第二十三話 苦悩、裏切りのイエロー!
火星のマリネリス峡谷にある、〈ベトリアン派〉の本拠地――
岩肌が剥き出しになった地下の広大な広間の中央で、レッド、ブルー、ピンク、グリーンの四人のデブレンジャーが磔にされていた。
周囲を取り巻く、〈ベトリアン派〉の面々。
「――ついに捕らえたぞ、デブレンジャー!」
最前列の中央に陣取ったベトリアン女王は、喜びを隠せない様子。
「これで、私の地球侵略は成功したも同然」
「おめでとうございます、陛下」
「それにしても、陛下の作戦はお見事でしたな」
「左様……まさか新造戦艦そのものが、我らの仕掛けた罠だとは……ククク」
「その罠に、まんまと嵌まり込む地球人の愚かさよ」
「愚か者は貴様らだ!」
ベトリアン女王が、調子の良いことを言い立てる部下を一喝する。
「貴様らが無能だから、私が自ら作戦を指揮したのではないか!」
「ははっ……まことにもって申し訳なく……」
居並ぶ部下たちは、平身低頭。
「……まぁよい。この勝利を父上に報告した後、デブレンジャーの処刑を行うとしよう。ファスティング大佐、父上はまだ参られぬのか」
「はっ……ただいまこちらに向かっているとのこと。陛下には、今しばらくのご辛抱を」
「そうか。父上もさぞお喜びになられることだろう。なにしろ、目の上のこぶであったデブレンジャーを捕らえることができたのだからな」
「まことに、おめでとうございます――」
「スーツコムの近距離通信なので、傍受はされていないはずです」
「奴らの話によると、どうやらイエローの裏切りは確からしいな」
「……クソッ! 何だってあいつ、裏切りなんて……せっかく仲間になれたっていうのによ」
「ブルー、状況から考えると、彼女ははじめからスパイとして送り込まれてきたんですよ……電子頭脳の〈オムニ・ファトラス〉と一緒に」
「うるせぇな! んなことたァわかってるよ! わかってるけどもよぉ……」
「イエローの裏切りよりも、ここから逃げ出すことを考えるべきだな」
「もし逃げられたとしたら、レジスタンスにかくまってもらえるのでは?」
「いずれにせよ、脱出が先だ。みんな、ファトルスーツのエネルギーは残っているな?」
「グリーン、この戒めを破るには、どのくらいのエネルギーを消費する?」
「概算ですが……瞬間的に八割から九割のエネルギーを費やせば、なんとか脱出できると思います」
「となると、残りのエネルギーでこの場に集まった敵――千人は下らないな――を突破するのは、ちょっと厳しいか」
「女王のお父さんてゆーのがここへ到着するのが、タイムリミットだね」
「オレだって、そんなヒーローらしからぬ行動はしたくはない……したくはないが、やるしかない!」
「スポンサーさんには、とらやの羊羹を持って謝りに行かなくちゃだね」
「では僕が女王をおびき寄せますから、みんなはタイミングを見計らって、彼女を人質に取ってください」
突然、グリーンが奇声を発しながら身体をバタバタと動かし始めた。
「いやだぁ! 死ぬのはいやだぁ! 助けてください! 命ばかりはどうか! お願いします! 女王様! どうかお慈悲を……僕だけでも助けてください!」
「ええい、往生際が悪いぞ!」
ファスティング大佐が近づいてきて、
ビシッ!
手にした鞭を容赦なくグリーンに振るう。
ビシッ、ビシッ!
「うっ……うぅ……じょ、女王様……どうか……どうかお慈悲を」
ビシッ!
「ふふふ……情けない声だな。これが、我々を苦しめたデブレンジャーの姿かと思うと、良い気分だ」
ビシッ! ビシ、ビシッ!
力尽きたように、がっくりとうなだれるグリーン。
ベトリアン女王が、冷酷な笑みを浮かべながらグリーンの近くまでやってくる。
「どうした、もっと泣きわめけ! 命乞いを聞かせてみろ!」
ファトルスーツが、瞬時に体脂肪をエネルギーに変換!
戒めが破れ、自由になったデブレンジャーたちがベトリアン女王に襲いかかる!
だが――
つかみかかったレッドの手が、ベトリアン女王の身体をすり抜ける。
「そのとおり――」
ゆっくりと歩み寄ってくる、黄色いファトルスーツ姿の人影。
【ナレーター】
ヒーローにあるまじき卑怯な手を使ってまで、敵の手から脱出しようとしたデブレンジャー。
しかし、またもや彼らの前に立ちはだかった、かつての仲間。
ファトルスーツのエネルギーは、残り少ない。
絶体絶命の大ピンチに、デブレンジャーはどう立ち向かうのか!!
次回、『急げ、老骨に鞭打って!』
お楽しみに!
〈つづく〉
【次回予告】
やっほ~、ピンクだよ♥
どうもさいきん、グリーンの態度が気になるんだよね。
距離感が近いってゆうかさ。
アタシのこと気になってしょーがないみたい。
そうゆうの、なんとなく雰囲気でわかっちゃうよね?
前はそんなことなかったのに、アタシ何か勘違いさせるようなことしたっけ?
グリーンだって、アタシとレッドが付き合ってるの知ってるくせに。
まぁ、好きになっちゃったらしょーがないんだけどさ。
恋ってそーゆーもんだし。
だけど、アタシって年上しか好きにならないから、グリーンは恋愛対象外なんだよね。
カラまれるとめんどいから、だれかほかの人でも好きになってくれるといいんだけど……考えてみたら、ウチの組織って男ばっかじゃん。
イエローが入って、女子メンが増えるって喜んでたのに、敵になっちゃうんだもんなぁ……。
あ、時間だ!
とらやの羊羹、買いに行かなくちゃ!
ちぇ~んじ、ふぁとる~ぅ……お~ん!




