05, 沖縄旅行 後半
『朝になりました、体を起こし、一日の始まりを迎えましょう』
ホテル内に放送が流れる。
まつりはそんな指示がでる数時間前に起きていた。何故なら、ある相手とメールをしていたからである。まあそんな非常識な事をするのはただ一人、湊だ。朝五時に連絡があり、寝起きの良いまつりはちゃんと付き合ってやっているが、これが朽だったらどうなっていたことやら。
「うう…眠い…」
今日は首里城に行く予定なのに。女の子たちに心配されたら正直厄介。
一体、いつから湊は起きていたんだろう。
メールの返信がきた時、最初から無視しておけばよかったな、と携帯の画面をボーっと見つめながらまつりは思った。
というか、湊は純と寝ていたような。もしかして、一人の自分を気遣ってくれたのだろうか。
(いや、あの湊に限ってそれはない)
ここ数日の湊を見る限り、彼にそんな気遣いが出来るとは思えないというか思わない。この間の言葉には少し驚いたけれども。
"お前が男だろうが女だろうが、初宮まつりは05,に選ばれたんだよ"
(あの時はちょっと嬉しかったけど!)
服を着替え、髪を整える。私服だが、父が買ってきてくれた男物の服。ピンは純とお揃いの物。ピンと付けるという共通点があったので、純がくれたのだ。
(お腹すいた…)
とりあえず、湊の元に行こう。そして、少し叱ろう。
そう思い、部屋を出た。
湊の部屋に着き、ノックをする。扉を開け迎えてくれたのは湊だった。
「あ、まつりおはよう」
「おはようじゃないでしょ?あんな時間にメールしてきて!」
ジェスチャーで、ごめん、と手を合わせ、はにかんだ様に笑う。まつりは許すことにした。別に、そこまで怒ってないし。
「純先輩は?」
訊くと、首を振った。
「あの人、寝起き最悪って有名なんだよ。中等部から噂あってさあ」
(なるほどね)
つまりまつりを気遣った訳ではなく、起きたら純がまだ寝ていて、噂からの恐怖と寂しさから、同学年のまつりにメールしたという訳か。
「でも、そろそろ起こさないとまずいよ?」
そう言って奥に入っていった湊についていくと、布団に丸まった純が見えた。
「ああ、なんか意外だなあ」
まつりが呟くと、湊は布団を揺らした。
「せんぱーい!朝ですよー!」
「うーん…」
中々起きない。
「じゅーんせーんぱーい!」
「あああああ!うるさいな!分かった!起きるよ!」
(…怒ってる?)
寝起きが悪い純は、人に起こされると機嫌が優れないらしい。噂は本当だった。
「着替えるから出てって!」
二人を追い出し、純は着替えを始める。ピンをしていない自然体の純も女の子にモテそうだ。寝起きが良ければ。
「……万先輩達の所行こうか、湊…」
「―――そうだな…」
苦笑いで、二人は隣の部屋へと向かった。
*
昨日と同じ事が続き、親睦旅行in沖縄も終わりを迎えた。05,の中でも一年全員でも親睦は深まったので、まつりの中ではまあ良しとする。
「では、一年の親睦旅行を終了致します。解散!」
先生がそう言い、一年の生徒達は皆各自それぞれ散らばっていった。
「楽しかったね、まつり!」
純がそう言う。あの寝起きを見たら、素直に頷けないけど。
「では、また学校で」
05,も、それぞれ帰路を辿る。
本当は一年だけの旅行だったけど、あの三人が来てくれて本当に楽しめた。
この非日常にも慣れたし、男として演技するのも悪くない。
その時、後ろから声をかけられた。
「まつり君」
(あ、海の時の子)
まつりに貝を持って来た子だった。
「どうしたの?」
「あの……っ、もしよろしければ今月は私とデートして頂けませんか?」
まさかのお誘い。
特に予約も入ってないし、まつりは快くOKした。女の子と遊ぶくらいに考えればいい。そんな軽い気持ち。
「では、来週の土曜日、高等部校舎の下でお待ちしてます」
「うん、分かった。けど、ごめん…名前訊いてもいいかな?」
女の子はキョトン、として少し経ってから、
「―――暁 宙と申します」
と照れくさそうに言った。
宙と離れ、まつりは少し思った。
(モテるって、快感!)




