第十話 暴君、新たなリーダー!
地方の採石場で戦うデブレンジャー。
相手は筋肉宇宙人の〈プロテ=イン〉。
両手に持ったダンベルハンマーを振り回し、デブレンジャーを窮地に追い込む!
「――おい、ブラック! 食事は戦闘前に済ませておけと言ったはずだ!」
〈プロテ=イン〉の身体をぶん殴りながらレッドが叫ぶ。
〈プロテ=イン〉は余裕の表情。
「効かぬなぁ……俺の体脂肪は三パーセント! 筋肉の鎧に覆われている……そんなパンチなど、毛ほども効かぬわ」
巨大なキッチンカーの前にしつらえた豪華なテーブルセットで、フランス料理のフルコースを優雅に味わうブラック。
【ナレーター】
説明しよう!
巨大戦艦〈ファトルキング〉は、キッチンカーモードも備えているのだ!
数百キロはありそうなダンベルハンマーが、慌てて引っ込めたピンクの頭上をかすめてゆく。
飛んできたブーメランパンツ・ブーメランを〈斬鱗剣〉で斬り払うブルー。
【ナレーター】
説明しよう!
ブルーの個人武器である〈斬鱗剣〉は、かっぱ橋で購入したマグロ包丁なのだ!
〈プロテ=イン〉の攻撃は止まらない。
プレート手裏剣をまともに喰らったグリーンが、ブラックのいる方へと吹っ飛ばされる。
わずかに体をひねり、飛んできたグリーンの身体を避けるブラック。
背後で、潰された蛙のような声をあげるグリーン。
ナプキンで口を拭きながら立ち上がったブラックは、手にしたディジェスティフ(食後酒)のグラスをひょいと頭上に放り投げる。
瞬間、ブラックの姿が忽然と消えた――
「えっ……?」
自分の身に何が起きたのか理解する暇もないまま、〈プロテ=イン〉の身体がバラバラに切断される。
しゅたっ!
もといた位置に再び姿を現したブラックの手に、落ちてきたグラスがスッと収まる。
「……任務完了だな」
グラスの中身を飲み干すと、ブラックは仲間に背を向けてキッチンカーの中へと消えていった。
「どんな技を使ったのかわかりませんが、そうとう腕が立つのは間違いありませんね……」
一同「???」
ゴゴゴゴゴ……
キッチンカーモードから戦艦モードへと変形した〈ファトルキング〉が、ブラックひとりを乗せて空へと飛び立っていった。
「もうっ! どうしてアタシだけでも乗せていってくれないの! もう歩くのヤダからね!」
「あの野郎……一度ならず二度までも……基地に帰ったら、ぶん殴ってやる!」
「あんなキザ野郎に好き勝手させといて、レッド、お前はそれでいいのかよ!」
「ちょっと! そんなのどーだっていいからさぁ、どうやって帰るか考えなさいよ!」
「あぁ? また、尾びれキックを喰らいたいのか? 回復力が高いなら、手加減しねぇぞ」
半身になって、尾びれキックの体勢になるブルー。
「はい……実はこんなこともあろうかと、タクシーを呼んであるんです」
グリーンにヘッドロックをかますブルー。
ブルーの強烈な体臭は、ヘルメットをも貫通する。
嘔吐くグリーンをブルーがひっぱたくが、さすがに今回は手加減している。
土煙を上げながら近づいてくる大型のタクシーを目にし、デブレンジャーたちは安堵のため息をついた。
◇
新宿二丁目にひっそりと建つ雑居ビル。
その五階には、F.A.Tの秘密基地がある――
【ナレーター】
説明しよう!
第五話でもお伝えしたが、〈デブレンジャー〉は通称で、正式名称は〈Fat Assault Team〉略して〈F.A.T〉なのだ!
部屋の奥の壁に向かって立っている嵐山長官。
デブレンジャーたちには背を向けている。
「ちょ~かん、なんとかしてくださいよぉ……このまま歩いてばっかいたら、足が太くなっちゃう」
ピンクがどこからともなく取り出した甘食を、次から次へと際限なくグリーンの口に押し込んでゆく。
「うぐっ……み、みず……げほげほ……パッサパサで喉が詰まる……げほっ、げほっ……い、息ができない……みずを……お水をください……げほっ、げほっ……」
【ナレーター】
説明しよう!
甘食とは、食べると口の中の水分を根こそぎ持って行かれる、恐ろしいスイーツなのだ!
「宇宙人の侵略から地球を守るために、日夜戦い続ける組織です」
「ブラックの実力は諸君も認めるところだと思う。しかし、彼の性格ゆえにチームワークが乱れがちなこともまた事実だ――」
嵐山長官はくるりと振り返り、
「解決策はただひとつ――F.A.T、すなわちデブレンジャーのリーダーをブラック・ノワールに変更する」
一同「ええっ!」
「今後、君たちはブラック・ノワールの指示に従って行動してもらう」
「そんな……ぽっと出の新参者に、デブレンジャーのリーダーは務まりません!」
「長官! レッドが不適任なら、次のリーダーはオレのはずだ!」
「アタシはさんせ~。レッドがヒマになるから、デートの時間がふえるし」
「長官のおっしゃるとおり、ブラックは優れた戦士だし、少々強引ではあるけど統率力もありそうですね」
そこへ、ブラックが入ってきた。
「話は聞かせてもらった。リーダーなど面倒な話だが、こうも無能揃いでは私がやるしかないだろう」
「ちょっ……なんで!? アタシたちがいくら言っても、ちょ~かん、ぜんぜん直してくんなかったじゃん!」
ビ~ッ、ビ~ッ!
けたたましいアラーム音とともに、壁の回転灯がぐるぐると光り出す。
「侵略者を排除するという任務よりも大切な話とは何だ、レッド」
一同「…………ぉぅ」
颯爽と非常階段を下ってゆくブラック。
残りのメンバーは、のろのとろブラックの後を追った。
【ナレーター】
嵐山長官の命令によって、ブラック・ノワールが新たなリーダーとなった。
それぞれの胸にわだかまりを抱えたまま、デブレンジャーは戦いに赴く。
そんな彼らを待っていたのは、恐ろしい敵〈バイキング・ヘル将軍〉だった!
乱れたままのチームワークでは、とうてい勝てる相手ではない。
危うし、デブレンジャー!
甘食には牛乳がよくあうぞ!
〈つづく〉
【次回予告】
よぉ、実質的なリーダーのブルー・フィッシュだ。
影のリーダーと呼んでくれてもかまわないぞ?
しかし、長官の気まぐれにも困ったもんだ。
付き合わされるこっちの身にもなってほしいぜ、まったく……。
まぁ、確かにフランス野郎はいけ好かねぇが、腕っぷしだけは認めざるを得ない。
なにせ、オレの尾びれキックを片手で止めやがったからな……くそ、ムカつくぜ。
だが、リーダーはダメだ。
俺はそんなの認めねぇ。
あのキザ野郎の命令に従うなんて、死んでもごめんだ。
戦いになったら俺は勝手に行動させてもらうが、それにケチつけるようだったら、俺はデブレンジャーをやめてやる。
なぁに、もともと独りきりで生きてきたんだ。
一匹鮫に戻るだけのことさ。
ああ……次回の予告か。
次回、強い敵が出てきて、俺の斬鱗剣でぶった切って勝つだけの話だ。
じゃぁ次回もまた、観てくれよな!
チェンジ、ファトルゥ――オンッ!!
あばよ!




