第4話 精霊使いの力を検証する
「よし、ここで試すとするか」
場所を移動して河原まで来た俺は、早速精霊を使役することにする。
精霊を使役するには精霊と意志を疎通させなければならない。
そのために必要なものが二つある。
一つは精霊を視る才能、もう一つは精霊力だ。
一つ目の精霊を視る才能というのは種族特有の才能で、エルフは無条件で持ち合わせている。
人間の中にも精霊を視ることができる者は生まれることがあるのだが、その才能を授かる者は相当希少だと言われている。
もう一つの能力である「精霊力」こちらは使役している精霊を維持する力のことで、勇者でいう体力、賢者でいう魔力と同じような役割を果たす。
強力な精霊を使役するには大量の精霊力が必要になるし、上級精霊以上ともなるとそこらに漂っていないため契約をしておかなければ呼び出せない。
これだけ聞くと「魔法でいいじゃないか?」と考えがちだが、精霊を使役するのには利点がある。
「水の精霊よ、水球を作ってくれ」
川から水が浮かび上がりバレーボールサイズの水の球が出来上がる。
一般人には視認できないが、周囲に水の微精霊が飛び回っており、水球を維持していた。
微精霊はどのような場所にでもいる精霊になる前の状態で、小さな光の粒のような形をしている。
「次は形を針に変えてくれ」
目の前で水の形が変わり、無数の長い針が浮かぶ。
「あの木に向かって射出」
近くにある木に向かい針が飛んだあと、木には無数の穴が空いていた。
「少ない精霊力でもこのくらいの威力になるんだな……」
これなら低級モンスターが襲いかかってきても問題ない。
最初だったので今は声に出して使役したが、微精霊は俺の言葉を聞いて命令に従っているわけではなく、俺の意志を汲み取って行動してくれている。
頭の中で思い浮かべれば今と同じことを実行してくれるのだ。
「風の微精霊に頼んで索敵をしてもらい、死角から襲ってくる攻撃を土の微精霊に防いでもらう。気温の操作を火の微精霊にしてもらえば快適な旅ができそうだぞ」
精霊の使役の利点は、維持する力だろう。
一度微精霊に精霊力を与えれば力がなくなるまで維持してくれるので、本人は別のことをやっていようが寝ていようが構わないのだ。
索敵、防御、保温を自動でやってくれるので精霊はとても使い勝手が良い。
水の微精霊から「どう?」とうかがうような意志が伝わってきた。
「ありがとう、助かったよ」
笑みを浮かべ礼を言うと、嬉しそうな感情が伝わってきた。
俺は精霊力を余分に与えると、水の微精霊を解放する。
嬉しそうな様子で「またねー」と挨拶をして水の微精霊は他の微精霊に混ざっていった。
とても可愛いらしかったので、俺は微精霊の姿が見えなくなるまで見送った。
「勇者の力・賢者の力・精霊使いの力は本物だった。これなら街に行っても問題なさそうだな」
当初の騙されているのではないかという不安が消えたので、そろそろ異世界の状況を探らなければならない。
ようやく俺は街を目指すことにした。