第六話 美味、饅頭将軍!
大写しになる〈箱根グランドハイプリンス旅館〉の外観。
露天風呂、岩風呂、泡風呂、サウナなどの様々な温泉設備――豪華な食事――楽しいディナーショー。
画面が次々と切り替わる。
【ナレーター】
説明しよう!
タイアップなのだ!
浴衣姿で温泉街をそぞろ歩くデブレンジャーたち。
「これ以上食うのはもう勘弁してくれと、女将から泣きが入ったがな」
「仕方なありませんよ。僕たちが食べる量って、とんでもないですから」
「温泉饅頭いかぁっすか~」
立ち並ぶ店々から、賑やかな呼び込みの声が聞こえてくる。
「いらっしゃい! さぁどうぞ、食べてみて」
店先で蒸し上げている饅頭を差し出す男。
「どんどん食べて、はいお連れの方もどうぞ!」
勧められるままに、饅頭を試食するデブレンジャーたち。
【ナレーター】
説明しよう!
デブレンジャーの好みはそれぞれ偏っているが、饅頭くらい食べられるのだ!
際限なく、試食の饅頭を渡してくる男。
調子に乗って食べ続けるデブレンジャーの一行。
やがて、試食が百個を超えた頃――
全員が、左腕に装着したファット・ウォッチを確認する。
「ふはははは! かかったな、デブレンジャー」
着ていた半被をバサッとひるがえす試食の男。
【ナレーター】
説明しよう!
この場合の"饅頭”のアクセントは、"銭湯”と同じなのだ!
「その温泉饅頭には、体脂肪を分解する成分が含まれている。並の人間ならば、とっくに体脂肪率がゼロになっているはずだが――さすがはデブレンジャー。まだ持ちこたえているようだな」
饅頭将軍が勝ち誇ったように言う。
「このまま何もしなければ、体脂肪がなくなってしまう……みんな、変身だ!」
一同「おぅ!」
「このペースだと、スーツを取りに帰ってる間に体脂肪がなくなっちまう。レッド、頼んだぞ!」
「はぁ? 自分も忘れたくせに、よくたるんでるとかえらそーなことゆえるよね!?」
「年の功とか言わないでほしいな……これでも若く見られるってよく言われるんだからさぁ……」
「だけど、変身せずに敵を倒すなんてどうすれば……ファトルキング・オメガで踏みつぶす?」
「ダメだ、グリーン! それではこの素晴らしい温泉街を破壊してしまう!」
【ナレーター】
説明しよう!
タイアップなのだ!
「そういえば、饅頭についての話をどっかで聞いたことがあるな……」
一同「おぅ!」
デブレンジャーが、一斉に饅頭将軍に襲いかかる。
メンバーにのしかかられ、身動きが取れない饅頭将軍!
「なっ……お、おい……やめろ! うぐっ……お、重い……どけっ、どいてくれ……このままでは、あんこが出てしまう……」
レッド・ミートが、土産物のまんじゅうを饅頭将軍の口に次々とねじ込む!
「やっ、やめろっ……ひぃいいいっ……饅頭怖い! 饅頭怖いっ!」
「ああっ……やめてくれ! 饅頭怖いっ、饅頭怖いっ……まんじゅ――ぎゃああああっ!」
がくっ。
饅頭将軍の死とともに、体脂肪の減少も止まった。
【ナレーター】
デブレンジャーの活躍によって、今日も地球は救われた!
だが、宇宙人の侵略は止まらない!
たたかえ、デブレンジャー!
負けるな、デブレンジャー!
ここらで一杯、熱いお茶が怖い!
〈つづく〉
【次回予告】
F.A.T長官の嵐山だ。
誰が呼んだか〈デブレンジャー〉。
いまではその呼び名が、正式名称のようになってしまったな。
デブレンジャーの皆は、よく戦ってくれている。
やはり、私の目に狂いはなかった――
デブレンジャーになるためには〈強い胃腸〉が必要だ。
ファトルスーツの出力および活動時間は、着用者の体脂肪量に比例する。
つまり、体脂肪を溜め込みやすく、戦いで減った体脂肪を速やかに戻せる能力がデブレンジャーには求められている。
食べて、消化して、蓄える――それこそがデブレンジャーにとって最も重要な脂質、いや資質なのだ。
私もかつては……む、時間が来てしまった。
次回は、彼らが如何にしてデブレンジャーになったのかを振り返ることにしよう。
デブレンジャー、出動せよ!