第十九話 暗躍、敵の工作員!
デブレンジャーの秘密基地から電車で小一時間。
船橋駅にほど近いレンタルスペース――
オープンキッチン付きのリビングルームでは、デブレンジャーによるイエロー・レモンの歓迎会が行われていた。
テーブルの上には、大皿に盛られた料理がずらりと並んでいる。
あっという間に平らげられてしまうため、キッチンでは出張シェフが大汗をかきながら料理を作り続けていた。
「このスペアリブ、骨ごといけるな……シェフ、あと百本ほど追加してもらえますか?」
「カラアゲ、おまちどサマでぇス」
大皿に盛られた揚げ物が、シェフの手でテーブルに置かれる。
皿に添えてあった、くし切りのレモンに手を伸ばすイエロー。
ブルーが、イエローの手をガシッと押さえる。
戸惑い顔のイエロー。
「……いくら主賓とは言え、こと食に関して勝手な行動は許さんぞ!」
「ブルー、いつまでイエローの手を掴んでいるんですか。セクハラで訴えられますよ?」
ブルーが、気まずそうにイエローから手を離す。
「皆それぞれ、食事にはこだわりがあるんだ。デブレンジャーにスカウトされるくらいなんだから、君も同じだろう?」
「ん~っ、食事はエネルギーの補給っていうほうがしっくりくるかな……あ、でもこうやってみんなで食卓を囲むのは楽しいし、好きだよ」
「食べるのが好きじゃないなんて、変わってるなぁ……胃腸は丈夫なんだよね?」
「少々傷んでようが何を食べても大丈夫だし、素早く消化して体脂肪として貯蔵できるよ」
「サラダ、おまちどサマでぇス」
シェフが巨大なサラダボウルを運んできた。
レタスとトマトのサラダが、たっぷりと入っている。
「失礼なこと言わないでください。あぁ、これはおいしそうだ――」
グリーンがレタスを口に運んだ瞬間、
手にしたフォークを、テーブルに放り投げる。
「ナニカ?」
「おめがタカイ! これは、ギャクショージンです」
「ハイ、やさいにみえマスが、スベテにくでできてまス」
フラフラと部屋から出てゆくグリーン。
後ろ姿を見送るシェフの口元に、薄い笑みが浮かんでいた。
それからしばらくして、会もお開きに近づいた頃――
ビビッ、ビビッ……
各人のファット・ウォッチに、ブラックの姿が映し出された。
一同「了解!」
◇
地方の採石場では、ロボ形態のファトルキング・オメガと、巨大化した敵の侵略宇宙人――〈フォックス・ファイヤ〉とが、死闘を繰り広げていた。
物珍しげに、キョロキョロと操縦室を見回すイエロー。
【ナレーター】
説明しよう!
ファトルキング・オメガは、もともと旧ソ連が開発した月面開発用のロボなのだ!
ロボの操作は思考波で行い、その言語はロシア語のみ。
改造されたロボ――すなわちファトルキング・オメガは、日本語による音声コントロールを操作の軸とし、補助的にレバーやボタン類が搭載されている。
音声による操作指令は、F.A.T-LINKを介して軌道上の電子頭脳に送られた後、ロシア語の思考波としてロボ側にフィードバックされている。
……少々長かったようだ。
要するに、ロボを動かすためには、日本語で命令するか、あるいはロシア語で考える必要があるのだ!
【ナレーター】
説明しよう!
〈おしぼりランチャー〉とは、ファトルキング・オメガの指先から発射される超高温のおしぼりで、敵を火傷させることによって戦意の喪失を狙う武器なのだ!
「おしぼりの温度は95度もあって、普通の飲食店ならクレームものの温度なんだ。しかも、ラベンダーの香りまでついてるときた!」
「マジかよ……もう一度ためしてみるか――〈おしぼりランチャー〉発射! 発射! 発射だって言ってんだろ、このポンコツが!」
操作卓の画面はノイズ混じりだし、コントロール・レバーも三回に一回しか操作を受け付けない。
「やっていますが、どうやらプロトコルの暗号が解かれつつあるみたいで……マズイ……このままでは、ファトルキング・オメガは操作不能になってしまいます!」
「手動で回避しようと頑張っています……今思うと、パーティーに来ていたシェフが敵の工作員だったんだじゃないでしょうか……くそっ……ダメだ、追いつかれる!」
ばちん!
操縦室の照明が消え、一呼吸おいて非常灯に切り替わった。
「暗号が完全に破られました……軌道上とのやりとりが出来ません!」
動くことができないファトルキング・オメガ。
そこへ、容赦なく降り注ぐ〈フォックス・ファイヤ〉の攻撃、攻撃、攻撃!
ファトルキング・オメガの装甲が、あちこちはじけ飛ぶ。
剥き出しになったメカから火花が飛び、流れ出る潤滑脂は、まるで血を流しているかのよう――。
「ここに、昔の――つまり思考波用のインターフェースはある?」
一同の目が、イエローに集まる。
グリーンの手には、埃を被った古めかしいヘッドセット。
スイッチを入れると、〈ВКЛ〉と書かれた下の豆球に、オレンジ色の光がぼうっと点った。
グリーンが、ヘッドセットをイエローに手渡す。
ヘッドセットを被るイエロー。
――何も起きない。
イエローが目を閉じた数秒後、ファトルキング・オメガが動いた!
「いいぞ! 〈おしぼりランチャー〉で、敵がアワ食ってやがる! だが、なぜ――」
ブルーが、ひゅぅっと口笛を吹く。
ファトルキング・オメガの手に現れた光輝く巨大な剣が振り下ろされると、〈フォックス・ファイヤ〉は大爆発とともに消え去った。
【ナレーター】
思わぬ弱点が判明した、ファトルキング・オメガ。
しかし、イエローの機転によってなんとかピンチは免れた。
たたかえ、デブレンジャー!
負けるな、デブレンジャー!
パーティールームは、意外と安く借りられるぞ!
〈つづく〉
【次回予告】
よぉ、実質的にはリーダーのブルー・フィッシュだ。
いやぁ、今回はヤバかった。
なにしろロボが動かなくなっちまったんだからな!
それてぇのも、グリーンの草野郎がヘマしたせいだ。
まったく、これだから魚を食わねぇ奴はダメなんだ。
根本的に頭が悪いんだな。
DHAが足りてねぇんだよ。
だいたい、ハナから俺はあの料理人があやしいと踏んでたんだ。
……ま、ヤツが敵の工作員だと見抜けなかったのは俺も同じなんだがな。
それに比べて新入りの凄さよ、なぁ!
だってそうじゃねぇか。
俺たちみんながあたふたしてる中、ひとり冷静に動いてよ!
なかなか真似できることじゃねぇよ、あれは。
俺はもう、いっぺんに好きになっちまったぜ!
……いやその、好きになったてのはそういう意味じゃなくてさ……仲間としてだよ、仲間として。
おっと、時間だ。
次回の予告は、と――
えぇと……グリーンをせっついて、ロボの弱点をなんとかする。
そんな感じだ、たぶん。
じゃぁ来週もまた、観てくれよな!
チェンジ、ファトルゥ――オンッ!!
あばよ!




