03, 俺は女です
「12時きっかり、5人全員集合したな」
万が言うと、皆は頷いた。
「じゃ、朽の心を開かせましょうねー」
純の誘導で、以前使った事のある会議室へ移動。
「じゃあ朽先輩に質問タイム!」
そう湊が言うので、皆で朽を囲んだ。
「誕生日は?」
純が訊ねると、面倒そうに朽は答える。
「2月14日」
「バレンタインデー!?」
湊が驚きのあまり大きな声をだすものだから、朽にキッと睨まれた。
バレンタインデーが誕生日の人なんてこの世界にいくらでも居るが、この目つきと愛想のなさでバレンタインデーなんて可愛すぎる。
「何型ですか?」
「AB型。ぴったりって言われるけど」
まあまあ理解は出来る答えが返ってきたので、まつりはちょっと笑ってしまった。
「好きな食べ物とか」
「甘いものが好き。だけど、お菓子は好きじゃない」
(なんか可愛いぞ!)
案外、怖い人じゃないのかも。
そう皆が思い出した頃、初めて朽から口を開いた。
「皆のことも知りたい」
『!!』
初めて、朽が他人に興味をもった瞬間だった。
「特に――まつり、君のことが知りたい」
「へ!?俺!?」
素っ頓狂な声でまつりは確認する。
いきなりすぎて心の準備が出来てないというか、男にしかわからない質問されたらどうしよう…。
そんな事を頭の中で巡らせていると、何故だかまつりに質問しよう、という事になった。
「誕生日は?」
「7月の、18日です」
「何型なの?」
「O型だったりします…」
「好きな食べ物は?」
「ミルフィーユとシュークリームは外せませんね」
「えっと…好きなタイプは?」
「面白くて優しくて明るい人!」
にっこりと笑って、全て答え終える。
皆、共通して思うことがあった。
昨日の笑顔や今のタイプなどから、まつりは"女の子みたい"。
「なあまつり、今後のために聞いておくが…」
万が意を決し、遂に訊いてみることにする。
「―――― お前、本当に男なのか?」
まつりは唐突な質問に、頭が真っ白になった。
そして、心の準備が出来たのか、まつりは口を開く。
「隠さず言います、私、初宮まつりは女です」
「やっぱりか…」
ふう、と息を吐く。
「金縞に間違えて入っちゃって。1-Aの皆がかばってくれて…、それで女装癖がある生徒ということにして、制服をもらったんです」
「そうだったんだあ…」
純は寂しそうな仔犬の目をして、まつりを見る。
「やっぱ、駄目ですよね、こんなの。今から先生に言って―――」
会議室を出ようとした時、手を湊に掴まれた。
「え…」
「お前が女だろうが男だろうが、初宮まつりは05,に選ばれたんだよ」
(あ……)
「そうだな。銀縞から何も連絡がないってことは、もう向こうがお前を男だと認めたんだろうし」
苦笑いで、万が納得。
「それに僕、まだまつりと遊びたいな」
純は笑顔でそういった。
「まだ未知的な部分も多いし」
朽は笑っていなかったけど、すごく優しい声音だった。
「じゃ、俺たちでまつりを守るかっ!」
「ありがとう…!」
まつりとしても、まだ05,でいたいし、この4人と過ごしたい。
それがイケメンだからとか、そういう浅はかな理由じゃなくて、先刻気づいたんだけど。
「改めてよろしくお願いします」
ここが、自分にとって居心地のいい場所になりそうで。
一礼をして、少し涙が零れそうになったことは内緒。
*
数日して、05,お決まりの場となった会議室にて。
「そういえばさあ、もうすぐ親睦旅行だよねぇ、一年」
純がパックジュースを飲みながら、湊とまつりに話しかける。
「そうなんすよ、俺はともかくとして、まつりが可哀想で…」
げんなりとした表情を見せつつ、湊が語る。
「親睦旅行といっても沖縄に3泊4日くらいですし、大丈夫ですよ」
「俺特待生ちゃんだから、久々の沖縄なんだよね」
湊は昨年末、実家が倒産して今年から05,に3年間選ばれる代わりに、無料で学校に通っているらしい。
(あ、だから05,に選ばれてるって分かってたのかあ)
疑問を解決できて、少し嬉しい。
「でもさ、その間僕ら暇だよね」
純がつまらなさそうに呟く。
「――2年とか全く予定ない」
いや、授業はどうしたお兄さん。
「よし、じゃあこうしよう。05,も一年の皆と親睦を深めるため、その旅行に着いて行く」
遂に、こんな意見まで飛び出した。
「先輩助かります!」
ノリノリな4人を、まつりが止められる筈もなく。
「早速理事長に報告だ、純頼んだ」
「あいあいさー!」
「05,も親睦旅行に参上…」
「朽も行く気満々だし、何の問題もないな!まつり!」
……あの、みなさん。
「05,の親睦も兼ねて、Let's go to 沖縄!」
私に拒否権はないのですか。




