第二十四話 急げ、老骨に鞭打って!
「うん……デブレンジャーの一員となって、内部から組織を破壊する――それが、私に与えられた使命」
「たとえ偽りだったとしても、みんなと過ごした日々は楽しかった。本当に仲間になれたような気がした……けれどダメなの」
「何がダメなんだよ……今からだって遅くはねぇさ。こいつらのことだったら心配するな。俺が力づくでも、君が戻ってこれるように説得するから!」
「力づくは説得じゃないよ……だけどありがとう、ブルー。でもどうにもならない……私の脳には、デブレンジャーを壊滅させるための回路が刻み込まれているから――」
「なるほどね……それでイエローの呪縛が解けるなら、解散するというのは案外いい手かもしれません」
「む……そうか! オレたちはデブレンジャーだから戦っているわけじゃないってことか」
「では、リーダー権限により、現時刻を以てF.A.T=デブレンジャーを解散する!」
一同「了解!」
イエローの目に、涙がぶわっと溢れた。
それを拭こうとした手が、ヘルメットのバイザーにコツッと当たる。
「裏切りは許さんぞ、セリーナ・アシモフ・オリヴォー!」
ベトリアン女王の金切り声。
「許せねぇのはテメェのほうだ! ヘドロだかなんだか知らねぇが、人の心をなんだと思ってやがる!」
「アンドロイドに、人の心などあるものか!」
斬鱗剣(市販のマグロ包丁)が、稲妻のごとき鋭さでブルーの手から放たれる。
「陛下、危ないっ……ぐえっ!」
女王の前に飛び出た部下の胸に、斬鱗剣(市販のマグロ包丁)が深々と突き刺さった。
ドサリと倒れる部下を一顧だにせず、
「おのれ……おのれ、おのれ、おのれ! こざかしい真似を……貴様たち、何をぼうっと突っ立っている! こうなったら、父上の到着など待ってはおれぬ! 今すぐにデブレンジャーを始末するのだ!」
千人の部下たちが、いっせいにデブレンジャーに襲いかかる!
デブレンジャーは、背中合わせに固まって応戦。
「この人数……エネルギーの切れかかったスーツでは、ちとキツいな」
「……イエローを除いて、そろそろエネルギー残量のタイムリミットです」
「そんな……私がなんとか突破口を開くから、みんなは逃げて!」
「君ひとりが頑張ったところで、ここを突破するのは無理だろうよ」
「我々の活動時間は……あと数分ってところです。ピンク、僕の後ろに隠れてください!」
息も絶え絶えになりながら、戦い続けるデブレンジャー。
しかし、スーツのエネルギーは今にも尽きかけている!
そこへ――
ドガァッ!!
岩壁を打ち破って、漆黒のマシンが突入してきた。
マットブラックの車体。
超ロングノーズのボンネットに飛び出たスーパーチャージャー。
当たるを幸い、群がる敵をはね飛ばしながら漆黒のマシンは近づいてくる。
ギャギャギャギャギャ!
タイヤをきしませながら急停車。
中から現れたのは、
ブラックの後からもう一人、白いファトルスーツ姿の人物が現れた。
飛びかかってきた敵に、強烈な蹴りを喰らわせる長官。
「敵の首領が、ニュー・ファトルキングを使って地球を攻撃しようとしている。それを阻止するんだ」
「長官とブラックの二人だけでは、この人数の敵は倒せません!」
またもや、長官の強烈なキック!
五、六人の敵がまとめて吹っ飛んでゆく!
「詳しい説明はナレーターに任せる。今は時間が惜しい、急ぐんだ!」
「それにしたって、敵の数が多すぎる! 二人を見殺しにはできません!」
わあっ、という鬨の声。
ブラックのマシンが開けた大穴から、大勢の人間がなだれ込んできた。
先頭に立つのは、中華屋の店主――張 吝山。
「〈ベトリアン派〉を打ち倒せぇ!」
口々に喚きながら、包丁やら麺棒やらを手にした集団が張に続く。
「我々も一緒に戦うぞ!」
張の手に握られた中華包丁が、ギラリと物騒な光を放つ。
【ナレーター】
地球の運命をかけた、決戦の火蓋が切って落とされた!
先行する〈ニュー・ファトルキング〉と、それを追うデブレンジャー。
急げ、デブレンジャー!
地球の危機を救ってくれ!
次回、『さらば、デブレンジャーよ永遠なれ!』
お楽しみに!
〈つづく〉
【ナレーター】
説明しよう!
エクアドルで当局に拘束されてしまった嵐山長官(※)は、昔のツテを使って何とか脱出した。
そのツテとは、かつて長官が所属していたO.B.T(おかわり防衛隊)の兵器開発責任者――甲斐 初太郎だった。
昔から嫌な予感が的中する性質だった嵐山長官は、近い将来、デブレンジャーが窮地に陥ることを予感。
甲斐と共に、チョコレートをエネルギー源とする〈カカオ・ドライブ〉の開発を進めた。
果たして、長官の予感は的中。
火星を訪れたデブレンジャーからの連絡が途絶えてしまった。
帰国した嵐山長官は、完成した〈カカオ・ドライブ〉を組み込んだ改造戦闘艦〈ファトルキング・カカオ〉に乗り込み、ブラック・ノワールとともに火星へと急行したのだった!
ちなみに、O.B.T時代の嵐山長官のパーソナルカラーは白。
コードネームは〈ホワイト・ナイト〉なのだ!
長官のファトルスーツにも〈カカオ・ドライブ〉が組み込まれており、絶えずチョコレートを補給することで、長時間の戦闘を可能にしている。
気になる長官の胃腸については、カカオポリフェノールの効果で一時的に回復しているのだ!
※第十六話『盛況、まんぷくフェス!』参照




