3 鎖姫が生まれた話
XXXX年、とある小さな村で、裁判が行われた。
広場には村人たちが集められて行く末を見守っていた。
◆◆◆
14才の誕生日を迎えた日。
「リアナ様。どうか、この者に裁きを…!」
この村の年老いた村長がわざとらしく私に頭を下げる。
この人は、何を言っているんだろう?本気で疑問に思った。
眼の前にいるのは数人の見張りに拘束された男。
何人も殺して、盗みもして…。犯したという罪を説明されるが、私にどうしろと?
今朝、起きたら両親に王族が着るような服を手渡された。
よく分からないまま着ると、広場に連れて行かれた。
『昨夜、私にお告げがありました。あなたは神に選ばれた子だそうです。あなたが、神の代わりに罪を裁くのです…!』
村長にそんなことを言われ、訳が分からないまま今に至る。
成人もしていない子どもに何を求めているの?神?知らないよ?信じてないし。
「村長、私が、この方を裁くんですか?そんな事できません…」
「あなたは神に選ばれた。さあ、裁くのです。神の名のもとに。どんな罰を与えましょうか!」
拘束された男の方を見ると、鋭い目つきで睨まれた。
そうだよね、こんなガキに人生を左右されようとしてるもんね。
「あの、普通はどうやって裁かれるんですか?」
「この男は何人も殺しをしました。死刑でしょう。さあ、水攻めですかな?火あぶりですかな?」
なんと。死刑一択らしい。
「私の妻と子どもはこの男に殺されました―金のためにッ。」
「こんなやつを許していいはずがないだろう!!」
「「そうだ!」」
村人たちの怒号が鳴り響く。死刑!死刑!と。
私はどうすればいい?せめて苦しまない方法を…
「ざ、斬首刑に!剣で首を、こう、一瞬で…」
村人たちの声と視線に追い込まれた私は、小さな声で呟いた。その瞬間。
うわぁぁぁぁ!!、と歓声が起きた。
「このガキてめぇ…!許さない!死んでも呪ってやるっ゛!」
連行されていく男から全力でぶつけられる敵意と殺意に鳥肌が立つ。
なにが正しかったの?どうすればよかったの?
なんでこんなことに…。
その謎は、男の刑が執行されたと聞いた後に解ける事となる。
◆◆◆
私は死刑を言い渡した後も、神に選ばれた子として扱われていた。
豪華な服に豪華な食事が提供されるけど、ずっと質素な小屋に閉じ込められている。
そして、ごくたまに罪人が連れてこられ、私は何も考えず刑を下す。
両親にも会えず、友人にも会えず、食事を運んでくる人くらいしか会えない。
なぜなのか、と何度も訴えたが、返ってくるのは
『あなたは神に選ばれた子だから』という返答のみだった。
これまで普通に生きてきたのに。普通に両親と暮らし、普通に友人と遊んで畑仕事をしていたのに。
まずい、思い出したらだめだ。もっと苦しくなる。
毎日小さな窓から空を眺め、日付の感覚も分からなくなった、ある日。
「リアナっ!」
「アミ!?どうして…?」
「しぃー!」
夜中に、一番の親友だったアミが小屋に入ってきた。
「見張りの人は?大丈夫なの?」
「今日は収穫祭の日だからね!警備が薄かったのだよ。」
へへっと胸を張ってみせる友人を見ていると、急に涙腺が崩壊した。
「うえ、!?どうした?」
「ぅうっごめん…会えたのが嬉しすぎて…」
「リアナ…。」
アミは自分の袖で私の涙を拭いながら言った。
「リアナ。外に出よう。この村から出るの。」
「―――ありがと、アミ。でも無理なんだ。」
私だって考えたことがある。こっそり隙を見て小屋の外に出ようとした。
だけど、扉を開けたら外に村長が立っていて。
『なんで…?』
『神のお告げがあったんですよ。あなたが逃げ出そうとしている、と。反省なさい。食事は当分抜きです。何をしたって分かりますよ。』
「それがね、私、リアナが閉じ込められてからずっと考えてたの。いいこと思いついちゃった!」
「いいこと?」
作戦は警備の薄いその日のうちに実行された。
収穫祭の日には村の外から旅商人がやってくる。その馬車に紛れ込むのだ。
窓の外から出て、荷台に隠れる。本当にうまくいった。
「リアナ。絶対に幸せになるんだよ。」
「アミ、ありがとう。絶対また会おうね。」
「うんっ!」
その時。
「あそこだーっ!」
「なんで…」
「アミ、逃げて。」
「でも!」
「愚かですねぇ。何をしても分かると言ったでしょう?」
アミは、私を逃がした罪で大人に殴られた。
「やめてっ!私が悪いんです!アミは悪くない!私を殺して!」
「なに言ってんだ化物!お前は、死なないだろう?」
「え…?」
そう叫んだのは、私の両親だった。
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