第十一話 爆食、バイキング・ヘル将軍の罠!
毎度おなじみ、地方の採石場――
敵の侵略宇宙人〈バイキング・ヘル将軍〉とデブレンジャーの間で、静かな死闘がくりひろげられていた。
【ナレーター】
説明しよう!
爆発音などで近隣住民から苦情が来ているのだ!
〈バイキング・ヘル将軍〉のバイキング攻撃によって、バイキング地獄に囚われてしまったデブレンジャーたち。
次々と繰り出される美味しい料理に、舌鼓を打たずにはいられない!
「……くそっ……このミートローフがうますぎて、食べるのをやめられない」
「サバの味噌煮とは素朴な……むっ、骨まで柔らかいのは当然だが、わずかに臭みを残して……しまった! はっ、箸が……箸が止まらないッ!」
「まさか、グラスフェッドのズッキーニがここに……!? 皮までおいしい……あぁ……至福……」
「はわわ……ピエール・エルメ系のパティシエが監修してる! この口どけ、マカロンじゃなくてイスパハンだぁ♥」
「うわはは……そうだ、喰え! 喰え! もっと喰え! 喰って喰って、喰いまくれ、デブレンジャー!」
罠に嵌まったデブレンジャーに気をよくした〈バイキング・ヘル将軍〉が、テーブルにどんどん料理を追加してゆく。
仲間が料理をむさぼるなか、腕組みをしたまま何も食べようとしないブラック。
「貴様、まったく料理に手を付けていないではないか!」
「なんだと!?」
「聞こえなかったのか……ならば、もういちど言ってやる。ここに並んでいるのは料理ではなく、生ゴミだ!」
「聞き捨てならんな……旨いか旨くないか、食べてみなくてはわからないだろう!」
「こいつ……だったら、無理矢理にでも食べさせてやる――ゼロカロ・ウェーブ!」
〈バイキング・ヘル将軍〉が手にした杖から発するゼロカロ場が、ブラックの体脂肪をどんどん奪ってゆく。
左腕に装備したファット・ウォッチの表示が、みるみるうちに下がってゆく。
急激に体脂肪を失って、ブラックの足元がふらつく。
がくっ――
ブラックが地面に片膝をついた。
「ブラック、ひとまず食べろ! これは敵の罠かもしれないが、ひとまず食べて体脂肪を回復させるんだ!」
口いっぱいにチキン南蛮を詰め込んだまま、くぐもった声でレッドが叫ぶ。
「意地張ってないで食えよ、フランス野郎! この大トロなんて、脂が乗って最高だぞ!」
「ブラック! 森のバター、アボカドを食べて体脂肪を回復してください!」
「甘い物は別腹だからだいじょぶだよ! 見てよこのタルトタタン――キャラメリゼが二段階に仕込まれてるんだよ? 食べなきゃ一生後悔するって!」
「き、君たちこそ、食べるのをやめろ……いくら君たちがバカ舌で、その生ゴミ美味しいと感じたところで、それは敵の罠だ……」
「そろそろ頃合いか……デブレンジャーの諸君、デザートはどうかな?」
ニヤリと笑った〈バイキング・ヘル将軍〉が、何の変哲もないチョコレート・ケーキの皿を配り始める。
「い、いかん……それを食べては――」ぜぇぜぇと荒い呼吸、苦しそうなブラック。
【ナレーター】
説明しよう!
デザートのチョコレート・ケーキを食べると、デブレンジャーの内臓は破裂してしまうのだ!
レッドが腰のベルトから外した容器を、ブラックに向かって投げる。
ぱしっ!
震える手で、なんとかその容器を掴んだブラック。
「いま、動けるのはあなただけだ……それを飲んで、体脂肪を回復してくれ……そして、あいつを倒してくれ!」
ブラックが手にした透明なポリエチレンの容器には、白いペーストがいっぱいに詰まっていた。
「僕はベジタリアンですからね……こんな動物性脂肪がたっぷりなケーキなんて……あれっ……な、なんて美味しそうなケーキなんだ……いくらベジタリアンだって、この誘惑に勝てるはずがない……」
「地味~なケーキ……だけどコンビニのケーキだって、それはそれでおいしいんだよねぇ♥」
「ブラック! 命令するだけじゃ人はついてこないぞ! リーダーなら自ら行動し、手本を示せ!」
ラードの容器を投げ捨てようと振り上げたブラックの手が空中で止まった。
まじまじと容器を見つめた後、ブラックは容器の中身を一気に飲み干した。
ラドチュッチュ!!
たちまち、体脂肪を回復するブラック。
変換されたエネルギーが、ファトルスーツを駆け巡る。
「ノワール・パルドン――黒の赦し」
神速で繰り出されたブラックの手刀が、〈バイキング・ヘル将軍〉のみぞおちに深々とめり込んだ!
「ぐへっ……」
ブラックが飛び退くと同時に、〈バイキング・ヘル将軍〉は爆散した。
爆発はごく小規模なものだった。
【ナレーター】
近隣住民に配慮したのだ!
敵の消滅によって攻撃が止み、デブレンジャーたちは正気を取り戻した。
ゴゴゴゴゴ……
空を見上げれば、ブラックを乗せたファトルキングが飛び去ってゆくところだった。
【ナレーター】
説明しよう!
毎回、デブレンジャー・メカを画面に登場させなければならない決まりなのだ!
スポンサーの意向には逆らえないのだ!
「グリーンがタクシー呼んでるからへーきだよ。ねぇ、グリーン?」
「……呼んでません……まさか今回も、帰りの足がないとは思わなかったので」
「ピンク、基地まで歩こう。敵の攻撃で過剰に増えてしまった体脂肪を消費する必要がある」
【ナレーター】
プライドを捨てラドチュッチュしたブラック・ノワールの活躍によって、辛くも勝利したデブレンジャー。
だが、敵の攻撃は苛烈さを増してゆくばかり!
果たして、新体制のデブレンジャーはそれに太刀打ちできるのか!?
たたかえ、デブレンジャー!
負けるな、デブレンジャー!
バイキングは、元を取るとかそういうことじゃないのだ!
〈つづく〉
【次回予告】
きゃほっ! スイーツビュッフェだ~い好きなピンクだよ♥
今回の敵は……ナントカ将軍だっけ?
あの人、サイコーだったな。
ブラックは罠とか食べるなとかゆってたけど、そんなのカンケーないし。
おいしければ正義なんだよね~。
だから途中で将軍さんがやられちゃったとき、アタシちょっと泣いちゃったもん。
がっかりしすぎて。
べつに将軍のことは知らないからど~でもいいんだけど、スイーツがなくなっちゃったのが悲しかったんだ。
……はぁ、もう次回の予告?
めんどくさいなぁ……わかった、わかりました!
ちゃんとやるから、お給料下げるとかゆわないで!
ふぅ……次回はレッドの過去がわかるらしいよ。
そういえばアタシ、レッドと付き合ってるけど、あのヒトのことな~んにも知らないんだよね。
名前だって、まだ教えてもらってないし……約束したのに、ヒドイと思わない?
それでは次回、『激白、レッド・ミート!』
お楽しみにね♥
ちぇ~んじ、ふぁとる~ぅ……お~ん!




