第四話 冷静
「そんな……」
5分くらいで4分の1?
「今、各クラスの担任がそのクラスの生徒を守っている。……が、こんなにも減ってしまっている。不甲斐ない。」
黒井先生が頭を下げる。
すると、いつの間にか隣にいたシュンが、
「先生のせいじゃないよ!全部、侵入者たちのせいだ!」
と、珍しくいいことを言っている。
いつもなら、「先生には敬語を使え」と説教をしているところだが、今はそんな状況じゃない。
「ちなみに、うちのクラスの人達は、あとどのくらい残ってますか?」
流石にクラスメートのことが心配だ。
「お前らを合わせて、3人だ。」
「「は!?」」
うちのクラスは全員で30人いる。それがものの5分で3人に?
信じられない。信じたくない。
「ちなみに、そのもう一人は?」
「功力だ。」
納得した。
功力こと、功力ゲンキは、僕達と同じ1年3組に所属している。運動能力が学年でもトップ3には入るほど高い。明るく元気な……ポンコツだ。
「功力なら大丈夫だとは思うが、念のため、あとで功力のところにも向かうつもりだ。」
あれ、でもそれじゃ、先生の体力がもたないんじゃないのか。
いくら先生であろうと、人間だ。ゲンキがこの広い体育館のどこにいるかは分からないが、体力は相当削られるはず。
「先生、無理しないでください。そんな生徒第一の考えだと、先生が死んじゃいますよ!」
「俺の心配はしなくていい。学生時代には格闘技を習っている。体力にも自信がある。」
そんなこと言われても、僕の中のモヤモヤとした気持ちは無くならない。
「あぁ、もう!かっこつけんなよ、先生!おれはバカだからこの状況が未だに分かってねぇけどよぉ、先生が無理してるのは分かるぜ。おじさんが無理すんなよな!ゲンキのことなら大丈夫だと思うぜ。おれらが生き残ってんのに、ゲンキが死んでいるなんてことは無いはずだ。もしそんなに心配なら、おれらが見にいってもいいんだぜ。」
急にシュンが大声で喋りだした。
流石に喋りすぎたのか、シュンは、はぁはぁと息切れしている。バカだ。
それに、大声で喋ったせいで近くの侵入者が、どんどん近づいてきている。
「内山シュン!!」
流石に怒ったのか、黒井先生が怒鳴りに近い声をあげる。
「俺はまだ37歳だ!まだおじさんじゃ無いだろう!?」
いやそこかよ!?まぁでも、怒るのは納得……。
先生がその怒りで、1番近くにいた侵入者を殴った。
侵入者が約2.5メートルほど吹っ飛ぶ。
これには僕とシュンはドン引きだ。
そしてその勢いで侵入者を攻撃し、侵入者が塵になる。
あれ、黒井先生ってこんなに怖かったっけ。……いや、こんなに怖かったな。
「俺はここら辺の人形、そうだな……三体ほど倒したら、功力のところへ向かう。」
先生は侵入者のことを人形と呼ぶのか。いや、そんなことはどうでもいい。先生のことを止めたいのに、さっきの先生の『侵入者ぶっ飛びパンチ』が衝撃的で声が出ない。
先生は黙々と侵入者と戦い始める。
……すごいな。僕では全然歯が立たなかった侵入者と戦えている。僕たちを守るために先生は戦っているんだ。
僕は決意したはずだ。戦おうって。なのに、まだ自力で一体も倒せてないじゃないか。
そもそもなんだよ、これ。まるで夢みたいな状況だ。急に侵入者、というか謎の人形が現れ、校長先生が突然変なこと言い出して、武器が配られて、夢ならさっさと覚めてくれ。
なんか急に冷静になってきた。
ふと、周りを見渡す。
この目に映ったのは消えていく人、人……
ん?なんだ?この感情は……
あまり勉強できなかった大事なテストの直前の時のような、中学生として最後の陸上の大会の時のような、この感情……
分かった。
そうか、僕、怖いんだ。




