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まんぷく戦隊 デブレンジャー  作者: ものうちしのぎ


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第十六話 盛況、まんぷくフェス!

【登場人物とアイコンの対応】

 挿絵(By みてみん) レッド・ミート

 挿絵(By みてみん) ブルー・フィッシュ

 挿絵(By みてみん) グリーン・ベジタボー

 挿絵(By みてみん) ピンク・スイーツ

 挿絵(By みてみん) 嵐山長官

 挿絵(By みてみん) ブラック・ノワール

【ナレーター】

 ファトルキングのキッチンカー・モードが、予想を超えた大人気!


 オモチャに付属している食材の他にも、世界各国の様々な料理のミニチュアが、ぞくぞくと発売されることが決まったのだ!



 江戸川の河川敷に停まっている、キッチンカー形態(モード)のファトルキング。


 デブレンジャー主宰の〈まんぷくフェス〉は、休日の家族連れで賑わっていた。


挿絵(By みてみん)「いらっしゃい、いらっしゃい! 美味しい串焼きはいかがですか~」


挿絵(By みてみん)「新鮮なイカやホタテを使った海鮮焼きそば! 冷えたビールもあるよぉ! さァ、買った買ったァ!」


挿絵(By みてみん)「え~、冷やしきゅうりは如何ですか……さっぱりしてておいしいと思います……皆さんご存じですか? きゅうりは低カロリーで水分が豊富なんです。暑い夏にこそ、ピッタリの野菜……きゅうりに割り箸を差して冷やしただけのこの商品。なんと一本八百円……お買得ですね」


挿絵(By みてみん)「グリーン、もっとおっきな声出さないと、お客さんに聞こえないよ」


挿絵(By みてみん)「こういうの苦手なんです……それに、なんだか詐欺を働いているような気がして……」


挿絵(By みてみん)「お祭りの屋台なんて詐欺みたいなもんだよ? 雰囲気と勢いで売るんだから、威勢良くしないと。ブルーを見習いなさいよ」


挿絵(By みてみん)「はぁ……それにしても、値付けが高すぎませんか? 冷やしきゅうりが八百円って……」


挿絵(By みてみん)「ちょ~かんがエクアドルで足止めくらっちゃって、私たちが活動費を稼がないとダメだってこと、わかってるよね?」


挿絵(By みてみん)「わかってますけど……長官もどうかと思いますよ。だって、チョコレートを山ほど買って税関で止められて、そしたら財布が盗まれていたことが判明して……極めつけはパスポートが偽造だってことがバレちゃったんですよ?」


挿絵(By みてみん)「チョコレートに関しては、アタシが頼んだことだから、あんま責めないであげて」


挿絵(By みてみん)「……ピンクが?」


挿絵(By みてみん)「エクアドルと言えば、チョコレートしか思い浮かばないでしょ?」


挿絵(By みてみん)「すごい偏見ですね。他にも、ガラパゴス諸島とか赤道記念碑とかあるじゃないですか」


挿絵(By みてみん)「そんなの誰も知らないよ」


挿絵(By みてみん)「……それで、チョコレートをどのくらい買えば、税関で止められるんですか」


挿絵(By みてみん)「三十万トンくらいかな」


挿絵(By みてみん)「よく買えましたね」


挿絵(By みてみん)「おかげで、組織の予算を使い切っちゃったって」


挿絵(By みてみん)「……この窮状、あんたのせいじゃないか」


挿絵(By みてみん)「てへっ♥」


挿絵(By みてみん)「おかげで僕たちは、こんな仕事まで――」


挿絵(By みてみん)「あっ、お店ほったらかしだった! グリーンもちゃんと声出していこ~っ!」


挿絵(By みてみん)「……逃げた」


 持ち場に戻ったピンクは、店先に山と積まれていたスイーツの在庫が消えていることに気がついた。


挿絵(By みてみん)「えっ……なんで!? あんなにあったスイーツが空っぽなんだけど!?」


挿絵(By みてみん)「さっき、大口のお客さんが来て、ぜんぶ買ってくれたんだ。ピンク、持ち場を離れてどこへ行ってた?」


挿絵(By みてみん)「グリーンにアドバイスしてただけ――ああっ!」


挿絵(By みてみん)「どうした!?」


挿絵(By みてみん)「どーして、全部売っちゃったわけ!?」


挿絵(By みてみん)「買うって人がいるんだから、売るに決まってるだろ」


挿絵(By みてみん)「それにしたって、半分は取り分けておいてくれたっていいじゃん!」


挿絵(By みてみん)「そうか……そこまで気が回らなかった。ピンクは、多くの人においしいスイーツを味わってもらいたかったんだな」


挿絵(By みてみん)「違うよ! 売れ残りを食べようと思って楽しみにしてたのに!」


挿絵(By みてみん)「……半分も?」


挿絵(By みてみん)「あぁ……こんなことなら、あんま美味しくないスイーツを仕入れとけば……そしたらぜったい売れ残るから、後でそれ食べられたのに……」


挿絵(By みてみん)「ピンク、君は何を言って――むっ!」


 敵の気配!


挿絵(By みてみん)「出たな、グルテン伯爵!」

 ビシィッ!


挿絵(By みてみん)「それ、オレの台詞……」


挿絵(By みてみん)「私のスイーツを買い占めたのは、伯爵――アンタね!」


「その通りだ」

 グルテン伯爵は、余裕の笑み。


挿絵(By みてみん)「この度は、お買い上げ誠にありがとうございます。売上げは全て恵まれない人々に寄付させていただきますので――」


 ぺこり。



【ナレーター】

 説明しよう!

 恵まれない人々とは、活動予算が不足してるデブレンジャーを意味しているのだ!



挿絵(By みてみん)「それはそれとして――伯爵って糖質オフ生活してるんだよね? だったら、スイーツなんてどーせ食べないんだから、肉とか魚を買い占めればいいのに!」


「これから買い占めようと思ってたのだ……早々(はやばや)と正体を見破られてしまったのだから、仕方あるまい」

 残念そうなグルテン伯爵。


挿絵(By みてみん)「はぁ? 伯爵みたいな格好してるから悪いんでしょ!」


「伯爵だから、あたりまえだ!」


挿絵(By みてみん)「あっ、そうか」


挿絵(By みてみん)「納得してる場合か! せっかくのフェスティバルを台無しにするとは、許せん!」


「……勝手に私を敵と決めつけて、焦って戦いを挑んできたのは君たちではないか」


挿絵(By みてみん)「……えっ?」


「私は無駄な争いを好まない。だから、まず君たちの売り物を買い占めて、フェスを終わらせた後、ゆっくりと勝負に取りかかろうと考えていたのだ」


挿絵(By みてみん)「売れればいいというものではない! このフェスは地域貢献も兼ねているんだ!」


挿絵(By みてみん)「……えっ?」


挿絵(By みてみん)「……どうも、意思の疎通がうまくいっていないようだな。ピンク、今朝のミーティングには君も参加しただろう」


挿絵(By みてみん)「したはしたけど……な~んにも聞いてなかったし」


挿絵(By みてみん)「どうでもいいだろ、地域貢献とか。おい、伯爵!」


「なんだ」


挿絵(By みてみん)「有り金を出せ」


「何故だ」


挿絵(By みてみん)「俺たちの売ってるものを買い占めるはずだったんだろ?」


「ああ」


挿絵(By みてみん)「だったら、金を置いていけよ」


「品物は届けてくれるのか?」


挿絵(By みてみん)「欲しいのか?」


「いや、いらん」


挿絵(By みてみん)「なら、金を置いていくだけでいいだろう」


「何故だ」


挿絵(By みてみん)「わからん野郎だな! 俺たちは金が欲しい、お前は品物が要らない――ならば金を置いて、とっととここから立ち去れば丸く収まるだろう!」


「そうしたら、私だけが損をしてしまうではないか」


挿絵(By みてみん)「持って行ったって、どうせ食わねぇんだろ?」


「あたりまえだ」


挿絵(By みてみん)「だったら――」


挿絵(By みてみん)「待て、ブルー」


挿絵(By みてみん)「なんだよ」


挿絵(By みてみん)「周りをよく見ろ」


挿絵(By みてみん)「あぁ?」


 見れば、彼らの周りには人だかりが。


挿絵(By みてみん)「この状況――俺たちが伯爵をカツアゲしているようにしか見えないぞ」


挿絵(By みてみん)「そいつは……」


挿絵(By みてみん)「みなさん、ここは危険です! ブルー、グリーン、ピンク、地域の皆さんを早く安全な場所へ!」


 一同「了解(ラジャー)!」



 小一時間後――



挿絵(By みてみん)「ふぅ……どうやら野次馬どもを散らし終わったぜ」


挿絵(By みてみん)「誤解を解くのが大変だったんだから」


挿絵(By みてみん)「記憶混乱ウェーブを()いておきましたから、我々の悪行が広まることはないでしょう」


挿絵(By みてみん)「グリーン!」


挿絵(By みてみん)「スミマセン、口が滑りました」


「……終わったか?」

 デブレンジャーの用意したブルーシートの上に寝そべっていた伯爵が、よっこらしょと体を起こす。


挿絵(By みてみん)「待たせたな!」

 ビシッ!


「ではやるか!」


挿絵(By みてみん)「いや待て!」

 ビシッ!


「なんだ、まだ何かあるのか」


挿絵(By みてみん)「この河川敷では、街に近すぎる。騒音だの爆発だのがあれば、秘密基地の方に苦情が殺到するからな。いつもの採石場に移動するぞ」


「どこにあるんだ、その採石場とやらは」


挿絵(By みてみん)「知らねぇのかよ?」


「私は組織でも少々浮いた存在なのでな」


挿絵(By みてみん)「どうやら、敵の組織は連携がうまく取れてないようですね」


挿絵(By みてみん)「待って――地図をあげる」



【ナレーター】

 説明しよう!

 よく使う場所なので、地図の用意があるのだ!



「……ちと遠いな。馬車で三日ほどかかる見当だ」


挿絵(By みてみん)「そんなにかかるもんかよ!」


「遠出をするには、いろいろと準備がある」


挿絵(By みてみん)「まどろっこしいな……そうだ、ファトルキングに乗せてやるから、一緒に行こう」


「いいのか?」


挿絵(By みてみん)「席もひとつ空いているし、そのほうが効率がいい。みんな、いいな?」


挿絵(By みてみん)「俺はかまわねえぜ」


挿絵(By みてみん)「アタシも別に」


挿絵(By みてみん)「僕は賛成しかねますね。仮にもこいつは敵ですよ? その敵をファトルキングの内部に引き入れるなんて、情報漏洩の観点からも危険すぎます」


挿絵(By みてみん)「……イエローなら何て言うかな」


挿絵(By みてみん)「え……」


挿絵(By みてみん)「もし伯爵が悪さをしたら、イエローならどうすると思う?」


挿絵(By みてみん)「それは……スパイスを目玉にすり込んでやる! とかなんとか言うはずです」


挿絵(By みてみん)「そういうことさ」


挿絵(By みてみん)「……はぁ」



 ゴウンゴウンゴウン……


 ファトルキングの操縦室。

 イエローの(シート)に座る、グルテン伯爵。


挿絵(By みてみん)「乗り心地はどうだ、伯爵」


「……うむ……馬車と違って、ふわふわとして……うぉえっぷ!」


挿絵(By みてみん)「乗り物酔いですか……そこのボタンを押すと、窓が開いて風が入ってきますよ。


「すまない……こういう乗り物には慣れていなくて……このボタンか――」


挿絵(By みてみん)「ああっ、それ違――」


 パカッ!


 伯爵の座っていたシートがガタッと前傾、それと同時に床にぽっかりと穴が空いた。


「うわあああぁぁぁっっ!」


 ……パタン、スッ。


 床が閉じ、シートが元通りの位置に戻る。


挿絵(By みてみん)「…………」


挿絵(By みてみん)「…………」


挿絵(By みてみん)「…………帰ろっか?」


挿絵(By みてみん)「よし、基地へ戻るぞ!」


 一同「おぅ!」



【ナレーター】

 高度一万メートルから落ちたのでは、ひとたまりもない。

 グルテン伯爵は、戦いの空に散っていった。


 それは亡きイエローの意思だったのだろうか――


 たたかえ、デブレンジャー!

 負けるな、デブレンジャー!


 最近の屋台は値段が高すぎて、気軽に焼きそばも食べられないのだ!



 〈つづく〉

【次回予告】


 ボンジュール、ブラック・ノワールだ。


 今回は私の出番がなかったので、こちらに登場することにした。


 夏の暑いさなかに屋台で焼きそばを焼くなど、私には耐えられそうもない。

 ゆえに、リーダー権限で病欠とさせてもらった。


 ところで、私は美味しいものしか食べないわけだが、美味しいもの=高級なものとは限らない。


 先ほど焼きそばの話が出たが、世の中には美味しい焼きそばだってある。

 たとえば、焼きそばパンの焼きそばだ。


 伸びきった麵に薄いソース。

 口に含むと喉に詰まりそうになる、あの感じ。


 ――悪くない。


 屋台の焼きそばには、懐かしい思い出もある。

 店主がサービスだと言って、ソースをどんどん追加するのだ。


 そんなことをしたら、味が濃くなりすぎてしまう……なにがサービスなものか!

 少年時代の私は、ハラハラしながらその様子を見守ったものだ。


 だが、できあがった焼きそばは味が濃いどころか、むしろ薄い!


 さては、あのソース――あのソースの正体は、ほぼ色の付いた水だったのだ!

 からくりに気づいたのは、大人になってからのことだった。


 そんな屋台の焼きそばだって、悪くない。


 美味しいものとは、すなわちおいしく感じるものだ。

 つまりは食べる者の主観だ。


 美味しいと感じるから美味しい。

 それで良いじゃないか。


 では、次回もまたこの番組を応援して欲しい。


 チェンジ、ファトル……オン!


 ア ビヤント!

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