01, 今日は厄日
降り注ぐ太陽の光をしみじみ感じながら、初宮まつりは登校する。皮膚ガンとか本気で気をつけないと、とか思いつつ門前に到着。
私立銀縞高等学校。
そこが、まつりの通う学校だ。
お嬢様学校として有名なこの学校は、他国からも留学生が来たりと世界的なセレブ学校なのだ。
すぐ近くには、お坊ちゃま学校として有名な姉妹校の金縞高校もある。まあ自分には全く関係がない。
まつりの通う学校といっても、それは今日から。
入学式の今日は、初めて一人で高校を訪れる日。
目の前に聳え立つ建物に入った。
そこにはちゃんと、"銀縞"と書いてあったはずなのに。
*
指定されたクラスの"1-A"のドアを開くと、そこにはたくさんの男共が――。
(男・・・?)
鳥肌がたった。
何を隠そう、ここは金縞高。
「え、女子?」
スカートの私に向かって、一人が呟いた。
「一つ席空いてると思ったら女子かよ!ラッキー!」
見ると、席が二つ空いていた。あと一人は…トイレでも行っているのだろうか。
しかし、何を考えたら女子がここに入学すると思うのだろう。
「座って座って、訳は聞かないからさ」
(何でかを聞きたいのは――)
自分だ、と言おうとした瞬間、担任の男らしき人物が入ってきたため断念。
担任はまつりを見るなり首を傾げ、尋ねる。
「銀縞の間違いじゃないか?そこの生徒」
今更恥ずかしくて何も言えない。
わかっている、わかっているとも!
だが、生徒は思った。
ここでのチャンスを棒に振るわけにはいかない、と。
「何の間違いもないっすよ!」
「あいつ、ああいう趣味があって…」
(フォローになってない!)
白目になるくらい、まつりは絶望。
「――そうか。名前はなんだっけな」
「は、初宮まつりです…」
「初宮、あとで制服を取りに来い」
(…え?えええーー!?)
確かに今着ている服は、銀縞の制服ではない。色々予定が合わず採寸の日に間に合わなかったので、今日制服をもらう予定だったからだ。
しかし、なぜ先生も気づかないんだ。
女装癖のある生徒だと思われてしまったではないか。
屈辱的なSHRも終わり、ようやく入学式まで休憩。
「初宮、お前まじで金縞な訳ねえんだろ?」
「…当たり前。何で男子高に入らなきゃいけないの?」
ムッという効果音が似合う顔をして、まつりが言う。
あはは、と笑って生徒が謝罪した。
「悪ぃな、そういう時期なんでー」
「もうっ」
これが本当に一流企業の御曹司達なのだろうか。
「初宮あ、制服取りに行けよー!」
冗談まじりに言われ、更に不機嫌そうに教室を出た。
「サイズは…Sだな」
「すみません…」
「更衣室で着替えて来い、式に遅れるなよ」
「はい、失礼しました」
(こうなったらやるしかない…)
職員室を出て、まつりはそう思った。
華やかな高校ライフで、まさか男として男子高に入るはめになるとは。しかも先生とトイレ要員以外クラスメイトが女だと知っているなんて。
更衣室に着き着替えながら、繰り返しその事を楽観的に考えようとした。
*
「似合うじゃん初宮!」
教室に戻れば、皆が嬉々とまつりを迎える。
ただ、入学式直前とあって、緊迫したムードが漂っていた。
「ほら、お前ここな」
押されて、勝手に作った出席番号通りに並ぶ。
「んじゃ、出発!」
一人の生徒がそう言うので、"祝入学"と書かれた札を胸上につけ、式場へと向かった。
(眠たー…)
目をこすりつつ、まつりは理事長の話を聞く。
「――であるからして、本校の生徒から5人を選んでいく」
(自分には関係のないお話ですねえ…)
欠伸をひとつすると、理事長は眠気を覚ます様な一際大きな声で言った。
「一年、初宮まつり、本城湊。二年、時定朽。三年、若松万、畑山純。以上5名が、今年度の05,であるとここに宣言する」
(ふうん…って、あれ?)
確かに今、初宮まつりと言った気がする。
「高等部からの入学のための者に説明しよう。05,とは、あちらの女子高・銀縞高校の05,、つまり向こうとトレードする生徒のことだ」
(トレード…?)
つまり、まつりは05,に選ばれたのだから、向こうの学校に通うということで――それって、すごくラッキー!?
一気のテンションのあがるまつり。隣の隣の席が空いている。
(トイレじゃなくて、お休みなのかな?)
それも置いておこう。今、やっと自分は元の通うべき学校に帰れるのだから。
「05,に選ばれた5人は、堂々と男らしく学業に励むこと!」
(…まてよ)
帰るとしても、男としてだったことを忘れていた。
「では、これにて閉式とする」
*
入学式からの教室への帰り道、クラスメイトがまつりの元へ集まる。
「残念だな~、初宮がいなくなんのかあ」
「でもおかげで、05,がクラスに来る!」
「結果オーライだな!」
わいわい騒がしい連中は過ぎ、まつりは一人教室へと歩く。
と、その時放送が鳴った。
『お知らせします、先程05,に選ばれた皆さんは、理事長室に至急、お集まりくださいませ』
教室の階までやっと着いたと思えば、下の階に逆戻りか。
再び階段を降り、別館の理事長室へ。
ノックをして、反応を待つ。
「入りたまえ」
扉の奥から聞こえる声に、誘導されてまつりは中へと足を踏み入れた。
「初宮まつりくん、いらっしゃい」
優しい顔のおじさんが、そうまつりを迎え入れた。
「君達は今日から、金縞高の05,だ」
理事長は力強く、そう述べた。
周りには4人、ちゃんと生徒がいる。けれど、誰が誰なのかさっぱりだ。
「で、05,って基本的に何をするんですか?」
まつりが聞くと、理事長は答えた。
「簡単だよ、同性ばかりで退屈な銀縞の生徒に尽くしてやるんだ」
「え、それって」
「安心したまえ初宮くん、学費は免除だ」
まあ家庭的には困らないが、なんだか面白そう。
「互いに親睦を深めてくれ、ではまた」
理事長がそう言うと、秘書が5人を部屋から追い出した。
「…ったく、何だってんだよ、うちの理事長」
赤髪の目つきの悪い男がそう呟いた。
「…とりあえず、自己紹介しますかあ」
けだるそうに、金髪の男が口を開く。
皆は賛同し、一旦最寄の会議室へと入る事にした。
「じゃあ自己紹介だな」
赤髪の男が仕切るので、まつりはこいつを3年だと確信した。
「まず一年からね」
隣の茶髪の男がそう言った。
「わ、俺、初宮まつりです」
「俺ぇ、本城湊って言いまーす」
先刻の金髪が言う。
こいつがもしかして入学式に来てなかった(仮)トイレ要員か。
「二年、時定 朽」
「え?時定紅葉の息子さん?」
時定紅葉とは、大物プロデューサーで、大人気番組を生み出す有名な人物だ。
「…そうですけど、父の事は関係ありません」
黒髪が、窓からの陽に当たりきらきら光っている。
(それにしても、鋭い目…)
「三年、畑山純。色々よろしくねー」
背は標準くらいの茶髪の男が言う。
妖しげなルックスが印象的だ。
「で、俺が若松万だ。中々個性的なのが集まったな」
改めて周りを見渡すと、本当"男"って感じの輩ばかり。
「じゃあ親しみをこめて、下の名前で呼び合う事にしよっか」
純がにっこりとそう言うので、皆も同意。
「よし、じゃあ金縞05,、ここに結成な!」
湊も元気いっぱいに言うので、まつりも仕方なく笑っておいた。
長いですね…
誤字脱字の訂正は後日確認します。




