第二話 卑劣、ファットミミックの罠!
休日の歩行者天国――
「いらっしゃいマセ~、いらっしゃいマセ~、おいしいスイーツはいかがでスイ~ツかぁ!」
キッチンカーから聞こえてくる、陽気な声。
「ねぇレッド、スイーツだって! 行ってみようよ!」
甘い物に目がない苺が、秒で反応する。
【ナレーター】
説明しよう!
ピンク・スイーツの本名は、甘衣 苺なのだ!
スイーツを食べた客たちが、どんどんやせ細ってゆく!
【ナレーター】
説明しよう!
デブレンジャーは、敵の名前を言い当てるのが得意なのだ!
「あ~ま、あまあま(笑い声)……よくぞ見破った、デブレンジャー!」
謎の効果音。
正体を現す、ファットミミック。
「だってぇ……レッド、いっかいもアタシのこと名前で呼んでくれないんだもん」
「そうだっけ? だけど、ピンクだってオレのことを名前で呼ばないじゃないか」
「そうかぁ……言ってなかったか……まぁ、名前なんかどうだっていいじゃないか! オレはオレ、ピンクはピンク、それでいいだろ?」
「あ~……今はほら、地球のピンチだからさ、名前の件はまた今度ってことで――」
「いいかげんにしろ! 痴話喧嘩は戦闘が終わってからやれ!」
しびれを切らしたファットミミック。
「ほら、敵もああ言ってることだしさ、今は戦いに集中しよう、な?」
「……もうっ! 終わったら、ぜったい名前おしえてもらうからね!」
手近なビルに向かって駆け出す苺。
「おい、貴様! 善良な人々の貴重な体脂肪を奪うとは――ゆるさんッ!」
ビシィッ!
「ようやく戦う気になったか、デブレンジャー! 女を逃がし、ひとりで戦うつもりとは……敵ながらアッパレな奴――ではゆくぞ!」
「待て待て待て待て! ちょっと待て!」
ビシィッ!
「なんだよ……戦うんじゃないのか? もっとも、そっちがその気でなくとも、こっちは戦う気満々だからな――ゆくぞ!」
「だから待てと言ってるだろ、このデブ!」
「なにっ!? デブのくせに、他人をデブ呼ばわりとは……なんと卑劣な!」
「いいから、変身するまで待てって言ってるんだよ!」
「変身……あぁ、変身か。それなら早く言ってくれよ。俺さまだって鬼じゃないんだからさ。まぁ、変身したところで俺さまが勝つのに変わりはないが……あ~ま、あまあま(笑い声)」
「よぉし……チェィンジ・ファトル――オォン!!」
街中で出すには、ちょっと恥ずかしいような大声で叫ぶレッド・ミート。
同時にかっこいいポーズをキメる。
「うわぁ……見ている俺さまの方が恥ずかしくなる……鳥肌立っちゃったよ」
――三分後
「……おい、まだか!」
しびれを切らすファットミミック。
「もうちょっと……あと少しだから……」
【ナレーター】
説明しよう!
デブレンジャーは、わずか三分(※平均値です)で変身を完了するのだ!
「なぁ……いくら何でも遅くないか? ふつうさ、こういうのって0.05秒とか1ミリ秒とかで終わるだろ?」
【ナレーター】
タイトなスーツに脂肪をねじ込むから、仕方が無いのだ!
レッド・ミートの変身完了!
ちなみに、ピンクはまだ変身を終えていない。
ビシィッ!
「ホントだよ……勘弁してくれよ、こちとら時給で働いてんだよ」
「だったら、いいじゃないか。戦いが長引くほど、給料が増える」
「え……あぁ、ホントだ。おまえ、頭いいな」
「へぇ、知らなかったなぁ。俺さまはスイーツ専門だからな」
「ほぅ……ところで、貴様の店のスイーツはどれも旨そうだな? いやなに、ピンクがスイーツ好きだから、あちこち付き合わされるのよ。スイーツバイキングとかさ。はじめはイヤだったんだけど、食べ続けるうちに、だんだんスイーツの味がわかるようになってきてなぁ……舌が肥えてきたっていうの?」
「よかったじゃないか! スイーツ好きに悪い奴はいない。そもそもウチの商品は――」
気分良く話し出すファットミミック。
空に雲がわき起こり、巨大戦艦が登場!
巨大戦艦がロボに変身。
うなりを上げて振り下ろされる、巨大なロボの手。
ファットミミックは、クレープのごとくペラペラに押しつぶされた。
ロボのこぶしのすぐそばで、腰を抜かすミート・レッド。
【ナレーター】
デブレンジャーの活躍によって、今日も地球は救われた!
だが、宇宙人の侵略は止まらない!
たたかえ、デブレンジャー!
負けるな、デブレンジャー!
世界の平和は、デブが守る!
〈つづく〉
【次回予告】
よぉ、サブリーダーのブルー・フィッシュだ。
今日はまったく活躍ができなくて、腐ってるぜ。
サバの生き腐れのようにな。
それは、ここにいるグリーンとイエローも同じ思い――あれ? おい、二人共どこへ……あっ、そんな所に!
おぉい、二人ともぉ……そんなに遠くにいたら、予告にすら出れないぞぉ……おぉい!
チッ、やはり俺は一匹狼――いや、一匹鮫が似合う男さ。
では次回……あ~、とにかく強い敵が現れて、俺たちが戦って勝つ、そういう展開になると思う。
じゃぁ次回もまた、観てくれよな!
チェンジ、ファトルゥ――オンッ!!
あばよ!