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第6話 冒険者ギルド登録

「すみません」


 受付カウンターでは可愛らしい制服に身を包んだ綺麗な女性が笑顔で立っていた。


「はい、何でしょう?」


 彼女は首を傾げると俺に笑顔を向けてきた。


「ここって冒険者ギルドであってますか?」


「ええ、そうですよ」


「実は身分証をなくしてしまって、新しく作りたいんですけど可能ですか?」


 どうやら合っているようなので、俺は目的を告げる。


「はい、可能です。仮の身分証はこちらでお預かりして詰所にお返ししておきますのでお渡しください」


 わざわざ戻る必要がないらしく、とても親切だ。

 俺は仮の身分証を外すと彼女に手渡した。


「それでは、冒険者登録を行いますので、お名前をお願いします」


「北条 拓馬です」


「ホウジョウ……タク……マ」


 受付嬢は確認のため俺の名前を呼びながら用紙に記入をしていった。


「ありがとうございます。私はタクマ様を担当させていただくことになるクロエです。おみお知りください」


 彼女は胸元のネームプレートを見せながら名乗った。

 周囲の冒険者たちがそんな彼女を見る。


 この容姿だ、間違いなくモテるのだろう。


「こちらこそよろしくお願いします」


 彼女にならい御辞儀をすると、クロエさんとバッチリ目が合った。


「タクマ様は冒険者らしくなく物腰が低いのですね」


「そうでしょうか?」


 初対面の相手に不愉快な思いをさせないため配慮するのは当然かと思うのだが、冒険者の荒々しい雰囲気から察するにそうではないらしい。


「そういうクロエさんこそ、俺なんかに丁寧に接してくれているじゃないですか?」


 思えば、異世界にきてから兵士にも普通に扱われている。

 現代では俺に話し掛けてくるのは男ばかりだった上、好意的ではない態度が多かったので、今のところ快適にすごせている。


「それは、依頼を片付けてくださる冒険者は貴重な存在なので当然ですよ」


 なるほど、俺の実力はまだ未知数だと思うのだが、依頼の一つでもこなす人間がいれば自分たちの仕事も捗る。愛想も良くなると言うもの。


 自分に普通に接してくれているのだと都合の良い解釈をしてしまったが、事務的な対応で誰にでもするものらしい。


「それでは身分証を発行する前にステータスを調べますので、こちらの水晶に手をかざしていただけますか?」


「これって、詰所でも触った魔導具ですか?」


 同じような物なら二度触る必要性がないのではないか?

 そんな疑問を浮かべて彼女に質問をする。


「あれは犯罪を犯しているか調べるもので、こちらの魔導具は身分証の発行と口座開設などなどを一括で行うことができるものになります。知らないのですか?」


 先程の会話では紛失したことになっているので、突っ込んだ質問で逆に彼女から疑われてしまった。


「ちょっと、記憶が混乱してて……」


 賢者の知識の中にもない。この世界の一般的な常識に対しては勉強不足だった。


「基本的にどのギルドも、表示されたステータスを元に仕事を斡旋しております。あまりに低い数字の場合、高額報酬の依頼を受けることはできませんが、ゴブリン退治やハーブ収集など常設の依頼であれば受けていただいて構いませんのでよろしくお願いしますね」


 どうやら、俺の身なりから駆け出しと判断したようだ。

 俺は水晶に手をかざす前に一つ聞いておくことにした。


「そういえば、商人ギルドで登録する場合も同じようにステータスを確認するんでしょうか?」


 二度同じことをやるのは面倒だと思ったので聞いてみると、彼女は答えを言った。


「基本的に身分証はそれ一枚であらゆる場所で使うことができます。お店での買い物の決済であったり、他のギルドへの登録なども。世界中どこでも使うことができるとても便利な魔導具なんですよ」


 たった一枚で貯金や買い物、その他諸々に使えると言うのは現代のシステムよりも明らかに優れている。


「わかりました。それじゃあ、ステータスを測りましょうか」


 納得した俺は、水晶に手を置く。すると……。


「えっ?」


「うわっ! 何だっ!」


「眩しい!」


 眩いばかりの光が降り注ぎ、カードが発行される。

 そこには俺が持つ能力の詳細が書かれているのだが、


「あの……今のは魔導具の故障だったんでしょうか?」


「い、いえ……問題なく発行? されました……よ?」


 冷や汗が出てくる。

 周囲の冒険者も何事かと野次馬の如く俺の後ろに集まりつつある。


 俺は改めてステータスカードの内容を見るのだが……。


 氏 名:北条ホウジョウ 拓馬タクマ

 年 齢:十八歳

 筋 力:A

 体 力:B

 精神力:C

 魔 力:A

 敏捷度:B

 精霊力:A

 幸 運:S


 称 号:永遠に童貞


「一応、依頼を勧める参考にしたいのでお見せいただきたいのですが?」


 クロエさんのつぶらな瞳が俺を見据える。


「ちょっと、待ってください!」


 称号にある『永遠に童貞』の文字に、俺は「こんなの見せられるか!」と心の中で叫ぶのだった。


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