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第八話 嗚呼、夕闇に咲く蕃紅花

【登場人物とアイコンの対応】

 挿絵(By みてみん) レッド・ミート

 挿絵(By みてみん) ブルー・フィッシュ

 挿絵(By みてみん) カリー・イエロー

 挿絵(By みてみん) グリーン・ベジタボー

 挿絵(By みてみん) ピンク・スイーツ

 挿絵(By みてみん) 嵐山長官

 地方の採石場——

 デブレンジャーの四人は敵のカロリー伯爵に苦戦していた。



【ナレーター】

 説明しよう!

 カリー・イエローが遅刻しているのだ!



挿絵(By みてみん)「――イエロー、どこにいる! 応答せよ、イエロー! イエロー!」


 レッドが左腕のファット・ウォッチに呼びかける。


 ザザーッ、ピポッ。


 ノイズの混じったウォッチの画面に、イエローの姿が映る。


挿絵(By みてみん)「レッドか、スマン!」


挿絵(By みてみん)「どうした、マシントラブルか?」


挿絵(By みてみん)「新しくできたカレー屋の行列が、なかなか進まなくてな」


挿絵(By みてみん)「そんなことしてる場合か! こっちはピンチなんだ! 行列など抜けて、すぐに来るんだ!」


挿絵(By みてみん)「そんなこと言ったって……もうずっと前から楽しみにしてた店だし、行列だって、もうすぐわしの番がくるんだ」


挿絵(By みてみん)「いいかげんにしろ、イエロー! カレーと任務と、どっちが大事なんだ!」


挿絵(By みてみん)「……う~ん」


挿絵(By みてみん)「悩むな!」


挿絵(By みてみん)「じゃぁ、カレー」


挿絵(By みてみん)「違う!」


挿絵(By みてみん)「おっ、いよいよわしの番だ。マッハで食べて駆けつけるから、それまで持ちこたえてくれ――通信終わり」


 ピポッ。

 画面から、イエローの姿が消えた。


挿絵(By みてみん)「イエロー!、イエロー!」


挿絵(By みてみん)「おいレッド、イエローはまだ着かねぇのか!」


挿絵(By みてみん)「も、もうダメ……体脂肪の残りが……」


挿絵(By みてみん)「ごめん、みんな……僕はもう限界です……」


 がくっ……。

 スローモーションのように、地面に倒れ込むグリーン。


挿絵(By みてみん)「グリーン!」


挿絵(By みてみん)「畜生、あんな野郎でもいねぇよりはマシだってのに……」


挿絵(By みてみん)「あ……アタシも限界かも……」


 ばたっ……。

 グリーンに折り重なるようにして、ピンクも倒れる。


挿絵(By みてみん)「ピンク!」


挿絵(By みてみん)「レッド、ファトルキングを呼べ!」


挿絵(By みてみん)「呼んだところで、五人揃わないと戦えないぞ!」


挿絵(By みてみん)「やってみなくちゃ、わからねぇ!」


挿絵(By みてみん)「無茶だ、ブルー!」


挿絵(By みてみん)「無茶でも何でも、やるしかねぇんだよ!」



【ナレーター】

 ファトルキングを戦闘モードにするには、五人の力を合わせる必要があるのだ!

 ……えっ、何度も単独で動かしてる?


 考察を楽しんで欲しいのだ!



「ぬわぁ~っ、はっ、はっ、はっ! デブレンジャー、貴様らはもうおしまいだ!」

 余裕をかますカロリー伯爵。


挿絵(By みてみん)「ぐっ……マズいぞ……体脂肪の残りが……」


 ファット・ウォッチの表示は〈体脂肪率:〇・八%〉


挿絵(By みてみん)「ダメだ……ちからが……抜けてゆく……」


 がくっ……。


挿絵(By みてみん)「レッド、しっかりしろ! レッド!」


「残るはただひとり……ひと思いに楽にしてやろうか、ええ?」

 舌なめずりをしながら、手にした鞭を振り上げる。


挿絵(By みてみん)「くそぉ……これまでか……」



 シュゴォッ……シュゴォッ……シュゴゴゴゴゴォ……!!!


 彼方から、ジェットエンジンの咆吼が聞こえてくる。


挿絵(By みてみん)「あれは――」


 ズジャァアアッ!!!


 減速用のパラシュートを引きずりながら、七人乗りのトゥクトゥクがタイヤをきしませ急停止する。


挿絵(By みてみん)「よぉ……お、遅かったじゃねぇか……」


 がくっ……。

 倒れるブルー。


挿絵(By みてみん)「済まないみんな……なにっ……こ、これは――」


 イエローの眼前で、地面に倒れ伏す四人の仲間たち。


「ちっ……まだ仲間がいたとはな」と、カロリー伯爵。


挿絵(By みてみん)「おのれ、カロリー伯爵! 仲間をこんな目にあわせやがって……ゆるさん!!」



【ナレーター】

 遅刻のせいだとは、みじんも考えないのだ!



「はっ、たったひとりで何が出来る! 喰らえ、ドレイン・ウィップ!」


 カロリー伯爵の放ったドレイン・ウィップが、イエローの身体に絡みつく。


挿絵(By みてみん)「しまった!」


 ドレイン・ウィップによって、イエローの体脂肪がみるみるうちに吸い取られてゆく。


挿絵(By みてみん)「くそっ……このままじゃ全滅だ……よぉし! こいっ、ファトルキング!」

 腕のファット・ウォッチに向かって叫ぶイエロー。


 空を覆う雲が割れて、ファトルキングが登場!


 なんとか鞭を振りほどいて、イエローがファトルキングに乗り込む。


挿絵(By みてみん)「チェーンジ・ファトルキーング――オメガッ!」


 お決まりのポーズとかけ声。

 しかし――


「エネルギー ガ フソクシテイマス」

 がらんとした操縦室に、コンピュータの声が冷たく流れる。


挿絵(By みてみん)「そこをなんとか!」


「ドウニモナリマセン」


挿絵(By みてみん)「やはり、五人の力を合わせないとダメなのか……まてよ! 長官が言っていたじゃないか。ファトルスーツの隠された機能のことを!」


 イエローが、胸に輝くエンブレムをこじ開けると、そこには透明なカバーのついた赤いボタンがあった。


挿絵(By みてみん)「これが、リミッター解除のボタンだな……だが、これを押せばわしは――」


 ためらったのは一瞬だった。

 操縦室がカロリーの燃える光に満たされる!


挿絵(By みてみん)「うおぉぉぉぉっ……バターソード・黄金斬(こがねぎ)りッ!」


 ファトルキング・オメガの振るう光輝く巨大な剣が、カロリー伯爵を跡形もなく消し去った。


 ◇


 イエローのトゥクトゥクに積まれていたカレーを食べて体脂肪を回復した四人のデブレンジャーが、ファトルロボの操縦室に駆けつける。


 そこには、イエローのファトルスーツだけが残されていた。



【ナレーター】

 仲間を守るために散っていったカリー・イエロー。

 デブレンジャーは、蕃紅花(ばんこうか)のごとく貴重で得がたい仲間を失った。


 カリー・イエロー、我々は君の勇気を忘れない。


 たたかえ、デブレンジャー!

 負けるな、デブレンジャー!


 敵を根絶やしにする、その日まで!



 ※蕃紅花:サフランの漢名。



 〈つづく〉

【次回予告】


 リーダーのレッド・ミートだ……。


 オレたちが操縦室へ駆けつけたときには、全てが終わっていた。


 馬鹿だよ、あいつは……ひとりで格好つけて……。


 戦いに遅れた責任を感じてたんだろう。

 そういう奴なんだよ。


 不器用で、鈍くさくて、古めかしくて…………優しくて……。


 そういえば、あいつの席の下にはレトルトカレーが山ほど入っていた。

 肉、魚、野菜、いちご――きっと、オレたちのために用意してくれてたんだろう。


 そういう奴なんだよ、あいつは。



 次回、『登場、黒き美食家!』


 お楽しみに。

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