第十二話 激白、レッド・ミート!
「どーだ、どーだ、どーーだぁ! 俺さまのこのスピード、デブには付いて来れまい!」
超高速の反復横跳びのような動きをくり返しながら、敵の侵略者〈ゼロカロ・スリム〉がデブレンジャーを挑発する。
気合いと共に斬鱗剣を振り下ろすブルー。
しかし、剣は空を切る。
「ふははは! そんなスローな技など喰らうものか!」
「まずいぞ……さっきから、オレたちの攻撃が一度も当たっていない」
【ナレーター】
説明しよう!
ファトルスーツのエネルギーは着用者の体脂肪量に比例する。
デブレンジャーの平均活動時間はおよそ五分しかないのだ!
「ブラック、このまま手をこまねいていては、我々は敗北してしまいます」
キッチンカーのそばでワインを楽しんでいたブラックが、面倒くさそうに答える。
「口答えするな! 私が足を使えと言ったなら、その通りに動くんだ」
「足技なら俺に任せておけ! 尾びれキックで仕留めてやるぜ――尾びれキィック!」
すかっ。
当たらない!
「どういうことだよ! 足を使うんじゃねぇのか、フランス野郎!」
「……ひょっとして、ブラックはフットワークを使えと言っているんじゃ――」
「馬鹿な! デブに動き回れと言うのか! ただでさえ、膝に爆弾を抱えているんだ。スピードを武器にしている〈ゼロカロ・スリム〉に敵うわけがない!」
〈ゼロカロ・スリム〉の動きに合わせるように、ピンクが反復横跳びを始める。
「あれっ……なにこれ、なにこれ! アタシ、けっこう動けんじゃん!」
「ま、まさか……そんな……デブが俺さまの動きに付いてこれるはずが――」
「だが、ピンクが素早く動けているのも事実……オレたちもピンクに続くんだ」
ピンクに倣って、反復横跳びを始めるレッド、ブルー、グリーン。
それを横目に、ブラックは空になったワイングラスに赤ワインを注いでいる。
「ファトルキングに搭載されている測定器によると、我々と〈ゼロカロ・スリム〉の速度はほぼ互角です!」
「よし、敵の動きを止めるぞ! ピンク、グリーン、俺の合図で奴の進路に立ちはだかれ――いまだ!」
レッド、ピンク、グリーンが〈ゼロカロ・スリム〉の手足をがっちりと押さえ込む。
「うぬっ……は、離せっ!」
振りほどこうともがく〈ゼロカロ・スリム〉に向かって、ブルーが突進!
「尾びれェ……キィック!!!!」
ブルーの強烈な尾びれキックが炸裂!
「な、なんで……デブが……」
ばたっ。
ゼロカロスリムが倒れた後も、デブレンジャーたちは呆然とその場に立ち尽くした。
ゴゴゴゴゴ……
早くもキッチンモードから戦艦モードへとチェンジした〈ファトルキング〉が、空の向こうへと消えてゆく。
岩場の影に隠すように停めてあった、各自のマシンがこつぜんと姿を消していた。
「ビーコンの表示は、全マシンがファトルキング内にあることを示しています」
「あの野郎……嫌がらせにも程があるぜ! 今度という今度はかんべんならねぇ!」
「いや……そういうわけじゃないが……何か引っかかる。どうしてブラックは、我々が素早く動けることを知っていたのだろうか……」
「そーいえば、ブラックに言われて、はじめて気づいたんだよね」
グリーンが、左腕に装着した大型端末のディスプレイを指差す。
「〈ファット・ウォッチ〉は、我々の行動を逐一記録しています……これが、ここしばらく、我々が歩いた距離と歩数――こっちが、我々の敏捷性の上昇カーブ……このふたつ、相関しているとは思いませんか?」
「確かに……つまり、ブラックは意図的に我々を置いてけぼりにし、長距離を歩かせることによって敏捷性をアップさせたと……」
「んなわけあるかよ! あいつは単に意地悪でやってるに決まってんだ!」
「だけど……ブラックはいまリーダーなんだから、トレーニングするように私たちに命令するだけでいいはずじゃん」
「……言われたからといって、我々が素直にトレーニングをすると思うのか?」
「……しねぇな。トレーニングは嫌いだし、何よりあいつに命令されたら、なおさらやりたくねぇ」
「そういうことだ。ブラックは我々の戦闘力を上げるために、あえて憎まれ役を買って出たんだよ」
「んなわけあるかよ。さっきから何度も言ってるように、偶然だよ、偶然!」
「しかし、我々の敏捷性がアップしたのは事実です。これは認めないといけないと思いますよ、ブルー」
しゅばっ!
しゅばっ!
しゅばっ!
何度やっても、ブルーの尾びれキックはグリーンに当たらない。
ブルーがさっさと歩き始める。
「それだけじゃありません……彼はブラックに対しても、認識を改めたんだと思います」
【ナレーター】
意図してなのか、そうではないのか――
とにかく、ブラックに置いてけぼりにされた効果で、デブレンジャーたちの素早さはアップした。
果たして、ブラック・ノワールとは何者なのか!?
謎に包まれた彼の正体が、次回ついに解き明かされる!
〈つづく〉
【次回予告】
やぁ、みんな。
デブレンジャーの元リーダー、レッド・ミートだ。
前回の予告で、オレの過去がわかるとか言っていたが、あれはウソだ。
世の中には、そういうことはたくさんある。
オモチャの発売日なんかも、ウソばっかりだ。
とくに、海外物の予定日など全くあてにならない!
そのくせ、金だけは先にしっかり取るんだから、たまったもんじゃない。
いったい、誰がこんな世界にしたんだ!
――侵略宇宙人よりも恐ろしいのは、人間なのかもしれないな……。
それでは次回、『驚愕、ブラックノワールの秘密!』
来週もまた、観てくれよな!
チェィンジ・ファトル――オォン!!




