第十三話 驚愕、ブラックノワールの秘密!
地方の採石場に、敵の声が聞こえたような気がした。
【ナレーター】
説明しよう!
近隣住民に配慮しているのだ!
「――聞け、そこのデブたちよ」
宇宙侵略者〈スレン・ダーイン将軍〉が、修行僧のようにあばらの浮いた胸を誇らしげに反らせる。
「……まだ何も言っていない」
「記録によると、我々デブレンジャーは〈饅頭将軍〉と〈バイキング・ヘル将軍〉の二人と戦っています」
「うるさい! 何人いたっていいだろ!」
「勝手に決めるな! 拙者は一兵卒から苦労して将軍まで上り詰めた実力者なんだぞ」
「そういえば、いつも単独で責めてくるな……ということは――」
「かわいそうに……今からでも遅くはないぞ、〈スレン・ダーイン将軍〉! 改心して、オレたちの仲間になれ!」
「魚なんて生臭いのキライだよね? 仲間になったら、スイーツビュッフェに連れて行ってあげてもいいんだけどな~?」ちらっ、ちらっ。
「あったりまえじゃん! リーダー手当が何のために出てると――あっ……ゴメン」
「しかし、敵を寝返らせるための必要経費ですからね。そこはブラックに立て替えておいてもらって、後日あらためて長官に請求するという手もあります。もちろん、領収証はしっかりともらっておいてください」
「おい」
「そういえば、ブラック……あなたのおかげで、我々の身体能力がアップしました。平メンバーを代表して、礼を言います」
「またまた~っ、ブラックって照れ屋さんなんだよね~♥ めちゃくちゃ歩かされたのは正直ムカついたけど、おかげで敵に勝てたんだし、結果オーライってやつ?」
「おい、拙者を無視するな」
「チッ、黙っているところをみると、やはりオレたちをただ虐めたかっただけのようだな」
「おいっ!」
無視され続けて、イラついた〈スレン・ダーイン将軍〉が、たまらず大声を出す。
「近隣住民の皆さまに……迷惑だ・ろ・う・がぁ! 尾びれキック・ダッシュ!」
バキッ!
トレーニングによって素早さを増したブルーの尾びれキック・ダッシュ。
だが、確かに技が当たったはずなのに、苦しんでいるのは敵の〈スレン・ダーイン将軍〉ではなく、ブルーの方だった!
「ブルーにこれだけダメージがあるということは、少なくとも相手にも同じだけの力が加わっているはず……なのに、なぜブルーだけが苦しんでいるんだろう……」
「あの体格でか? 骨と皮ばかりじゃないか……ちょっと小突いただけで、バラバラに折れてしまいそうだ」
「硬いとか柔らかいとか、そんなんじゃなかった。たとえて言うなら、鏡だ」
ブルーが、ぎらりと腰の剣――斬鱗剣を抜く。
「そ、そう……鏡のように攻撃を跳ね返したってことですよね、ね?」
後方でひとり、ガレットをつまみながら白ワインを嗜んでいたブラックが静かに言う。
「リーダーの座を奪った罪滅ぼしのつもりかよ。レッドに花を持たせようって寸法だな?」
「レッド、危ないよ! あいつ、こっちの攻撃をハネ返しちゃうんでしょ? レッドが行っても勝てないよ」
「たしかに……レッドとブルーの違いと言えば、色の他には臭いだけ……そうか! 臭いだ! 臭いが強いと攻撃が跳ね返るんだ!」
ビシィッ!
クラウチングスタートの姿勢から、飛び出すレッド。
「バカめ、さっきの魚臭い男と同じ目にあわせてやる――ぷぽぉっ!」
「な、なぜだ……あらゆる攻撃を跳ね返す拙者の〈無脂拳〉が――ぽぺぇっ!」
「一撃ごとに骨が折れているぞ、〈スレン・ダーイン将軍〉――ミート・パンチ・乱れ打ち!」
「うべっ……ひぶっ……ぶぼぺぺぺぺっ!」
どごぉーーーーん!!
とどめの一撃。
透過光に包まれながら、彼方へと吹っ飛んでゆく〈スレン・ダーイン将軍〉!
バックには、宙を舞う無数の脂の粒が、まるで星空のようにキラキラと輝いている。
ざっ……。
ブラックの足が画面に入る。
「それは、君のスーツが特別製だからだ。レッド……いや、赤嶺 羅亜怒」
「なかなかアレな……ゲフン! いやその……珍しい名前ですね」
「それは後回しだ。まずは、レッドが着ているファトルスーツの説明をしてやろう」
ブラックが(ワインを飲みながら)語ったところによると、レッドの着ているファトルスーツは、赤嶺家に代々受け継がれてきた、由緒正しい脂鎧というものらしい。
着用者の身体からにじみ出た脂がスーツに蓄積され、それがわずかずつ表面に浸潤することによって、受けた攻撃を滑らせて逸らす能力を有しているのだ。
【ナレーター】
先に説明されてしまったのだ!
「しかし、それでは敵の攻撃を逸らすのみ! オレの攻撃が当たったのは、どういうわけですか!?」
【ナレーター】
説明しよう!
放送時間というものがあるのだ!
そう言い残すと、ブラックはファトルキングへと入っていった。
ゲロロロロォンッ……ゲロッ、ゲロッ、ゲロッ、ゲロッ……ゲロロロロロロォンッ……ゲロロロロロロォンッ……
今にも止まりそうに回る野太いエンジン音。
ファトルキングの格納庫の暗闇から、染み出るように現れたマットブラックの車。
超ロングノーズのボンネットに飛び出たスーパーチャージャー。
ヒュオオオオオン――
スーパーチャージャーがうなりを上げ、マフラーから炎が吹き出す。
幅広のタイヤが激しくホイルスピンを始めた。
ギャギャギャギャギャ!
タイヤのトレッドが地を噛んだ途端――
ブルーのそばをかすめるようにして、車は尻を振りながら走り去っていった。
「あれがブラックのマシン……どことなく、レッドのマシンを彷彿とさせるぜ……」
【ナレーター】
レッドの本名、そして特別製のファトルスーツの秘密が判明した――
だが、代々受け継がれてきた脂鎧とはいったい何なのだ!?
そういうのは、支給品じゃないのか!?
謎が謎を呼ぶ、謎展開!
そう――作者だって何もわかっていないのだ!
〈つづく〉
【次回予告】
よぉ、もうすぐリーダーのブルー・フィッシュだ。
今回は驚いたなぁ……なにせ、レッドの本名が赤嶺 羅亜怒だてんだからな。
ま、らしいっちゃ、らしいよな。
さほど意外でもないっていうか――
それよりも、オレたちだって知らなかったレッドの本名やら特別なファトルスーツのことを知っていたフランス野郎……あいつ、ホントに何者なんだ?
前回の予告?
ああ、あんなの信じる方がバカだっての。
そもそも、ハナからいい加減だったろ?
毎回、やっつけで書いてんだよ。
言わせんな。
さて、次回の予告だが……まぁ、そんなのいいじゃねぇか、な?
どうせウソ並べるだけなんだから。
そういえば、今回は帰りにファトルキングを運転させてもらったんだよ!
愛車のバイクも好きなんだけどさ、やっぱデカいメカはいいよ、いい!
思いっきりアクセル踏んだら、あっというまに月まで行っちまってよ……長官にこっぴどく――おっと、時間だ。
じゃぁ来週もまた、観てくれよな!
チェンジ、ファトルゥ――オンッ!!
あばよ!




