第二十二話 急襲、敵の火星基地!
ニュー・ファトルキングのラウンジ——
「――〈ベトリアン派〉ってのは、簡単に言えば美食や飽食を、ひいてはデブを憎む集団だ。そいつらが火星を支配している」
町中華の店主が、手にしたグラスから冷えた飲み物を啜る。
「なんだい、こりゃ?」
「初めて飲んだが、悪くないな」
「でしょ? アタシは、アイスを浮かべたフロートよりも、メロンソーダ単体のほうが好きなんだよね~」
「こういう甘い飲み物だって、〈ベトリアン派〉に見つかれば捕らえられ、最悪の場合、処刑されてしまうんだ」
「そうだ。そして奴らは、地球にまで〈無脂肪主義〉を押しつけようとしている」
「さっき、おやっさんが読んでた新聞に、俺たちの写真が載ってたな」
「ああ、我々〈反ベトリアン派〉にとって、君らは希望の星だよ」
「そんな有名なんだ? おじさん、ソーダフロートも試してみて」
店主のグラスに、ピンクがバニラアイスを浮かべる。
「アイスとソーダが接しているところ、そのシャリシャリしてるところが美味しいんだよ」
「うん、旨い。うちの店のメニューにも加えたいな」
「大手を振って店を続けるためには、〈ベトリアン派〉を倒さなければならない。頼む、あいつらをやっつけてくれ!」
◇
【ナレーター】
説明しよう!
中華料理屋のオヤジは、〈反ベトリアン派〉のリーダーだった。
彼の情報によって、敵の本拠地が火星のマリネリス峡谷にあることが判明したのだ!
一同「おう!」
マリネリス峡谷上空に浮かぶ、ニュー・ファトルキング。
…………何も起きない。
「……ダメです。通信も含めて、こちらの操作を一切受け付けません」
…………。
ニュー・ファトルキングの電子頭脳である〈オムニ・ファトラス〉は沈黙したまま。
「イエロー、そわそわしてるがどうした? トイレにでも行きたいのか?」
「さっきからずっと黙ったままだし……ほんとにヘンだよ、イエロー」
「オムニ・ファトラスの認証ログに、見覚えのないアクセスがあります……このアクセスは――内部からです!」
「というより、オムニ・ファトラス……つまり、ニュー・ファトルキングそのものが敵の――」
ズウゥゥゥ……ン!
ニュー・ファトルキングの船底が地表に接触。
ウィーーッ
操縦室のドアが開き、武装した一団が突入してきた。
立ち上がって応戦しようとするデブレンジャー。
しかし、座っていたシートに手足を拘束されてしまい、身動きが取れない。
ただひとり、イエロー・レモンを除いて――
武装集団の間を通って、イエローは逃げるように操縦室の外へと消えていった。
【ナレーター】
敵の本拠地に急襲をかけたデブレンジャー。
しかし、ニュー・ファトルキングは操作不能になり、イエローを除いた四人のデブレンジャーたちは拘束され、敵の集団に取り囲まれてしまう!
危うし、デブレンジャー!
果たして、イエローの正体は何者なのか!?
次回、『苦悩、裏切りのイエロー!』
お楽しみに!
〈つづく〉
【次回予告】
いらっしゃい!
〈火星軒〉の店主、張 吝山だ。
われわれ火星に住む種族は、かつて栄えていた古代文明の末裔だ。
その繁栄は〈カロリー絶対主義〉によって支えられてたんだが、終焉もまた蓄積しすぎたカロリーによるものというのは皮肉な話だよ。
ベトリアン大王を頂点とする〈ベトリアン派〉は、〈清らかなる無脂肪主義〉を我々に押しつけ、それを地球にまで押し広げようとしている。
私は火星のレジスタンスを率いるリーダーだが、デブレンジャーの動きに呼応して、仲間と共に〈ベトリアン派〉を打ち倒すつもりだ。
我々はきっと、好きなものを好きなだけ食べられる世の中を取り戻す!
詳しいことは、日刊火星スポーツ(火スポ)に書いてあるから、そちらを読んでくれ。
ではデブレンジャーの諸君、健闘を祈る!




