、しかし鋭い。


リベイロは腕を組んだまま小さく首を振る。

「……ハインライン。私は、できればこれ以上の流血は避けたい。

 この島は、ピースブリタニカ島だ。戦場にしてはならない。それは貴官はよく知っているだろう。」

ハインラインは眉をひそめ、冷たく言い放つ。

「理想は結構だが、現実を見るのだ。コロンゴ軍は私の和平交渉を拒否し、未だ基地を占拠している。

 オセリスという男に降伏勧告を送ったところで、笑って返されるだけだ。」

リベイロは顔を上げ、真っ直ぐに見返した。

「……だが、試す価値はある。彼がリアリストなら、無益な戦いを選ばぬはずだ。」

ハインラインは苛立ちを隠さず言い返す。

「連中に慈悲など不要だ!」


ハインラインの声が室内に響く。

一瞬、参謀たちが息を呑んだ。


リベイロは静かに目を閉じた。

「……貴官、変わってしまったな。共にこの島の平和を願っていたではないか?」

ハインラインは首を振る。

「理想で兵は救えない。勝たねば、次の和平も掴めん。

 奴らに裏切られ、ようやく目が覚めた。」


短い沈黙。

その空気を和らげるように、ミハエルが一歩前に出た。

「両大佐、ひとつ提案があります。」

ハインラインが目を向ける。

「言ってみろ。」


ミハエルはスクリーンの地図に独自で描いた作戦概要を映す。

「再度スレイプニルを囮に使うのです。

 正面からの総攻撃ではなく、スレイプニルが先行して前線に立てて敵の注意を引き、

 その隙に南北の遊撃部隊で挟撃する。

 機体は損耗しますが、人員の被害は最小限に抑えられます。」


リベイロは目を細め、わずかに微笑んだ。

「……なるほど。被害を減らす策、というわけだな。」

ミハエルは軽く頷く。

「はい。私もこの戦争には辟易しております。

 私の囮で兵が救えるなら、喜んでこの任を引き受けます。」

その言葉に、リベイロは深く息をついた。

「――ありがとう。君のような兵がいることが、まだこの戦争の救いだ。」


ミハエルは黙って敬礼する。


ハインラインは冷笑を浮かべた。

「囮ではなく徹底的に潰してもらって構わんがな。」


そう言い捨てて去る彼の背に、リベイロは小さく呟く。

「……戦争が人を歪めるのか。軍人とて、人を殺したくて戦うわけではないのに……。」

ミハエルはその背を見つめ、胸中で思う。

(この方は、軍人としては優しすぎる。しかし……本来あるべき指揮官の姿だ。)



――翌日。ケアン基地・指令棟。


ケアン基地の作戦会議室では、地図上に展開される敵軍の動きを前に再編命令が下っていた。


オセリスが立ち上がり、全員を見渡す。

「予想通り、敵は南北からの挟撃を仕掛けてくるだろう。

 残存ACEは三十機――当初の七十二機の半数にも満たん。」


重い沈黙が落ちる。


オセリスは続ける。

「北はカリビア山脈が壁になる。

 こちらはホワイトファング隊を軸に三個小隊、九機で防衛を固める。

 レッドホーン隊は南部を担当。残り七個小隊で迎撃に当たる。」


ダグラスが短く頷く。

「最低限の布陣だな。」

ライアンは地図を見つめながらつぶやく。

「しかし、これなら少なくとも正面突破はされない……持久戦だな。」

レイが冗談めかして言う。

「いいじゃないか。持久戦は俺の得意分野だ。」

ミリィは笑わず、真剣な目でモニターを見ていた。

「……私たちが守りきらなければ、この戦争は終わらない。」


オセリスが彼の方を向く。

「キース、北部防衛はお前に任せる。二個小隊の指揮も委任する。

 ホワイトファングはこれまで数々の戦線で奇跡を起こしてきた。期待している。」

キースは力強く敬礼した。

「必ず守り抜きます。」


ダグラスが続ける。

「では、レッドホーン隊で南部を。」

オセリスは頷く。

「南部は激戦になるだろう。俺も前線で指揮を執る。

 だが現場判断は任せる。――どちらが崩れてもケアンは終わりだ。全員、生き残れ。」


静かな緊張が室内を包み、各隊員が散っていく。

その足音が、静寂を破る開戦の合図のように響いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ